泌尿器科では、尿道や膀胱、尿管、腎臓からなる尿路系と、前立腺、精巣、睾丸などの男性生殖器の疾患を対象としています。
対象とする部位の特徴からも、男性患者がメインとなる診療科です。
尿路系や男性生殖器の分野での高い専門性が身に付く泌尿器科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的なのでしょうか?
この記事では、泌尿器科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、仕事内容やお給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
腎臓内科・外科との違いとは?
泌尿器科では、膀胱炎や排尿障害、膀胱がんや前立腺がんなど、尿路や男性生殖器の疾患の診療を行います。
腎臓内科では、腎炎や腎不全、透析といった腎疾患全般を。腎臓外科では、腎臓がんや腎臓移植、透析シャント造設などの外科的治療を必要とする腎疾患を対象としています。
腎臓外科がない病院では泌尿器科が担当する場合が多く、泌尿器科の診療範囲は、腎・尿路系と幅広くなります。
大規模病院などでは「腎センター」や「腎・泌尿器センター」のようにセンター化し集約している病院も見られます。
泌尿器科の患者ニーズとは?
泌尿器科では尿路系の疾患のほか、男性生殖器の疾患も対象としているので、多くが男性患者になります。
排尿障害や膀胱がん、腎臓がんのように女性が罹患する疾患もあるため、女性が受診することももちろんありますが、女性生殖器に関連する疾患は産婦人科で診察するケースが多いので、女性よりも男性患者のほうが多くなっています。
クリニックでは自由診療で、ED治療や男性更年期障害注射、性病検査、性同一障害手術なども行います。
男性ならば前立腺肥大症、女性にも過活動膀胱や尿失禁のように加齢と共に何らかの排尿障害を来たすことが多いので、高齢者によりニーズが高い診療科となっています。
より快適に生活できる。
みき
めぐみ
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泌尿器科の仕事内容と役割とは?
男性患者の割合が多い泌尿器科ですが、仕事内容や看護師の役割にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく解説します。
1、手術に関する仕事
- 手術についてのオリエンテーション
- 術前・術後のケア
- 訴えの傾聴、不安の軽減
泌尿器科では、開腹手術、内視鏡下手術、経尿道的手術と、全身麻酔を要する手術から局所麻酔で可能な低侵襲な手術が行われます。
手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入している病院もあり、臓器や疾患により様々な術式があります。
看護師はそれぞれの術式に応じたケアや看護を行うため、どのような手術にも対応できるよう幅広い知識やスキルが必要とされます。
また、泌尿器科はデリケートな部分が対象となる上に、疾患によっては尿路変更を行う場合があります。
尿路変更に関連する手術の場合は、手術により疾患は改善するものの、ボディイメージの変化や自己管理など術後の生活が一変してしまいます。
そのため、手術そのものに対する不安はもちろん、今後の生活に対する不安についても、十分に訴えを傾聴し不安が軽減できるようなケアが必要です。
2、処置・検査に関する仕事
- 処置・検査のオリエンテーション
- 医師の介助
- 尿道カテーテル、尿路ストマの管理
泌尿器科では、検尿や超音波のような侵襲の少ない検査から、膀胱鏡検査や前立腺生検といった侵襲が大きい検査まで様々です。
さらに、導尿や尿道カテーテル留置、尿路ストマの管理など、カテーテルの扱いが多い診療科でもあります。
尿管の障害により尿道カテーテルが挿入できない、といった症例も多く、他の診療科からの紹介も多くなりやすいです。
それぞれの処置、検査の介助やカテーテル管理について、十分な知識や技術を習得しケアを行うことが必要になります。
また、スムーズに処置や検査を受けられるよう、丁寧にオリエンテーションを行うことはもちろん、不安や羞恥心が最小限となるような配慮が必要です。
3、生活指導に関する仕事
- 尿路ストマ、カテーテル類の自己管理
- 服薬指導・栄養指導
- メンタル面のケア
泌尿器科領域の疾患では、退院後も、尿路ストマの管理や自己導尿といった継続的な自己管理が必要となる場合が多くあります。
これらの管理には、清潔操作などの確実な手技が求められるので、習得のための指導や支援が必要になります。
また、腎疾患では、水分制限やカリウム制限のような食事制限や確実な服薬も必須となるので、栄養指導や服薬指導も行います。
尿路変更を行った場合は、ボディイメージの変化を伴う上に、いつ失禁するかも分からない、ストマから漏れてしまうかもという不安もつきまとい、外出や旅行が億劫になるなど精神的な苦痛も多くなりがちです。
そのような患者の心理を理解し、疾患を受容した上で快適な生活が送れるように支援することも、看護師の大切な役割となります。
みき
めぐみ
ジョブス
泌尿器科のお給料と勤務先とは?
