形成外科では、身体の欠損や損傷といった体表面にある疾患を対象とする診療科です。
疾患の治療により、長年抱えていた機能障害や外見上の悩みを解消し、QOLの向上を図るという大切な役割を担っています。
3DプリンターとiPS細胞の進歩で自由度の高い形成術が可能になっている形成外科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科なのでしょうか?
この記事では、形成外科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
整形外科と美容外科との違いとは?
形成外科では、身体の変形や欠損などの先天的・後天的な形態異常に対して、その部位の機能や形態を改善するための治療を行います。
欠損や損傷がある部位を修復し、元の状態に近づけることを目的とした専門の診療科です。
単に修復するだけではなく、見た目がより美しく元の状態になるような治療が選択されます。
また、形成外科では、身体の部位や臓器に関わらず全身の体表が対象になります。
整形外科は捻挫・打撲・骨折等が対象
整形外科は、形成外科と名称も似ており、混同されることが多い診療科です。
整形外科では、体幹や四肢の骨、関節、筋肉、神経など、身体の運動器に関わる疾患が対象になります。
ほとんどの骨折は整形外科で診療しますが、顔面の骨折は形成外科での診療になります。
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美容外科は美しく形成することが目的
形成外科と混同されがちな診療科に、美容外科もあります。
美容外科はもともと形成外科から発展した診療科であるため、治療内容がよく似通っていますが、機能的な障害がなく治療を必要としない部位に対し、美容を目的として診療を行います。
そのため、機能や形態に異常をきたしている疾患を対象とする形成外科は保険診療が可能ですが、美を追求する美容外科では、基本的に保険診療の対象とはならず自費診療になります。
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形成外科で対応する疾患分類と上位疾患とは?
形成外科では、欠損や損傷などの障害による疾患を対象としています。
特定の部位や臓器に限らず全身の体表面に及ぶため、疾患の種類は多岐にわたります。
以下は疾患の分類になります。
大分類 | 中分類 |
外傷 | 熱傷・凍傷・化学損傷 |
顔面軟部損傷 | |
顔面骨折 | |
四肢の外傷 | |
体幹の外傷 | |
組織欠損 | |
先天異常 | 唇裂・口蓋裂 |
頭蓋・顎・顔の先天異常 | |
頸部の先天異常 | |
四肢の先天異常 | |
体幹の先天異常 | |
腫瘍 | 良性・悪性腫瘍 |
腫瘍の続発症 | |
腫瘍切除後の組織欠損 | |
難治性潰瘍 | 褥瘡 |
瘢痕・ケロイド | 瘢痕・ケロイド |
炎症・変性疾患 | 炎症・変性疾患 |
以下は患者数の多い疾患上位になります。
疾患 | 割合 |
顔面骨折・頭蓋骨折 | 29% |
皮膚がん | 13% |
熱傷 | 11% |
良性脂肪腫 | 9% |
皮膚の萎縮性障害 | 7% |
その他 | 31% |
形成外科で対象となる疾患は、顔面骨折や熱傷といった外傷、皮膚がんなどの悪性腫瘍や脂肪腫のような良性腫瘍があります。
他にも、糖尿病や閉塞性動脈硬化症による下肢の潰瘍の治療や切断を、内分泌代謝科や循環器科と連携を図りながら行うこともあります。
口唇口蓋裂などの先天性疾患のある小児から、寝たきりとなった高齢者の褥瘡に至るまで、幅広い年齢層が対象という特徴があります。
みき
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形成外科の仕事内容と役割とは?
