集中治療室(ICU)とは、重症患者に対し24時間体制で高度な医療や看護を集中的に行うための病院内の専門施設のことです。
ICUは、特定の診療科に限らず重篤な状態の患者を対象とするため、幅広い知識や技術、迅速な対応が求められる部門です。
24時間体制で重症患者の集中ケアを行うICUですが、看護師にとってこの診療科(部門)は働き続けるのに魅力的なのでしょうか?
この記事では、ICUへの異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、仕事内容やお給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
ICU看護師を取り巻く現状とは?
ICUや救急外来は、医療ドラマの影響もあり実践経験の乏しい看護学生からは人気ですが、現場で働いている看護師からすると、「向いてる・向いていない」が顕著な診療科です。
ICUでの対応次第で死亡率や合併症の発症率、在院日数が変わってくるので精神的な負担も大きい業務です。
しかし、ICUは「患者が生死をさまよう場所」のイメージが強いですが、ICU看護師からすると「元気になって出てこれる場所」のイメージが適切のようです。
また、ICUの専門医は1600人程度で32万人いる医師の0.5%にすぎません。
専門医不足の現状から遠隔ICU(病院側と専門医がインターネットを通して患者の急変に対応する)の普及の動きがあり、看護師の対応力もレベルの高い技術が必要になってきています。
ICUの種類とは?
集中治療を行うICUですが、診療科別、部位別に細分化されたICUが設置されている病院があります。
ICUの種類については次のとおりです。
種類 | 名称 | 対象疾患 |
全般 | 集中治療室(ICU) | 急性機能不全の患者 |
全般 | 救命救急ICU | 搬送された危篤状態の患者 |
全般 | 高度治療室(HCU) | ICUよりやや重篤度の低い患者 |
全般 | 外科系集中治療室(SICU) | 外科手術直後の患者 |
部位別 | 冠動脈疾患集中治療室(CCU) | 心筋梗塞や狭心症の患者 |
部位別 | 脳卒中集中治療室(SCU) | 脳卒中やくも膜下出血の患者 |
部位別 | 腎疾患集中治療室(KICU) | 腎不全や肝炎の患者 |
部位別 | 呼吸器疾患集中治療室(RICU) | 呼吸器不全や心不全などの患者 |
周産期・小児 | 母体胎児集中治療室(MFICU) | 妊娠中毒症や切迫流産などの妊婦や胎児 |
周産期・小児 | 新生児集中治療室(NICU) | 未熟児や先天奇形などの新生児 |
周産期・小児 | 移行期集中治療室(GCU) | 急性期治療が終了した新生児 |
周産期・小児 | 小児集中治療室(PICU) | 重症・手術後の小児患者 |
Check:ICU・救命救急ICU・SCU・MFICU・NICU・GCU・PICU以外は専用の基準はありません。
ICUは、診療科や部位、疾患を問わず幅広い分野の疾患が対象となります。
一般的なICUに対し、心筋梗塞など心疾患の診療を行うCCU(冠疾患集中治療室)や脳血管疾患を対象とするSCU(脳卒中集中治療室)、新生児が対象のNICU(新生児集中治療室)といった、専門性に特化しより高度な医療を提供する集中治療室があります。
ICUは、小規模な病院にはあまり備えられておらず、中規模~大規模病院に設置されています。
CCUやNICUのように細分化された部門は、さらに専門性の高い医療を提供するため、大学附属病院や総合病院などの大規模病院に見られます。
みき
めぐみ
ジョブス
ICU看護師の仕事内容と役割とは?
