腎臓内科は、腎臓のみを対象とした診療科です。対象となる臓器は一つだけですが、腎臓内科で診療する疾患は多くあり病態も様々です。
透析が必要になる症例も多くあるため、腎疾患に対してだけではなく透析についての知識やスキルも求められます。
長い経過をたどる慢性期疾患が多い腎臓内科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科目なのでしょうか?
この記事では、腎臓内科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
腎臓内科とは?患者ニーズと透析科との違い
腎臓内科は、腎臓を対象とし、外科的手術が適応にはならず、内科的治療を行う内科の専門科の一つです。
透析シャント造設や腎臓移植、腎がん手術のような外科的手術を要する場合は、腎臓外科や泌尿器科での診療となります。
腎臓は、障害が発生し一旦機能が低下すると、悪化の一途をたどる場合が多く不可逆性の変化を引き起こしてしまうケースも少なくありません。
そのような腎不全の状態にならないように、また、できる限り透析導入に至らないように、病状の進行を引き留める治療を行うことが大切になってきます。
透析科との違いとは?
基本的に腎臓内科と透析科は異なり、腎臓内科は腎疾患全般が対象となるのに対し、透析科は透析を行う専門の診療科です。
透析科は、腎臓内科のようにあらゆる腎疾患が対象にはならず、透析導入となった患者の原疾患や合併症を対象としているため、腎疾患のみではなく透析導入のきっかけとなることが多い糖尿病についての看護も必要とされます。
透析を行う専門の診療科ですので、透析機器の操作はもちろん、穿刺や透析前中後の観察など、透析ならではの高い専門性が必要になります。
総合病院とクリニックの科分け
- 腎臓内科
- 腎臓内科・腎臓外科
- 腎臓内科・透析科
- 腎臓内科・内分泌内科
- 内科・腎臓内科
- 腎臓内科・透析科
- 腎臓内科・透析科・糖尿病内科
総合病院のように規模が大きい病院では、腎臓内科に加えて、手術をメインとする腎臓外科、透析療法を行う透析科、腎症を合併し透析導入となりやすい糖尿病や甲状腺などの内分泌内科というように、細分化された表記になっていることが多いです。
クリニックでも、腎臓内科の専門医が在籍していると、内科の他に腎臓内科を掲げている場合もあります。
さらに、腎臓内科専門のクリニックや、透析科と表記されている透析設備を完備し透析が可能なクリニックもあります。
みき
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腎臓内科の仕事内容と役割とは?
対象とする臓器は腎臓の一つだけですが、疾患や病態は様々です。
慢性期の患者が多いとは言え、急激に病状が悪化し緊急透析が必要になるといった急変対応も求められます。
腎臓内科で勤務する看護師には、どのような仕事内容や役割があるのか、主なものについて見ていきましょう。
1、透析に関する仕事
- 透析前後の観察・ケア
- シャントの管理
- 透析についての説明
腎臓内科と透析科とで診療科が分かれている場合、腎臓内科の看護師が透析に携わる機会は少ないです。
ですが、透析導入期や一時的な緊急透析、透析を受けている患者の状態悪化による入院は多々あるので、透析についての知識は必要とされます。
また、シャントの観察・管理や、一時的な透析やシャント閉塞のようなシャントトラブルの場合の短期留置型透析用カテーテルの管理も、腎臓内科では重要なケアとなります。
2、精神的ケアに関する仕事
- 訴えや不安の傾聴
- 言動や意欲の観察
- 患者ニーズの把握
腎臓内科で対象となる疾患には、治癒する疾患もありますが、病状の悪化や寛解を繰り返し、やがて腎不全、透析導入へ経過する疾患も多くあります。
「いつになったら良くなるのか、このまま悪化して透析導入になってしまうのか、透析を生涯続けられるのか」など、患者は多くの不安を抱えています。
治療に対する思いや不安を観察しながら訴えを十分に傾聴し、少しでも不安を軽減でき治療に前向きに取り組めるように精神面でのケアは大変重要です。
特に透析導入期では、腎機能が悪化しそれによる身体的苦痛が強いと同時に、透析に対しての不安も大きいものです。