幅広い疾患や年齢層が対象となる形成外科では、どのような仕事内容や役割があるのでしょうか。
主な仕事内容について見ていきましょう。
1、処置・手術の介助に関する仕事
- 処置・手術のオリエンテーション
- 手術前・中・後の観察やケア
- 医師の介助
形成外科の治療には、外科的処置や手術は必須です。
規模の大きな病院であれば、手術は手術室の看護師が対応しますが、規模が小さい病院やクリニックでは、形成外科の看護師が手術の介助を行います。
また、軽微な手術や創傷処置の場合は、手術室を使用せずに外来で行う事も多いので、処置や手術の介助を行い、スムーズに処置が進むようにスキルを身に付ける必要があります。
2、精神的ケアに関する仕事
- 患者・家族の訴えの傾聴
- 密なコミュニケーション
- 十分な病状・手術の説明やインフォームドコンセントの調整
形成外科で対象となる疾患は、外見上の変化を伴う疾患が大半を占めるため、それをコンプレックスと感じたり、非常に苦痛が強く悩んでいる患者も少なくありません。
そのような繊細な思いを理解し、患者の傍に寄り添って支援することは、形成外科の看護師にとって大切な役割の一つです。
先天異常を持った乳幼児の場合、家族は大きな不安を抱いているので、家族への配慮も必要とされます。
また、治療によってどれくらい回復が可能なのか医師と十分に話し合い、患者の満足度がより高くなるようにインフォームドコンセントについて調整を図ることも必要です。
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形成外科のお給料と勤務先とは?
形成外科には特別な手当があるわけではないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
以下は、看護師の平均的な給与と年収になります。
- 平均給与:333,900円
- 平均賞与:799.900円
- 平均年収:4,806,000円
また、勤務先は以下になります。
- 大学附属病院の形成外科
- 総合病院の形成外科
- 皮膚科形成外科クリニック
クリニックの場合、皮膚科と併科していることが大半です。
ただし、病床規模と給料は比例するため、クリニックよりも大学附属病院の方が給料水準は高く設定されています。
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みき
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形成外科のメリットとデメリットとは?
外見上の変化を伴う疾患を対象とする形成外科で働く際、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
それぞれについて、詳しく見てみましょう。
3つのメリットと現場の良い口コミ
- 周術期の看護を学べる
- 専門性を高められる
- 幅広い年齢層の看護を経験できる
小さな手術から大きな手術まで、とにかく手術が多いので、手術前後の看護を学ぶことができます。
乳幼児から高齢の患者さんまで、様々な年齢層の患者さんに接することもできます。小児の患者さんだと、ご家族の方への対応や家族看護とかも学べますね。
形成外科の治療は、手術や処置が中心になるため、手術に関するケアや業務は形成外科に勤務する看護師の重要な仕事です。
レーザー治療や再建術、皮膚移植といった専門性の高い治療を行う事が多いため、専門性を高めることが可能ですし、周術期の看護のスキルは十分に習得できます。
また、形成外科では、小児から老年期の患者に至るまで年齢層が幅広いので、発達段階の特性を理解しそれぞれの年代に応じた看護を身に付けることもできます。
3つのデメリットと現場の悪い口コミ
- 重症・急変対応の経験が積めない
- 繊細な悩みを抱える患者とのコミュニケーションに気を遣う
- 業務が単調になりやすい
術前術後の看護は身に付けることが可能ですが、重症患者や急変が少ないので、他の診療科へ異動になっても活かせるスキルがあまり身に付かず不安です。
形成外科は、外見上の疾患が多いので悩みを抱えた患者さんが多く、言動にとても気を遣います。身体は元気な分、患者さんから厳しく指摘されることもあって、正直へこんでしまうこともあります。
形成外科では、大きな手術を行うこともあるので、術前術後の看護についてのスキルは身に付けられます。
ですが、ほとんどが生命に関わるような疾患ではなく、重症患者の全身管理や急変対応などを実践できる場面が少ないため、急性期看護や検査などの経験を積みにくい診療科です。
さらに、形成外科では外見上の変化を伴う疾患が大半を占めることから、患者が抱える悩みやコンプレックスは大きいものです。
患者と接する医療者の言動には、きめ細やかな配慮が必要とされるので、気を遣い過ぎて疲れ果ててしまう看護師も多いです。
みき
めぐみ
まとめ:専門性の高い形成外科で、周術期看護や精神的サポートのスキルを身に付けよう!
形成外科では、機能的・形態的な改善を図り、なるべく元の形態に修復することを目的として専門性の高い治療を行っています。
外見に関わる悩みを持っている患者が多く、繊細な配慮が必要とされるため、処置や手術についてのスキルはもちろんのこと、コミュニケーション能力や精神的サポートのスキルも必要とされます。
これらのスキルアップを図り、QOLの向上に貢献できるというやりがいを感じられる貴重な診療科です。