近年の日本人女性の間では「痩せたい」という願望が強いあまり、摂食障害になるまで過度なダイエットを行う方が増えつつあり社会問題となっています。
また、ストレスの多い社会で働く中で、うつ病などの精神疾患に苦しむ方も増え続けているため、精神科や心療内科の需要は高く、医療機関は常に混雑している状態です。
それに伴い看護師の需要も高い分野でもあります。それでは精神科・心療内科とはどんな場所なのかみていきましょう。
精神科と心療内科ってどう違うの?扱う疾患や守備範囲の違いはあるの?
<心療内科とは?>
心療内科は、ストレスなどを受けたこころの病気が引き金となって、身体に症状が現れた患者を治療する所です。
主に「心身症」という病気の方が対象となります。
また、心療内科という科は日本独自の診療科名で海外にはなく、心療内科医の医師数も全体的に見ると精神科医の10分の1以下です。
治療に当たる医師は症状に合わせて内科医または心療内科医が行います。
症状の具体例としては、めまい、だるさ、動悸や息苦しさがある、下痢や腹痛が続く、喘息の症状が続く、血圧が高くなるなどがあります。
内科受診で詳しく調べても異常がないのに症状だけが続く場合に相談・検査する機関として心療内科は存在しています。
<精神科とは?>
精神科はこころの症状、具体的に言うと強い不安や不眠、集中力低下、イライラ、抑うつ、幻聴幻覚、妄想などの症状に対して治療を行う所です。
病名としては、躁うつ病や統合失調症、不眠症、神経症などがあります。
治療は主に精神科医が担当し、カウンセリングや精神分析を行い、必要に応じて投薬を行います。
精神科と心療内科では対象となる疾患が違いますが、どちらも「こころ」を原因とした疾患を扱う点で共通しています。
前述したように、心療内科医の医師数不足から心身症であっても精神科を受診する方は多くいます。
また、精神科というと一昔前では偏見や敷居が高いイメージが根強く、 少しでも患者に利用してもらいやすくするために精神科が「心療内科」と掲げることも珍しくはありませんでした。
実際には精神科と心療内科の両方を診る病院やクリニックも増えているため、どちらの対象の患者にも対応している所がほとんどなようです。
精神科・心療内科で働く看護師の仕事内容・役割
精神科や心療内科の多くは外来やクリニックなので、看護師の仕事としては他の外来やクリニックと大きな違いはほとんどありませんが、「こころ」が主な病気の原因となっているのでコミュニケーション対応や生活指導などが重要な役割となります。
詳しい仕事内容についてみていきましょう。
手技的な処置
精神科・心療内科共にまず行われるのは基本的な問診と全身状態のスクリーニング、それに伴って必要であればさらなる検査や点滴、注射などの処置が行われます。
緊急外来や病棟以外の場所ではよほど重症な方でない限り、急を要するような処置はほとんどありません。
- <仕事内容>
- 問診
- 医師の診察の介助
- 検査の介助
- 点滴、注射、投薬
心療内科での役割
心療内科では身体的な症状の治療に加えて、その症状の原因となるストレスへの対処や生活習慣、環境改善なども含めて患者とともに治療法を考えていきます。
その中で看護師が行うことは身体的な治療に対する処置もそうですが、生活指導や治療方法の説明についてです。
治療に使う薬剤の説明から、症状の原因となる細やかな生活習慣に対する指導。
また、自律訓練法や認知行動療法など専門的な治療法まで、不安を抱える患者がこれからどのような方法で治療を始めていくのか詳しく丁寧に対応することが大切です。
- <仕事内容>
- 生活習慣、環境、ストレス要因の問診
- 生活指導
- 薬剤、治療方法の説明
精神科での役割
精神科はクリニックや外来も多いですが、入院病棟も軽度~重度に分かれて存在します。
基本的には「こころ」の病気なので、身体的な症状を伴わない方がほとんどです。
しかし「こころ」の病気のために、正常な判断ができなかったり、自らの不調を上手く訴えることができなかったりするので、 基本的な全身状態の観察や言動から小さな変化に気づき、見極めるスキルが看護師には求められます。
逆に、糖尿病や心疾患などの基礎疾患があることがきっかけで精神的な病気が発症する場合もあるので、ケースバイケースでの対応が必要になります。