泌尿器科には特別な手当があるわけではないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
以下は、看護師の平均的な給与と年収になります。
- 平均給与:333,900円
- 平均賞与:799.900円
- 平均年収:4,806,000円
なお、病床規模と給料は比例するため、クリニックよりも大学附属病院の方が給料水準は高く設定されています。
勤務先は以下になります。
- 大学附属病院の泌尿器科
- 総合病院の泌尿器科
- 泌尿器科クリニック
- 泌尿器科・皮膚科クリニック
泌尿器科を専門とすべく求人を探しても、900床ある附属病院でも泌尿器科の病床は40床程度なので、求人の多くがクリニックの日勤勤務です。
クリニックですと夜勤がないため給料は極端に落ちてしまいます。
泌尿器科の求人を探すなら将来を見越して、クリニックではなく総合病院や附属病院での勤務をおすすめします。
えっ私の年収低すぎ?看護師の平均年収と給料を年齢や役職別に徹底分析
みき
めぐみ
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泌尿器科はこんな人に向いている
患者の羞恥心への配慮を要する泌尿器科に向いている看護師は、どのようなタイプの人なのでしょうか。
向いている看護師、向いていない看護師を、順に見ていきましょう。
- 羞恥心やプライバシーへの配慮ができる
- 冷静な対応ができる
- ドレーンなどのルート類が好き
- 慌ただしく忙しい中で迅速な対応が可能
泌尿器科では、男性生殖器を扱うため羞恥心が生じやすく、プライバシーへの配慮が欠かせません。
検査や処置、ケア時には、羞恥心が少しでも少なくなるような細やかな気遣いや配慮ができる人が向いています。
「恥ずかしいな…」と思っている患者の前で、担当する看護師までもが恥ずかしそうにしていると、患者の羞恥心はさらに増強してしまいがちなので、看護師にはプロとしての冷静な対応が求められます。
また、泌尿器科では処置や検査、手術が多く、短期間の入院もよくあるため、患者の入退院が激しく、毎日検査や手術に追われ忙しくなりがちです。
このような慌ただしい中でも、テキパキとケアを進められるタイプの方も向いています。
- じっくりと関わるほうが好き
- セクハラまがいの言動が耐えられない
- 生殖器や尿路系ばかりのケアや処置に抵抗がある
- 毎日、毎回の尿処理が辛い
悪性腫瘍や透析が必要な症例などでは長期間の入院に及ぶこともありますが、検査入院や内視鏡による侵襲が低い手術が多いことから、入院期間が短期間となる傾向にあります。
そのため、慌ただしい流れの中で患者とじっくりと関わる時間を持ちにくく、密なコミュニケーションを図ることは困難な面があるので、慢性期のじっくりと密な関りが好きなタイプの方には物足りなさを感じるかもしれません。
また、泌尿器科の特性から、男性患者が多数を占め、男性生殖器を扱うことが多いので、時にはセクハラまがいの言動を受けることもあり得ます。
患者自身は冗談交じりの軽い気持ち、あるいは恥ずかしさを隠すための言動であったとしても、抵抗を感じる看護師にとってはストレスが増大してしまいがちです。
さらに、男性生殖器に触れる場面が多い上に、毎日大量の尿処理を行うため、大切な業務と分かってはいるものの、苦痛に感じる場合もあるでしょう。
泌尿器科のメリットとデメリットとは?
泌尿器科で勤務するには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれについて詳しく解説します。
メリットと良い口コミ
- 周術期の看護や尿路ストマ・カテーテル類関連のスキルを習得できる
- 男性看護師が比較的多いので人間関係がギスギスしにくい
- デリケートな悩みや不安に対応できるコミュニケーションスキルが向上する
泌尿器科では手術や処置がとても多いのですが、周術期の看護や処置などをしっかりと経験できます。
泌尿器科には男性看護師が配属されることが多いです。他の部署よりも男性看護師が多い分、女性社会特有の雰囲気を中和してくれているので、人間関係が悪くなりにくいと思います。
泌尿器科では、検査や処置、手術が多い診療科であり、周術期の看護はもちろん、泌尿器科領域のあらゆる処置のスキルを身に付けることが可能です。
他のどの診療科でも、排尿障害のような泌尿器科領域のトラブルは多いため、泌尿器科でのスキルアップは、他の診療科でも重宝されるスキルです。
また、看護師は女性ばかりの環境がゆえに、人間関係に悩みを持つ看護師は多くいます。
泌尿器科では他の診療科と比較すると男性看護師が多い傾向にありますので、女性社会特有の人間関係の煩わしさが、男性看護師の存在により緩和され、良好な人間関係になりやすいです。
デメリットと悪い口コミ
- 女性看護師が処置を行うことを拒否される場合がある
- 男性患者からのセクハラを受けることがある
- クリニック勤務の場合には給料が下がる
明らかな激しいセクハラはありませんが、冗談っぽく下ネタを言ってくる患者さんはたまにいますね。聞き流せれば良いんですが、生理的に受け付けないタイプの看護師は嫌だと思いますよ。
泌尿器科は、大きな病院よりもクリニックの求人のほうが多いんですが、クリニックだと夜勤はないし残業もそれほど多くないので、給料は下がっちゃいます。
泌尿器科は男性患者が多く、男性生殖器の疾患を対象とするデリケートな診療科なので、患者自身の羞恥心は大きくなります。
そのため、女性看護師よりも男性看護師が処置を行うほうが好まれる場合もあり、特に若い女性看護師が処置に付くことを拒否される場合もあります。
看護師自身の対応が悪いというような理由ではないにしても、他の看護師に代わってくれなど患者から希望されると、その後もその患者と関わりにくくなってしまう場合もあり得ます。
みき
めぐみ
ジョブス
まとめ:泌尿器科は周術期や専門性を習得できる!
処置や検査、手術が多い泌尿器科では、普段よく行われる尿道留置カテーテルの挿入から最先端の治療に至るまで、様々なスキルの習得が可能です。
対象とする臓器の特性から、患者が羞恥心を抱きやすいので、プライバシーの配慮や羞恥心へのケアが求められる診療科です。
その関わりの中で細やかな気遣いやコミュニケーションスキルの向上も図ることができます。
患者の9割が男性なので女性看護師にとっては不安を感じる方もいるかもしれませんが、プロとして毅然とした態度で勤務に臨み、スキルアップにチャレンジしてみてはいかがですか?