また、透析導入になると生涯継続しなければいけませんし、仕事や生活に大きな影響を及ぼします。
慢性の腎疾患を抱えながらの今後の生活への不安も生じるため、ソーシャルワーカーをはじめとした他職種との連携を行いサポートする体制が必要になります。
3、生活指導
- 食事習慣や嗜好、生活習慣についての情報収集
- 食事制限や水分制限などの食事指導・服薬指導
- 栄養士・薬剤師との連携・チーム医療
腎疾患では、蛋白制限やカリウム制限、塩分制限といった食事療法、水分制限は大切な治療方法の一つです。
食事療法が必要な疾患は多くありますが、中でも腎疾患は制限すべきものが特に多く、これらが守られないと病状の悪化につながってしまいます。
また、ステロイドや免疫抑制剤のような多くの薬剤を服用しなければならないので、服薬コンプライアンス・アヒドアランス向上のため、服薬指導は大変重要です。
看護師のみではなく栄養士や薬剤師と連携したチーム医療で、患者背景を考慮した適切な指導を行う事が大切になります。
腎臓内科の対象疾患
腎臓内科では以下の疾患を扱っています。
- 慢性腎臓病
- 急性腎炎・慢性腎炎
- ネフローゼ症候群
- 急性腎不全・慢性腎不全
- IgA腎症
- 膜性腎症
- IgA血管炎(紫斑病性腎炎)
- 膜性増殖性腎炎
- ループス腎炎
- 糖尿病性腎症
- 腎硬化症
- 遺伝性腎疾患
- 尿細管間質性腎炎
- 悪性高血圧
- 血液浄化療法
腎炎や腎症にも様々な種類があり、やがて慢性の経過をたどり腎不全の状態になってしまうと、障害を受けた腎臓は元に戻ることができません。
腎臓病の初期は無症状であり気付かないうちに病状が進行することが多いため、早期の確定診断や治療開始は、予後に大きく影響します。
同じ疾患であっても病状が多岐にわたるため、程度やステージによって、治療法が異なるという特徴があります。
腎臓がんや腎臓に隣接している尿管の障害、それによる水腎症などは、泌尿器科での診療となります。
腎臓内科の検査内容
腎臓内科では以下の検査を行います。
- 尿精密検査
- 血液精密検査
- 免疫学的精査
- 腎生検
- 腎エコー
- 腎CT
- 腎血管MRI
- 腎アイソトープ
- 腎尿路造影
腎臓内科では、健康診断や定期診察など通常の尿検査や血液検査で異常を認めた場合、さらに深く調べるため精密検査を行うことが多いです。
乳幼児健診や学校健診、職場や地域の健診で尿検査が行われており、小児から老年期に至るまで、あらゆる世代の患者が対象となるという特徴があります。
ある程度の疾患や病状は他の検査でも分かるのですが、より詳細に確定診断する際には、腎生検を行います。
腎生検は、穿刺に伴う痛みや検査後の安静による苦痛など侵襲が大きい検査であり、出血や感染といった合併症のリスクも伴います。
注意深い観察や適切な対応はもちろんのこと、検査や検査結果に対しての不安の軽減に努めることも必要です。
みき
めぐみ
腎臓内科でキャリアアップするには?
腎臓内科でキャリアアップするには、透析看護認定看護師の資格取得という方法があります。
どのような方法で取得するのか、見てみましょう。
透析看護 認定看護師
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有し、「実践・指導・相談」の3つの役割を担います。
認定看護師になるには、認定審査を受験し合格する必要があり、認定審査の受験資格は次のとおりです。
- 日本の看護師免許を有する
- 5年以上の実務経験がある(そのうち3年以上は認定看護分野の経験が必要)
- 認定看護師教育課程を修了
教育課程は、2018年度は東京都1か所のみの開催で、受講期間は6ヶ月です。
透析看護認定看護師は、2005年から認定が開始された分野で、2018年7月時点では全国に261人登録されています。
他の分野と比較しても少ない人数ですので、資格を取得すれば、勤務先の病院だけではなく、地域での活躍も十分できそうです。
資格取得を目指す際には、病院を休職しなければならず、教育機関が遠方となる場合は近くのアパート生活になるため、期間も費用もかかってしまいます。
多くの病院では、受講費の補助や通学期間中の給与の支給といった認定看護師取得の支援制度があるので、ご自身の病院の制度を確認しておきましょう。
みき
めぐみ
ジョブス
腎臓内科の勤務先とお給料は?
