看護学生に限らず、今や奨学金を借りている大学生は2人に1人もいます。
奨学金には様々な種類がありますが、返済が免除される病院奨学金を利用した人も多いのではないでしょうか?
看護学校卒業後、奨学金を支給してくれた病院に馴染むことができて、お礼奉公が無事に終了すれば問題ありませんが、返済で苦しむ看護師も少なくありません。
仮に何らかの事情でお礼奉公の途中で退職か転職をすれば、残金の一括返還を求められてしまいます。
そこでこの記事では、「お礼奉公中の病院を辞めたい看護師」に向けて、トラブル事例や奨学金を肩代わりしてくれる病院などを紹介します。
みき
めぐみ
ジョブス
お礼奉公の悩みを持つ看護師の相談内容
現在、東京都の病院で働いている2年目の看護師です。
学生時、病院奨学金と生活支援金を併用して借りていたため、お礼奉公として計3年働く必要があります。
人間関係が険悪で休憩もろくに取れない病棟なので、体調も崩し気味になりました。
他科への異動をお願いしましたが、臨床経験が乏しからと取り合ってくれませんでした。
こんな状況の中で、今の病棟であと2年働くことは無理だと思い、退職か転職を考えています。
でも、まとまった貯金がなく、生活支援金を返済しながら奨学金を一括請求されたら、とてもじゃやないですが払うことはできません。
分割払いだったり、減額してくれたり、何か方法はないでしょうか?奨学金の一括返済が重くのしかかって、どうしたらいいかわかりません。
こちらの相談内容のように、何らかの事情でお礼奉公期間中だとしても「退職したい」「転職したい」と、思っている看護師は多いのではないでしょうか?
病院奨学金を借り始めるタイミングは、たいてい看護学校入学前なので理想とする看護師像や病院選びのコツを知らない状態です。
「看護師になるべく学ぶ4年間の過程」「看護実習でお世話になった病院」「実際に働いてみて私には合わない」など、病院奨学金以外の病院で働きたいと思うのは至極当然でしょう。
ただし、ネックになるのが奨学金の返済。自身の経済力を把握して、計画的に返済しないと痛い目にあってしまう可能性もあります。
奨学金が返済できず1万人が自己破産
親の経済力に頼れないことから奨学金を借りることになるため、多額の奨学金を借りても返済ができず、自己破産に追い込まれるケースが累計1万件以上あります。
看護師の場合、自己破産しても資格を失うわけではないので、通常通り働くことができます。
しかし、連帯保証人を含めた財産が没収され、クレジットカードを作れず、賃貸を借りることすら困難になります。
そのため、自己破産にならないためにも賢く返済をしなければならないのです。
みき
めぐみ
ジョブス
お礼奉公中に退職した場合の返済方法とは?
病院奨学金を借りた看護師がお礼奉公中に退職または転職した場合、働いていた期間に応じて減額され、基本的には一括での返済を求められます。
もし、病院奨学金以外に学生支援機構をはじめとした奨学金を併用しているのであれば、学生支援機構に限っては減額や猶予などの救済制度もあります。
- 病院奨学金:基本は一括返済
- 日本学生支援機構:分割(救済制度あり)
例えば、毎月5万円を病院奨学金として4年間借りていた看護師が3年目の直前に退職すると、残りの2年間分である120万円を一括で返済しなければなりません。
貯蓄が十分にないため分割での交渉を病院側にしても、病院の規定や良心次第なので期待はできません。
無利子で大きなお金を貸す病院サイドとしては、さっさと借りたお金を返して貰いたいのが本音だからです。
みき
めぐみ
ジョブス
お礼奉公中に退職するための解決策とは?
奨学金を一括返済する貯蓄はないけど、お礼奉公中にどうしても病院を辞めたいのであれば、解決策は主に3つあります。
- 両親や兄弟、親戚に相談する
- 併用している奨学金があれば返済相談を行う
- 奨学金を肩代わりしてくれる病院を探す
身内にお金の援助をしてもらうのが、最も手取り早い方法です。
もしくは、病院奨学金以外の奨学金の救済制度を利用して、まずは病院奨学金の返済を優先して行うことです。
カードローンなどの借り入れは利子が高く、利子のために働くようになっては元も子もないので、選択肢からは除外しています。
さらにもう一つの選択肢は、奨学金を肩代わりしてくれる病院を見つけることです。
奨学金を肩代わりしてくれる病院とは?