重症患者への24時間体制の医療を展開するICUでは、看護師のスキルが非常に重要になります。
ICUで勤務する看護師の仕事内容や役割について見てみましょう。
1、治療に関する仕事
- 医師の診療・検査の介助、緊急時の対応
- 全身状態管理、ケア
- モニタリング、機器の管理
ICUに入室する患者は、緊急度の高い重症患者であるため、高度な治療がスピーディーに展開されていきます。
生命に関わるような処置や急変対応は日常的によくあり、一刻を争うような緊迫感の中、常に迅速な対応や的確なアセスメントが求められます。
さらに、ICUでは、ベッドサイドモニターをはじめとし人工呼吸器などの高度な医療機器が頻繁に使用されています。
モニタリングしながら患者の全身状態を管理するとともに、各医療機器の取り扱いにも熟知する必要があります。
一般病棟よりも処置や急変対応、医療機器の使用が多く、幅広く超急性期~急性期の知識やスキルが求められる現場です。
2、チーム医療に関する仕事
- 各職種との情報共有
- 多職種によるカンファレンス
- 役割分担の明確化、連携、協働
ICUでは、看護師の他にも医師や臨床工学士、薬剤師ら様々な職種の医療スタッフが携わっています。
スタッフ間での意思を統一し最善のチーム医療を提供するために、各職種間の情報共有や連携、多職種でのカンファレンスは必須です。
それぞれの役割を明確にし十分に力を発揮できるように、各職種間・看護師間の連携や協働が重要になってきます。
3、精神的ケアに関する仕事
- 患者・家族の訴えの傾聴、声かけ
- 医師とのインフォームドコンセントの調整
- 家族の面会の調整
ICUに入室している患者は、重篤な状態であるため、患者自身の不安はもちろん、家族の不安もかなり大きなものになります。
回復できるのか、後遺症は残るのだろうか、いつまでICUにいるのだろうか、など特殊な環境下におかれた不安も生じます。
ましてや、患者の意識が回復しない場合、家族の不安は増大する一方ですし、一般病棟に比べて面会時間や面会者の制限が厳しいため、家族の不安やストレスも大きくなります。
長時間患者と接することができない家族の思いや不安を考慮し、限られた短時間の中で、家族への精神的ケアも大切です。
みき
めぐみ
ICU看護師の給料は高い水準だが夜勤と手当次第!
ICUの夜勤回数は、2交替で最低4〜5回、3交替で最低9〜10回と他診療科と比べると多い傾向があります。
さらに、勤務する病院次第ですが危険手当か特殊手当が付くので、ICU看護師の平均年収は510〜530万円前後になります。
- 看護師の平均年収:480万円
- ICU看護師の平均年収:520〜540万円
- 危険手当(特殊手当):8,000〜10,000円/月
看護師の平均年収480万円であることを考えるとやや高い水準ですが、精神的なストレスを考慮すると「割に合わない」と思う方も多いようです。
みき
めぐみ
ジョブス
ICU看護師はこんな人に向いている
ハードな勤務となるICUには、どのようなタイプの看護師が向いているのでしょうか。
向いている看護師、向いていない看護師について、順に見ていきましょう。
ICUに向いている看護師
- テキパキと迅速な動きができる
- 医療機器の取り扱いが得意
- ストレスを溜めにくく気持ちの切り替えができる
- 常に向上心があり学習できる
ICUでは重症患者の治療を行うため、スピーディーで的確な判断が求められます。
一分一秒を争うような緊急度が高い場面に遭遇することも、一般病棟と比較するとかなり多くなります。
そのため、看護師の気付きやアセスメントが非常に重要になり、治療の効果や患者の状態を左右しかねません。
どのような場面でも、落ち着いて迅速な判断や対応ができるテキパキしたタイプの人は、ICUに向いているでしょう。
また、ICUには、各種モニターや人工呼吸器のような医療機器が多いという特徴があります。
何らかの医療機器が装着されていることが大半ですし、一般病棟よりも人工呼吸器のような高度な医療機器に触れる機会は多くなります。
経験を積むことによって医療機器の操作は習得できますが、元々機械が苦手なタイプよりは、機械の操作が苦にならない・どちらかというと機械が好きな人のほうが、拒否感が少なくスムーズに医療機器に触れていけるでしょう。
ICUに向いていない看護師
- 患者とじっくり関わるほうが好き
- ICU独特の緊迫感に包まれた雰囲気が苦手
- 夜勤が多いのが嫌
- 家族とのコミュニケーションが苦手
ICUは、ワンフロアで閉鎖空間となっている病院が多く、「常に誰かに見られている感じがする」「息が詰まる」といった、ICU独特の雰囲気があります。
ただでさえ緊張感の高い上に独特の緊迫感が漂うICUの環境は、このような雰囲気が苦手な看護師にとっては辛い職場になってしまいます。
また、ICUに入室している患者は、意識障害や人工呼吸器装着によりコミュニケーションが困難な場合が多く、状態が回復しコミュニケーションを図れるようになっても、すぐに一般病棟へ転室してしまいます。
加えて、第一に救命が優先される現場であるため、コミュニケーションや精神的ケアに時間を割くことが難しい場合も多く見られます。
じっくりと時間をかけたコミュニケーションを図りにくい環境なので、密な関りを持ちたい人には、物足りなさを感じやすいでしょう。
ICU看護師のメリットとデメリットとは?
