循環器内科は、生命の中枢を担う心臓や血管系に関する疾患が対象です。
心臓や血管系の疾患は、急に発症することが多い上に生命に直結する疾患も多いため、急変時の対応や重症患者の管理など、多くの知識や高度なスキルが必要とされる診療科です。
瞬時の対応が求められる循環器内科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科目なのでしょうか?
この記事では、循環器内科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
循環器内科とは?患者ニーズと循環器外科との違い
循環器内科は、心臓や血管系疾患のうち、外科的手術が適応にはならず内科的治療を行う疾患を診療する内科の専門科の一つです。
生命に直結する心臓が対象なため、病状の悪化が即急変となり、1分1秒を争う緊急度の高い症例も多いという特徴があります。
薬物治療や心臓カテーテルによる治療が中心となり、CCUを設置し高度な医療を提供する病院もあります。
循環器外科との違いとは?
循環器内科では内科的治療を行うのに対し、循環器外科では外科的手術が治療の中心となります。
一般内科や循環器内科など他の診療科で異常を指摘され手術が適応と判断された場合に、循環器外科への紹介となり受診されることがほとんどです。
また、循環器内科で、心臓カテーテルによる血管拡張などの治療を行った上で、さらに外科的手術が必要になった場合にも、循環器外科での診療となります。
循環器内科と循環器外科は、同様の疾患を扱う診療科であるため、相互の密な連携が必要とされます。
総合病院とクリニックの科分け
- 循環器科
- 循環器内科・循環器外科
- 心臓内科・心臓血管外科
総合病院などで「循環器科」と表記されている場合は、ほぼ循環器内科を指しています。
循環器外科がある病院では、循環器内科・循環器外科と分けて表記していることが多く、特に循環器外科は、心臓血管外科や心臓外科と表記されている病院も多くあります。
また、大規模な病院では、循環器内科と循環器外科を併せた「循環器センター」を設置している所もあります。
- 内科・循環器内科
内科のクリニックでも、一般的な循環器疾患の診療は行っています。
循環器内科の専門医による診療を行うクリニックでは、循環器内科と表記されています。
心臓病の大半が心電図や超音波などの簡単な検査で診断がつくため、個人クリニックでも内科と循環器内科で対応している医院は多いです。
みき
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循環器内科の仕事内容と役割とは?
循環器内科では、重症化し生命に直結する状態となる症例も多くあります。
そのため、循環器内科で勤務する看護師には、専門性の高い高度な知識やスキルが必要とされます。
主な仕事内容や役割について見ていきましょう。
1、心電図に関する仕事
- 三点誘導、十二誘導心電図の準備・実施
- 心電図モニタリング
- 検査の説明
健康診断をはじめとし、入院時、手術前後、重症患者のモニタリングなど、どのような病院・診療科でも実施されている頻度の多い検査です。
「洞調律であるか」大きな異常は出現していないか」というような大まかな波形は分かっても、それぞれの波形を正確に読むには、かなりのスキルが必要になります。
そのため「心電図が分からない」「苦手だ…」と感じる看護師は多いものです。
循環器内科では心臓が対象であり、病態はほぼ心電図に表れるため、病態の把握や異常の早期発見には心電図の観察はかなり重要です。
2、心臓カテーテル検査に関する仕事
- 心臓カテーテル検査・治療についての説明・診療の補助
- 合併症の観察・ケア
- メンタル面のケア
心臓カテーテル検査は、循環器内科ではよく行われており、検査だけではなくステント挿入やバルーン拡張といった治療も行われます。
穿刺部位が上肢からか鼠径部からかによって、検査後の安静度や苦痛の程度も変わってきます。
異常のアプローチ部位がどこからだとしても、穿刺部の出血や胸部症状など検査後の合併症の観早期発見につながる重要なケアです。
まして、心臓に直接カテーテルを通すという検査方法は、患者にとって大きな不安となるので、不安の軽減に努めることも大切なケアになります。