お礼奉公中に退職したいけど一括返済できる貯金がないのであれば、肩代わりしてくれる病院を探すことも一つの解決策になります。
「奨学金立替制度」「奨学金返済支援制度」などの呼称で、奨学金の救済制度を設けている病院があります。
この制度は、他病院で奨学金制度を利用して、返済途中で退職された方が当院に採用が決まった場合に肩代わりする制度です。
以下は、肩代わりしてくれる病院の一例です。
- 同仁会 谷口病院(宮崎県日南市)
- 宝生会 PL病院(大阪府富田林市)
- 内海慈仁会 姫路北病院(兵庫県神崎郡)
- 海秀会 うえむら病院(沖縄県中城村)
- 養生園 TAOKAこころの医療センター(徳島県徳島市)
- 社会福祉法人 秀峰会(神奈川県横浜市)
ただし、返済を肩代わりしてくれる病院を探すとなると、転職できる幅が狭まるためおすすめはできません。
肩代わり制度を設けてまで看護師の採用が必要な理由を考えてください。
通勤するのに不便なエリア、老朽化が著しい病院、7対1を目指している、など、何かしろ看護師が集まりづらい理由があるのです。
どうしてお礼奉公中の病院の居心地が悪く、返済できるお金もない場合に限り肩代わりしてくれる病院を探しましょう。
なお、600件を超える病院がある東京都ですら、奨学金返済の肩代わりをしてくれる病院は10件程度なので、実際に制度が運用されているかどうかを含めて転職エージェントを通して確認した方が良いでしょう。
肩代わりしてくれる病院を探すなら マイナビ看護師
ジョブス
めぐみ
ジョブス
お礼奉公に関する実際のトラブル例
2019年現在は、お礼奉に関するトラブルは少なくなりましたが、未だにトラブルを抱える看護師は少なくありません。
例えば以下の3つの事例が実際に報告されています。
3年間のお礼奉公のうち2年5ヶ月は勤務したのに、「お礼奉公期間中の退職は貸付金額の全額を返還する必要がある」と言われた。2年間分の減免すらない。
病院奨学金の規約に「規約期間中に退職する場合、奨学金の返済は1年以内であれば分割でも可能」と記載があるのに、一括で返済するように言われた。
お礼奉公の期間は3年のはずなのに、「看護師として病院に貢献していない。あと1年は働くように」と言われた。お礼奉公が終わったのに辞めさせてくれない。
このような問題は、当事者である自分と病院だけで話しあっても解決することは難しいので、トラブルがあった際には、自分の考えで判断せずに労働基準監督署に相談しましょう。
お礼奉公に関連する法律
お礼奉公の制度は労働基準法の観点から法律違反と言われることがありますが、あくまでも労働者の足かせになるような条件をNGとしています。
例えば、お礼奉公の期間を6年以上定めることや賠償や違約金を支払いを請求することです。
以下がその内容に関する条文です。
労働基準法14条:契約中の退職の自由が認められない契約期間の上限を3年と定める(一部職種は5年)
労働基準法16条:使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
2010年以前は10年間の強制就業や違約金500万円など、トラブルが多くあったことが事実です。
トラブルは労働基準監督署や弁護士をはじめとした第三者の協力の元、解決しましょう。
みき
めぐみ
ジョブス
まとめ:自分一人で考えすぎず周りの協力を得よう
お礼奉公は看護師にも病院にも、両者にメリットのある制度ですが、もし期間中に退職を検討しているようなら、まずは契約内容を今一度確認することからはじめましょう。
そこで、返済は可能か、可能であればいくらか、返済できないなら助力は得られるか、肩代わりしてくれる病院を探す必要はあるか、など。
トラブルを避けるためにも事前に情報収集し計画を立てなければなりません。
一人の力では解決できないようであれば、仲の良い同僚や転職エージェントのコンサルタント、労働基準監督署とも連携しながら最善の選択を行いましょう。
肩代わりしてくれる病院を探すなら マイナビ看護師