スキルアップができる反面、ハードな勤務状況となりがちなICUでは、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリットと良い口コミ
- 急性期の幅広いスキルを習得できる
- 回復過程を実践でき、達成感ややりがいがある
- 実は残業が少ない
忙しいし学習量もとても多いのですが、沢山のスキルが身に付くので、どんどん面白くなっていきます。どこへ異動になっても通用できる自信もつきました!
重篤な状態で意識もなかった患者さんが、回復して一般病棟へ移る姿を見るのは、本当に嬉しく思います。看護師自身の達成感を感じることもできますし、やりがいがありますよ。
ICUは、特定の診療科に限定されず様々な領域の重症患者が入室します。
そのため、ICUに勤務する看護師は、どの診療科・疾患にも対応できる幅広い知識や技術が必要になります。
幅広いスキルを習得し、加えて、急変対応のような迅速な動きも身に付くので、看護師として大きくスキルアップすることが可能です。
ICUでは、治療の甲斐なく亡くなってしまう患者も多い反面、回復過程をたどり一般病棟へ転室できる患者も多くいます。
重篤な状態であるほど、患者の回復する様子はやりがいや達成感を感じられる嬉しい瞬間です。
また、ICUは、超急性期の重症患者ばかりが対象であり、急変や緊急手術が多いことからも、毎日忙しく定時には帰宅できないイメージがあります。
ですが、ICUは、看護基準や診療報酬の定めにより一般病棟よりも看護師が多く配置されており、夜勤帯でも日勤と同じくらいの人数がいるため、スムーズに引継ぎができ残業が少ない傾向にあります。
デメリットと悪い口コミ
- 緊急度の高い現場のため精神的なストレスがある
- 夜勤回数が基準値を超えることが多い
- 覚えることが多すぎてついていけない
たくさんの医療機器に囲まれた重症患者さんばかりなので、少しのミスも許されない雰囲気があって常に緊迫感がすごいです。気が休まる時がなくて辛いのが本音です。
夜勤でも看護師の人数は多いのは良いんですが、その分どうしても夜勤回数は多くなってしまいます。一般病棟よりも夜勤回数が多く設定されているのは結構きついです。
ICUは、急変を見逃さない鋭い観察力や迅速な判断力を要する緊急度が高い現場です。
少しのミスやわずかな遅れで生命に関わる事態となってしまう上に、オープンフロアで閉鎖空間なので常にスタッフの目も気になり、精神的なストレスが大きくなってしまいます。
また、ICUのような特殊な部門は、夜勤に対する制限の適用外なため、一般病棟よりも夜勤回数が多く基準値を超える回数が設定されることもあります。
夜勤帯であっても重症患者の受入れや急変対応が日勤並みにあるので、体力的にも精神的にも疲労やストレスが蓄積してしまいがちです。
みき
めぐみ
ジョブス
まとめ:高度な医療を提供するICUで急性期看護のエキスパートを目指そう!
24時間体制で重症患者の集中ケアを行うICUでは、様々な疾患の看護や処置など多くのことを学べます。
看護師の鋭い観察や的確なアセスメントが治療の一助となる場面も多く、非常にやりがいにつながるとともに、どこへ異動になっても通用する高いスキルを習得できます。
緊急度の高さや特殊な環境による精神的ストレスは大きくなりがちですが、気分転換を図りながら、ICUでの看護のエキスパートを目指してみませんか!