3、栄養指導・服薬指導・生活指導
- 食事習慣や嗜好、生活習慣についての情報収集
- 食事制限や水分制限などの食事指導・服薬指導
- 栄養士・薬剤師との連携・チーム医療
循環器疾患では、高血圧や脂質異常症のような生活習慣病から、心筋梗塞や心不全のように重症化する疾患まで様々です。
バランスの取れた規則正しい食習慣は生活習慣病の予防や改善につながりますし、循環器疾患においては、塩分制限や水分制限は大切な治療方法の一つです。
また、降圧剤や利尿剤、抗凝固剤といった非常に重要な薬剤を服用することも多く、薬剤の重要性や服用方法、注意点について十分に説明し理解を得る必要があります。
看護師のみではなく、栄養士や薬剤師と連携し、患者背景を考慮した適切な指導を行う事が大切になります。
循環器内科の対象疾患
循環器内科の対象疾患は、心臓病以外にも血管系が含まれるので疾患は多岐に渡ります。
- 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
- 弁膜症
- 心膜・心筋疾患(拡張型、肥大型、内膜炎、外膜炎)
- 不整脈
- 大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離、炎症)
- 心不全
- 静脈疾患(肺高血圧、静脈血栓)
- 高血圧
- 脂質異常症(メタボリックシンドローム)
虚血性心疾患や不整脈、心不全などの心疾患や、大動脈瘤や静脈血栓のような血管系の疾患が対象となります。
心臓や大血管が対象となるため、急激に発症し生命の危機に脅かされる症例も多く、一分一秒を争うような迅速な判断や対応を要する場面にも遭遇しやすいという特徴があります。
また、循環器疾患の原因や悪化の要因となり得る、高血圧や脂質異常症のような生活習慣病も循環器内科の対象となります。
循環器内科の検査内容
循環器内科では以下の検査を行います。
- 心臓カテーテル検査
- 超音波検査
- 心電図
- ホルター心電図
- トレッドミル運動負荷心電図
- ABI検査
- CT検査
- 胸部X線検査
- 核医学調査
循環器内科で行う代表的な検査に、心電図や心臓カテーテル検査が挙げられます。
通常の十二誘導心電図であれば、苦痛が少なく短時間で行えますが、ホルター心電図は24時間心電図を装着しなければいけませんし、トレッドミル運動負荷心電図は負荷をかける運動が負担になります。
心臓カテーテル検査は、カテーテルの動脈への穿刺や穿刺部に応じての安静保持など苦痛が大きくなり、合併症が発生するリスクも伴います。
検査について十分にオリエンテーションを行い、不安の軽減に努めるとともに少しでも苦痛が緩和できるような看護ケアは重要です。
みき
めぐみ
循環器内科でキャリアアップするには?
循環器内科で診療する疾患の一つである慢性心不全は、症例数も多く重症化しやすい疾患です。
循環器内科でさらに専門性を高めキャリアアップを目指す場合、慢性心不全看護認定看護師の取得が挙げられます。
慢性心不全看護認定看護師
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有し、実践・指導・相談の3つの役割を担います。
認定看護師になるには、認定審査を受験し合格する必要があり、認定審査の受験資格は次のとおりです。
- 日本の看護師免許を有する
- 5年以上の実務経験がある(そのうち3年以上は認定看護分野の経験が必要)
- 認定看護師教育課程を修了
教育課程は、2018年度は神奈川県1か所のみの開催で、受講期間は6ヶ月です。
慢性心不全看護認定看護師は、慢性呼吸器疾患看護と同じく2012年から認定が開始され、認定看護師全21分野のうちで最も新しい分野です。
2018年7月時点では全国に394人登録されており、他の分野と比較してもまだ少ない人数です。
資格取得を目指す際には、病院を休職しなければならず、教育機関が遠方となる場合は近くのアパート生活になるため、期間も費用もかかってしまいます。
多くの病院では、受講費の補助や通学期間中の給与の支給といった認定看護師取得の支援制度があるので、ご自身の病院の制度を確認しておきましょう。
みき
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循環器内科の勤務先とお給料は?
