少子高齢化が問題視されている現代ですが、小児科で働く看護師の需要がなくなることはありません。
しかし、内科や整形外科など他の診療科目と比べると経験を求められる傾向があり、小児科未経験の場合就職は簡単ではありません。
その理由は実は小児科は基本的に思春期頃までの子供を対象としており、あらゆる疾患に対応する必要があるからです。
神経科や内科に分類される疾患、または外科区分となる外傷まで全て対応しなければなりません。そのため看護師には幅広い知識と経験が求められるのです。
そういった業務の難しさがあるものの、小児科は離職率が低く長く働ける職場でもあります。ではなぜ小児科は離職率が低くなっているのでしょうか。
今回は小児科の仕事内容と給与、そして小児科でのキャリアを徹底して解説します。
小児科で働く看護師の仕事内容・役割
小児科への転職を検討するなら、仕事内容の理解が欠かせません。小児科で働く看護師の仕事内容は多岐に渡ります。そして一般的な病院勤務だと高齢者への対応が多くなりますが、基本的に患者は子供だけです。
そのため患者への対応方法も小児科へ合わせたものにすることが必要です。
では小児科で働くとすれば他にどのような役割が求められるのでしょうか。以下に小児科における看護師の仕事内容と役割を紹介します。
子供とその親の両方と対応しなければならない
看護師として小児科で働くと対応しなければならないのは子供だけではありません。小児科はかなり高い確率で親が同行しています。そして治療費の支払いも当然親が行います。そうなると必然的に親への対応が増えてきます。
そのため看護師としては、子供と親、両方への対応が必要になります。子供が怪我や病気になっている場合、親は神経質になりがちです。小児科で働く場合はそういった心理状態へ配慮できるコミュニケーションスキルが必要不可欠です。
子供の細い血管への採血及び注射
小児科であったとしても看護師業務の基本は同じです。そのなかには当然採血や注射も含まれます。
しかしその採血や注射の技術は大人よりも難しいことを理解しておけなければなりません。大人の血管と比較すれば子供の血管は細く、注射針を適格に指すことは容易ではありません。
もちろん慣れたら問題ありませんが、注射や採血が苦手な場合は小児科へ転職すると、そのハードルを乗り越えなければいけません。また子供が泣き出した場合はなだめることも必要です。
症状を伝えられない子供の様態を観察すること
子供は基本的に大人のように自分の身体の状況を説明できません。そのため看護師としては子供の様態を観察することが欠かせません。
たとえば単純に「痛い」という表現はできても、どこがどのように痛いのか、ということまでは説明できないのです。
そのため看護師としてはどこが、どのように痛いのか丁寧に聞いてあげる、もしくは読み取ることが必要なのです。そういった意味では小児科勤務はするどい観察力も求められます。
このように小児科における看護師業務は保育士に近い感覚が必要です。中学生くらいになれば症状を自分で説明できますが、幼児になるとそれはできません。
また気性が荒い子供の場合、急に点滴の針を抜く、もしくは注射の途中で暴れるなど予想外の行動をとることがあります。
そういった事態を回避するために子供を短時間で安心させることなど、子供の扱いを身につけることは欠かせません。ただ子供が好きな場合はやりがいを感じられることは間違いありません。
小児科への転職を検討する際は、子供を好きかどうか、ということも含めて自分自身の適正を見極めることが必要だといえるでしょう。
小児科で働く看護師の1日のスケジュール
転職するにあたって、小児科の看護師はどのようなスケジュールで働いているのか、気になるところですよね。では次に一般的な小児科クリニックで働く看護師の1日のスケジュールを見ていきましょう。
8:30 | 朝礼及び診察準備 |
9:00 | 午前診察開始 |
12:00 | 昼休憩 |
13:30 | 午後診療開始 |
18:00 | 診察終了 |
18:15 | 終礼 |
18:30 | 退社 |
基本的に患者は午前中に集中します。前日の夜から体調を崩している子供が多く来院するため、朝一番のピークが1日の中で最も忙しい時間になります。
またインフルエンザの流行などがある場合、午前中で診察が終わらず、昼休憩に食い込む場合があります。
非常に混雑した場合はそのまま午後診療の開始時間となる場合もあるため、感染症が流行している時期はある程度忙しくなる覚悟が必要だといえるでしょう。
また午後診療は4時以降になると学校や幼稚園返りの子供が増えます。またクリニックによっては午後に患者が集中して1時間~2時間程度の残業が発生する場合もあります。
看護師業務としては、午前診療開始直後と午後診療終わり間際の2時間が重要です。忙しい時は何かしらのミスが起こるリスクが高くなります。そのため看護師として冷静な対応が求められるといえるでしょう。
小児科で働く看護師の年収/給料とキャリアパス
小児科へ看護師として転職した場合、給与や年収は他の診療科目と大差があるわけではありません。