- <仕事内容>
- バイタルサイン測定などの全身状態の観察
- 薬物療法の管理、説明
- 基礎疾患があればその治療(点滴、注射など)
精神科も心療内科も訪れる患者は精神的・心理的に何かしらのストレスやトラブルを抱えている方ばかりなので、対応や接遇にはより一層の配慮が必要です。
患者の話をゆっくり伺い、丁寧に対応することで信頼関係も得られ、治療に対しての安心感にもつながるので、一人一人の患者に合わせたコミュニケーションスキルも看護師の大切な役割の一つといえます。
精神科・心療内科で働く看護師の給料とキャリアパス
地域差はありますが、病院外来やクリニックでの勤務であれば、一般的な診療科のクリニック勤務と比べても給与事情にさほど違いはありません。
しかし、病床のある精神科で重症度の高い病棟では危険手当がつく所もあります。正職員として働くのであれば、年収は300~400万円程度が相場です。
都心部やハイクラスのサービスを提供しているようなクリニックでは他よりも高給な所もあるようです。
また、パートとしての働く場合では一般的な科目に比べると時給は高めで、1500円~2000円以上のクリニックもあるため、結婚や出産でブランクのある方でパート勤務を考えているのであれば思った以上の収入が期待できますね。
精神科や心療内科の分野での給与アップを考えるのであれば、 精神科認定看護師、精神看護専門看護師 などの特定の資格を取得する方法があります。
いずれも精神科分野での実務経験が5年以上必要で、指定の専門学校へ通わなくてはなりません。
資格を取得したとしても、どの病院やクリニックでも給与アップが見込めるわけではないので、きちんと資格を評価して給与に反映してくれる病院やクリニックの求人を選ぶようにしましょう。
精神科・心療内科で働く看護師のメリットとデメリット
精神科や心療内科では業務内容に身体的な負担が少ないイメージがありますが、それも働く場所や患者層によってさまざまです。
また、精神科や心療内科ならではの苦労や負担もあります。それでは、メリット、デメリットにはどのようなものが挙げられるのかみていきましょう。
精神科・心療内科で働く看護師のメリット
精神科分野でのスキルアップができる
精神科領域の疾患は特殊なので、その病態や症状、使われる薬剤や治療法についてまでその分野に限局して学ぶことができます。精神科での学びを深めたい方、専門的な資格取得を目指す方には最適な環境です。
コミュニケーションスキルがアップする
身体的な治療、というよりは精神的な部分に関わる治療がメインとなるため、いかに患者とのコミュニケーションで信頼関係が築けるかという部分が大切になります。
精神的に不安定な患者に対して、どのような話し方でどのような言葉かけを行えばいいか、他の科よりも一層の配慮が求められるため、コミュニケーションスキルは確実にアップします。
医療技術に自信がなくても勤務可能
検査のための採血や、投薬のための注射・点滴などはあるものの、他の積極的な医療行為を行う病棟に比べればほとんどその技術を必要とされないので、多少手技に自信のない方でも気負わず働くことができます。
仕事内容のメインには医療的な技術よりもコミュニケーション能力が求められます。
精神科・心療内科では相手の立場になって、患者に寄り添ったコミュニケーションが取れる方、精神科分野に興味があり学びを深めたい方、また、医療的な処置に自信のない方が向いているといえます。
精神科・心療内科で働く看護師のデメリット
医療技術スキルが低下する
メリットにも挙げたように、治療のメインはコミュニケーションです。故に、医療行為を行う機会が少ないため、医療技術のスキルは低下します。
それまで他の科で最先端の治療に関わってきた方や急性期で働いた経験のある方には物足りなく感じてしまうでしょう。
自分自身のメンタルに負担がかかる
精神科領域の職場には「危険手当」というものがあります。
精神的に不安定な方から 心無い暴言 を浴びせられたり、 物理的な暴力 などの危害を加えられる恐れがあるためです。
特にアルコール依存症などの患者は興奮状態に陥って暴れることもあります。
そういった状況に対応できるように、 精神科分野には男性看護師が多く在籍しています。