腎臓内科で働く場合、どのような規模の病院があるのでしょうか。また、お給料についても、他の診療科と違いがあるのか見てみましょう。
- 大学附属病院
- 総合病院
- 個人クリニック
腎臓内科には特別な手当があるわけではないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
ただし、病床規模と給料は比例するため、個人クリニックよりも大学附属病院の方が給料は高く設定されています。
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みき
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腎臓内科で働く看護師から聞いた現場の口コミ
良い口コミ(メリット)
腎臓内科には慢性の経過をたどる患者さんが多いので、長いお付き合いになることがよくあります。その中で、じっくりと患者さんに向き合って関わることができます。
腎疾患は幅広くて病態によって看護のポイントも異なってくるので、最初は複雑で分かりにくかったですが、腎疾患についての知識をしっかりと習得できます。
腎臓の疾患には個別指導や集団指導などが大切なので、繰り返し指導を行うことで患者さんの理解を得られると「一緒に頑張った!」っていう達成感があります。指導はよく行うので、患者指導のスキルも上がったと思います。
腎臓内科では、経過が長く病状も変化・進行しやすいので、繰り返しの入退院や長期入院となる場合もよくあります。
その分、患者との関りが密になるので、患者をより理解し個別性のある看護を展開できます。
生活指導が大変重要であり、繰り返し指導を行う場面も多いため、指導のスキルや慢性期看護について深く学ぶことが可能です。
悪い口コミ(デメリット)
厳しい水分制限や食事制限が必要な患者さんも多いんですが、守れていないとすぐに浮腫が出現したりデーターが悪化したり、不摂生が目に見えてしまいます。そのたびに何度も指導をして時にはキツク言わなきゃいけない時もあるので正直辛いです。
腎臓内科では、中にはクセの強い患者さんもいて、こちらの言う事を聞き入れてくれず、看護師を選ぶ患者もいるので対応に困ってしまいます。長いお付き合いになる患者さんとの信頼関係を築きにくいことも多々あって自信がなくなってしまいます。
病状が進行してしまい透析導入を免れないのに透析を拒否している患者や、入院を繰り返す内ち投げやりになってしまう患者がよくいます。どうやって関わるべきか悩んでしまう時もありますね。
腎臓内科では、経過が長い上に病状が悪化し透析導入になってしまうケースが多くあります。
厳しい食事制限や安静が必要であっても、それを守れていないと再三の指導が必要になるため、何度指導を行っても効果的とは言えず無力感に襲われてしまうこともあります。
接する時間が長いほど、患者の近くにいる看護師に対し攻撃的や威圧的な態度を取る患者も少なくないので、患者との関りが辛くなってしまうこともよくあります。
こんな看護師が向いている
- じっくりと向き合うことが得意
- どの年代の患者にも対応できる
- 機械に強い
腎臓内科は慢性疾患が多く、長期の経過をたどりますし、その中でも透析は生涯行わなければいけないので長く関わることになります。
また、腎臓内科では、小児から妊婦、青壮年期、老年期というように年齢層が幅広いという特徴があります。
発達段階により疾患の理解度や背景も様々なので、その年代に応じた看護が必要になるため小児でも成人でも年代への苦手意識が少ない方が接しやすいです。
透析科と診療科が分かれている病院では、透析の機器に触れる機会は少ないかもしれませんが、透析の仕組みや機器について理解することは、透析導入期の説明や指導に十分役立ちます。
みき
めぐみ
まとめ:腎疾患を掘り下げ慢性期看護を深めよう!
腎臓内科で対象となるのは腎疾患のみになりますが、病態や進行度によって治療や看護のポイントも違ってくるので奥の深い診療科です。
透析についての知識やスキルを習得できることも、大きくスキルアップできる機会になります。
さらに、経過が長い患者が多いことから慢性期看護を深めることもでき、今後のキャリアにも十分活かせることができるでしょう。