しかしクリニック勤務となると必然的に夜勤はないので、その分の年収が低くなることを想定しておく必要があります。では小児科で働く看護師の年収や給与はどの程度なのでしょうか。
日本看護協会の「看護職の賃金の実態」によれば、夜勤や残業などの諸手当を含めた平均賃金額は35万2,157万円。基本月給額は25万4,583円です。
また実際にハローワークやネットで公開されている小児科クリニックの看護師の月額給与は25万円前後で記載されている場合がほとんどです。
前述の資料によれば看護師の平均賞与総額は年間で89万1,909円。
小児科クリニックに夜勤がないことを考えれば平均給与12カ月分とこの賞与を合わせて389万1,909円。300万円代後半が年収の水準です。
では小児科の看護師としてのキャリアパスにはどのようなものがあるのでしょうか。小児科の看護師としてのキャリアパスには2つの種類があります。
1つは看護師長や看護部長などの管理職を目指す方法です。これは他の診療科目と同様です。
そして2つ目は専門看護師の認定を受けることです。専門看護師には11の認定分野がありますが、その中に「小児看護」があります。
これらからは看護師にも専門性が求められます。小児看護のスペシャリストを目指すなら、専門看護師の認定を受けることは欠かせません。
専門看護師の認定は簡単に取得できるものではありません。しかし取得することで小児看護に特化したスペシャリストとして市場価値を高めることができます。
小児科で働く看護師のメリットとデメリット
どの診療科目でも働くメリットとデメリットがあります。それは小児科でも例外ではありません。小児科で働く看護師のメリットとデメリットは次の通りです。
小児科で働く看護師のメリット
子供たちの笑顔で癒される
小児科で働く一番大きなメリットは子供たちの笑顔と出会えることです。病気が回復して元気になっていく子供を見ると嬉しいだけでなく心まで癒されます。
また子供との関係の作り方が上手くなるのもメリットの一つだといえるでしょう。
さまざまな病状を持つ子供と対応することでスキルアップできる
小児科は内科も外科も関係なく、子供が訪れる診療科目です。そのためさまざまな病状との向き合うことになります。大変なところもありますが、スキルアップできることは間違いありません。
小児科で働くことは幅広く看護の経験ができるというメリットがあります。
小児科の看護師業務は夜勤が少ない
小児科の求人は基本的に外来やクリニックが多くなります。そのため不規則な夜勤によって体調を崩す心配がありません。また日勤の仕事なら生活リズムも安定するのでプライベートもしっかりと確保できます。
これらのメリットから分かるように、小児科の看護師業務は子供が好き、もしくは小児看護の分野に情熱がある場合は働きやすい環境です。
また夜勤のない求人が多いので、仕事にしっかりと取り組んでプライベートを充実させたい人にも向いているといえるでしょう。
小児科で働く看護師のデメリット
親からのクレームが看護師に向けられる
どの診療科目でも患者から看護師に対するクレームは発生しますが、小児科は本人ではなく保護者からのクレームです。
患者本人は子供なのでクレームを言ってくることはありません。しかし神経質な保護者は、ちょっとした子供への対応でクレーマーとなります。
またそのクレームが医師ではなく看護師に向けられる場合があるので、そういったストレスと向き合わなければならない、というデメリットがあります。
子供が暴れることで事故やミスが発生するリスクがある
大人であれば点滴中にベッドで暴れることや、注射を途中で引き抜くなどの行動はとりません。しかし取り乱した子供はそういった行動をとる場合があります。
そうなると皮膚に傷が残ってしまうかもしれません。または適切に治療が進められない、といった状況に直面することもあります。
そういった何かしらのミスや事故が起きた際に、その責任が看護師にかかってくる可能性が高いというデメリットがあります。
夜勤がある病棟勤務の看護師よりも年収が低くなる
日本看護協会の「看護職の賃金の実態」によれば看護師の二交代制夜勤の1回当たりの手当額は11,276円が水準です。これは月4回夜勤したとすれば、夜勤だけで年収が50万円程度増えることになります。
小児科の勤務は外来かクリニックがほとんどのため、この夜勤手当が期待できません。そのため病棟勤務の看護師よりも年収が低くなるというデメリットもあります。
このように小児科で働くことは、コミュニケーションにおいては他の診療科目よりも難しいというデメリットがあります。
内科や皮膚科などの診療科目なら、対応するのは患者本人です。良識がある大人なら看護師や医師と良好な関係を築きたいと考えるため無茶なクレームは言いません。
しかし保護者は子供のため、という大義名分があるのでクレームに躊躇がない傾向があります。また子供は素直な場合もあれば、全く言う通りにしてくれない場合もあります。
そのため子供と保護者、両方と上手くコミュニケーションをとることが看護師には求められるのです。