そのような環境に置かれるため、看護師には精神的な負担が大きい部分にデメリットがあるので、患者に振り回されず、環境に飲み込まれない強い精神力が求められます。
病院の場所によっては通勤が不便
クリニックは比較的街中にありますが、大きい規模の病院であれば郊外に建てられている所も多いです。
患者が万が一病院を抜け出してしまっても探しやすく、興奮状態の患者が仮に暴走してしまっても近隣住民への被害が最小限に済むという理由があるようです。
そのため、立地によっては交通機関が限られていたりするので通勤が不便な場合があります。
精神科領域の患者は時に感情的になったり、興奮状態になったりと薬剤や物理的に抑制しなければならない状況も発生します。
そのような状況に置かれたとき、冷静に対処できる精神的な強さと、雰囲気に飲み込まれない芯のある方に向いている職場といえます。
精神科・心療内科で働く看護師の口コミ
「患者さんと話すことに時間をかけるため、定時で帰れないこともあります」
「身体的な病気とは違い、目に見えて回復する過程がわかりにくいのでやりがいを感じにくいこともある」
「差別は偏見の多い分野ですが、とても穏やかで働きやすい職場だと思います」
「共感しすぎると患者さんに飲み込まれてしまうので、雑談はせず天気のお話程度のコミュニケーションをするようにと言われていました。外来を訪れる患者さんは静かな環境を好まれるようです。」
患者の多くは積極的な医療行為を伴う病気ではないので、数値などの目に見える回復過程がわかりにくい部分にやりがいが感じられなくなる方もいるようです。
しかし、急性期などの時間業務に追われる場所よりは、穏やかにコミュニケーションをとりながら働ける環境でもあるといえます。
精神科・心療内科(病院・クリニック)の選び方と注意点
心療内科・精神科だけの病院か?他の科はある?
一般の内科や訪問看護、健診業務も行っている病院やクリニックもあるようなので、面接時になって「他の分野まで勉強しなきゃいけないなんて聞いてない!」とショックを受けることのないように、事前に求人情報はくまなくチェックすることが必要です。
クリニック・外来・病棟勤務
入院設備のないクリニックでは常日勤での勤務が通常です。
心療内科のみのクリニックでは患者がリラックスして診察が受けられるように、インテリアや内装にこだわったり、対応するスタッフも快適に仕事ができるよう力を入れている所もあります。
病院では外来と入院病棟に分かれ、重症度によって「慢性期病棟」と「急性期病棟」に分けられます。
病棟勤務であれば夜勤もありますし、患者の身の回りなど日常生活の大部分をサポートしたり、急性期病棟であれば危険手当がつく所もあります。
どのような分野について学びたいのか、働きたい環境をしっかりと理解した上での職場選びが必要です。
経験者か未経験者か
特殊な分野なだけに、就職するにあたって経験者を優遇する所も多いです。
それまで看護師として一般病院などで勤めてきた経験は精神科領域に至ってはほとんど通用しません。
なので、少しでも精神科に携わった経験があれば採用への道も近くなります。求人情報を見る際には、未経験者でもOKなのかチェックすることも大切です。
精神科・心療内科の求人を探すなら看護師専門の転職サイトを活用しよう
精神科の医療施設数は多くありますが、心療内科のみを希望した際には全国的にも数が非常に少ないので求人数も少ないようです。
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登録後は、コンサルタントから本人確認の連絡がありますので胸の内を相談してみましょう。
【まとめ】求められるのはコミュニケーションスキル
心療内科・精神科分野では人によって向き・不向きが大きく分かれますが、クリニックや外来では一般の科に比べると残業が少ないこともあり常に一定の人気が高い分野でもあります。
一般の科で看護師として積み上げてきた知識や技術よりも圧倒的にコミュニケーションスキルが必要とされるので、価値観の違いや精神科における看護師のあり方に馴染めず、やりがいを感じることが難しかったり、看護師としての物足りなさを感じる方もいるかもしれません。
それでも新しい分野で働いてみたい方は、心療内科・精神科分野での仕事内容や役割をしっかりと調べたうえで、自分に向いている職場なのかを検討するとよいでしょう。