循環器内科で働く場合、どのような規模の病院があるのでしょうか。また、お給料についても、他の診療科と違いがあるのか見てみましょう。
- 大学附属病院
- 総合病院
- 専門病院
- 個人クリニック
どの病床規模だろうと循環器内科の診療科は扱っています。
大学附属病院のような大規模病院では最先端の高度な診療が行われていますし、専門病院でも専門性の高い診療が展開されていることが多いです。
循環器内科には特別な手当があるわけではないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
ただし、病床規模と給料は比例するため、個人クリニックよりも大学附属病院の方が給料は高く設定されています。
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みき
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ジョブス
消化器内科で働く看護師から聞いた現場の口コミ
良い口コミ(メリット)
不整脈の発見や判別などが1年目の時に比べて出来るようになってきました。誤った位置で記録した心電図はやくに立たないので、正しい位置に装着する事に注意してます。
毎日のように起こる急変や、重症患者さんの全身管理を経験したので、急変に強くなりました。今後、どこへ行っても対応できる自信もつきます。
心電図は、どの診療科でも頻繁にあり医療の現場では必須ですが、苦手とする看護師も多いです。
心電図の観察は、病状の変化や異常の早期発見に大変重要なため、循環器内科で勤務すると、心電図についての理解を深めることができます。
急変や重症化する症例が多くハードな現場ではありますが、急変対応の経験を積むことで急性期看護のスキルアップが可能ですし、救命へのやりがいも感じられます。
悪い口コミ(デメリット)
やりがいはあるけど、急変や緊急入院も多いし超重症な患者さんもいて、定時で帰れません。毎日の緊張感と残業とでヘトヘトです。
心臓にがんはほとんど発生しないので、がん看護が分からないです。だいたいの科では、がんの患者さんが入院していて化学療法とか緩和ケアとかもあるけど、循環器ではほぼ経験できません。
循環器内科で対象となる疾患は、心電図のわずかな変化が急変につながることもあるため、心電図の観察は必須ですし異常を見逃すわけにはいかないので、常に緊張感があります。
さらに、急変や重症化する症例も多い上に、心臓カテーテル検査入院のような短期入院も多いため入退院が激しく、毎日が忙しい現場です。
常に忙しく緊張感が伴うので、体力的にも精神的にも疲弊してしまいがちです。
また、循環器内科では、がんはほとんど症例がないので、どの診療科でも行うことが多いがん看護について学ぶ機会は少ないです。
こんな看護師が向いている
- 細かな変化に気付く観察力がある
- 迅速な行動ができる
- 機械が得意
循環器内科では、生命に直結する疾患を扱うため、些細な変化に気付くことができる観察力が重要です。
急変が多く一刻を争う救命の現場に遭遇することも多く、迅速で適切な対応が必須となります。
また、心電図をはじめとしペースメーカーや輸液ポンプ・シリンジポンプ、補助人工心臓など様々な機器を取り扱います。
機器の取り扱いは、日頃の自己学習や経験によりスキルは身に付きますが、機械に強いタイプの人の方が、苦手意識も低くより習得が早くなるため、循環器内科勤務に向いています。
みき
めぐみ
まとめ:心電図をマスターし急変対応のスキルアップを図ろう!
循環器内科は、心臓・血管系の疾患が対象であるため、病態の悪化は生命に直結し急変が多い診療科です。
忙しい診療科ですが、心電図が読めるようになり急変時の対応にも強くなるため、急性期看護についてのスキルを身に付けることができます。
また、慢性心不全看護認定看護師といった資格を取得しキャリアアップを図るという選択肢もあります。
知識やスキルの習得は簡単ではありませんが循環器内科での経験を積むと、CCUやICU、救命センターなどどの部署・どの診療科へ行っても即戦力となることができるので、看護師としての自信もつきます。