また収入面のデメリットもあるため、小児科への転職を検討する際は本当に働きたいかどうか、じっくりと考えることをオススメします。
小児科で働く看護師の口コミ
小児科への転職を考える際に口コミは参考とすべき情報の一つです。なぜなら口コミにはリアルな現場の声が反映されているからです。
小児科クリニック勤務です。基本的に重病にかかった子供は大きな病院へ送っています。業務内容は看護師というよりは保育士に近いです。
歌を歌って子供を寝かせ、泣いた幼児にはミルクをあげます。そして吸引や吸入業務など。子供の笑顔には癒されますが、看護師としてのスキルアップはあまりできていないように感じています。
小児科クリニックで勤務していると上記のような保育士に近い対応が必要となるケースは少なくありません。また成人と子供相手では、求められるスキルが異なるので、成人を対象として働いている看護師と比較する必要はありません。
小児科では小児科で必要なスキルがあります。小児科で働くなら子供を寝かせられるスキルも立派な看護師のスキルだと認識することが大切です。
小児科クリニックの選び方
小児科へ転職するなら、重要なチェックポイントがいくつかあります。特に小児科クリニックは院長の考え方によって治療医方針などが大きく異なるので、職場選びは慎重さが欠かせません。
では以下に小児科クリニックを選ぶ際に気をつけなければいけないチェックポイントを紹介します。
職場環境を確認しよう
小児科クリニックへ転職する際は職場環境がどうなっているのかを確認することが欠かせません。給与や福利厚生は当然重要です。しかし働きやすいかどうかは職場環境にかかっているからです。
仮に看護師の離職率が高い職場であれば、業務量が異常に多い、または人間関係になる可能性があります。
そういった職場に転職すると長く働くことはできません。そのため小児科クリニックを選ぶ際は条件だけでなく、職場環境までしっかりと確認しましょう。
クリニックの経営状況をチェックしよう
ある程度の規模の病院であれば、経営状況を気にする必要はありません。しかしクリニックや小規模な病院の場合、経営状況は重要です。
その理由は経営状況が悪ければ、賞与や福利厚生など待遇に響く可能性があるからです。また人件費削減のために、欠員補充をせずに一人あたりの業務量が増えてしまうリスクもあります。
そのため小児科クリニックや小規模な病院への就職を検討する際は、経営状況もチェックしておきましょう。
有給休暇の取得状況をチェックしよう
有給休暇は労働者に与えられた権利ですが、クリニックによっては思うように取得できない場合があります。優良な医療機関は働いている看護師のほとんどが有給をしっかりと消化できます。
しかし全ての医療機関がそうではないのが実情です。有給が確保できれば、多少普段の業務がハードでもプライベートが充実します。
小児科クリニックを選ぶ際は、有給が取得できているかどうかも重要な見極めポイントの一つです
小児科の求人を探すなら看護師専門の転職サイトを活用しよう
小児科クリニックを選ぶ際はこのように、様々なポイントを確認する必要があります。しかしこれらの情報は求人情報だけで分かるものではありません。
そのため転職の際は看護師専門の転職サイトを活用することをオススメします。
看護師専門の転職サイトを活用すれば、細かい条件で情報を調べられるだけでなく、コンサルタントへの相談も可能です。
また転職サイトは職場環境の細かい情報まで把握している場合が多いので、効率的な転職活動にも役立つのです。
特にレバウェル看護は、病院の内部情報に詳しく応募書類の書き方や面接対策など手厚いフォローに定評のある転職サイトです。
条件の良い求人(非公開求人)は応募者が殺到するため、募集されてから数日以内に締切してしまうケースも少なくありません。
たとえ今すぐに転職するつもりがなくても、普段から転職サイトはマメにチェックしておき、条件の良い求人が出たらすぐに対応できるようにしておく事が転職を成功させるコツです。
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まとめ:小児科への転職を検討する際はまず適正を見極めよう
ここまで小児科で働く看護師の給与や仕事内容について紹介しましたが、転職の際に最も重要になるのは自分自身の適正を見極めることです。転職活動と並行して、小児科に向いているかどうかも判断することが欠かせません。
担当者がつく看護師専用転職サイトを活用すれば、経歴から小児科が向いているかどうかの相談もできます。看護師専用転職サイトは自分の適性を見極める際にも参考になるのです。これから小児科への転職を検討するなら、転職サイトも活用してみてはいかがでしょうか。
- 小児科における看護師の仕事は保育士に近い要素がある
- 小児科では子供だけではなく保護者対応も重要な仕事
- 小児科へ看護師をして転職するなら職場環境を見極めることが欠かせない
- プライベートを重視するなら有給の取得しやすい病院で働こう
- 転職サイトを活用すれば効率的に就活できる