体の負担や給与、子育てとの両立を考えた場合、勤務形態の選択次第で働きやすさが大きく変わります。
特に、病院勤務の看護師にとって勤務形態は大きく分けて4つあるので、それぞれの違いやメリットなどを把握しておかなければなりません。
また、選択制を導入している病院を除いて3交代か2交代かは自分の意思で決めることができないため、転職を検討している看護にとっても病院選びの重要な要素の一つになります。
そこでこの記事では、「3交代(3交替)・2交代(2交替)・日勤・夜勤専従」の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
雇用形態との混同に注意!看護師4つの勤務形態とは?
看護師の勤務形態は大きく分けて「3交代、2交代、日勤、夜勤専従」4つに分けられます。
さらに細かく分けると、変則3交代、変則2交代も加えた6つになります。
勤務形態と言えば、正社員や契約社員を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、それは雇用形態なので混同しないように注意が必要です。
看護師の雇用形態ごとの違いとは?正社員や契約社員など5つの働き方を解説
3交代から2交代に主流が移行中
3交代が主流だった頃とは異なり、今では全体の4割以上の病院が2交代(変則2交代含む)に切り替えています。
2交代制を希望する看護師が増えたこともそうですが、勤務形態に関する研究では2交代より3交代の方が疲労度が高い結果があることが大きな理由です。
しかし、3交代のシフト組み(正循環か否か)や2交代で仮眠がきっちり取れるかどうかによっても、疲労度は異なるので一概にどちらが優れているとは言い切れません。
めぐみ
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シフト次第で働きやすさが変わる「3交代」
3交代制とは、1日24時間を勤務時間の等しい各8時間シフト(日勤・準夜勤・深夜勤)に分けて勤務する形態です。
夜勤回数は7〜8回程度になりますが、9回以上行っているケースもあります。
1時間程度の差はありますが、基本的に以下の3シフトになります。
- 日勤:7:30〜16:00
- 準夜勤:15:30〜24:00
- 深夜勤:23:30〜8:00
以下は1ヶ月の勤務スケジュール例です。
2交代制と比べて勤務時間が短いですが、シフト次第では「勤務時間の間隔」が短くなり疲れが取れないまま出勤となるケースもあります。
例えば、「日勤→深夜勤」や「準夜勤→日勤」だと勤務間隔が8時間未満になります。
労働時間規制のガイドラインでは、勤務時間の間隔を12時間以上空けるように明記されていますが、現実的には勤務間隔時間が8時間未満のシフト組みが常態化している病院も多くあります。
3交代のメリット・デメリット
3交代はシフト組み次第で働きやすさが変わり、なおかつメリットよりもデメリットの方が多くなります。
以下は、3交代のメリットとデメリットをまとめてみました。
- 二交代と比べて勤務時間が短いので、細かなプライベートの時間を作りやすい
- 平日の日中が休みになるので、週末に混雑する施設でも快適に楽しめる
- 通勤回数が多くなるので、無駄な時間が増える
- シフト組み次第では勤務間隔が短くなり疲れが取れない
- 深夜→準夜のような逆循環だと生活リズムが崩れやすい
- 友人とのスケジュールを合わせずらい
- 連休が取りづらい(月1回しか連休がないこともある)
- 夜勤入りと夜勤明けに休みを使われることもある
3交代は細かなプライベート時間を作れますが、通勤回数が多くなるので通勤時間によってはメリットにもデメリットにもなります。
3交代に向いている人とは?
3交代に向いている人は限定的です。以下に向いている人をまとめてみました。
- 通勤回数が多くても勤務時間が短い方が良い人
- 病院敷地内の寮に住んでいる人
- 独身の人(家族や子供の時間を作らなくても問題のない人)
- 不規則な生活でも苦を感じない人
3交代も2交代も両方経験した結果、3交代の方が合っていると思う人以外は基本的には2交代の方が向いているでしょう。
変則3交代とは、勤務時間の等しくない3つのシフトを設定した勤務形態です。
変則3交代を導入してる病院はかなり少数です。有名どころで言うと自治体病院で断トツの医業収益をほこる岐阜県の大垣市民病院は一般と結核病棟で変則3交代です。
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自分の時間を確保できる「2交代」
2交代制とは、1日24時間を勤務時間の等しい各12時間シフト(日勤・夜勤)に分けて勤務する形態です。
ただし、2交代制を導入している60%以上の病院が夜勤の16時間勤務を導入しています。
夜勤回数は4回程度になりますが、5回以上行っているケースもあります。
基本的に以下のシフトになります。
- 長日勤:8:00~20:30
- 夜勤:20:00~8:30
長日勤のある12時間均等シフトは緊張の連続と夕方に休憩時間が確保できないことから、16時間の2交代に移行するケースが多いです。
- 日勤:8:30~17:00
- 長夜勤:16:30~9:00
以下は1ヶ月の勤務スケジュール例です。
16時間の夜勤ともなるとインシデントの可能性を高めるので、どの病院も基本的に食事時間と2時間の仮眠時間を設けています。
しかし、緊急度の高い病棟によっては仮眠を取れないこともざらになるので、肉体的にも精神的にもヘトヘトになってしまうことも。
後述しますが、看護師の負担を軽減するために変則2交代を運用している病院も少しずつ増えています。
2交代のメリット・デメリット
2交代は3交代と比べてデメリットよりもメリットの方が多くなります。
以下に、2交代のメリットとデメリットをまとめてみました。
- 夜勤回数が少ないのでプライベートの予定を作りやすい
- 長夜勤中にきっちり2時間の仮眠を取れれば生活のリズムが崩れにくい
- 3交代と比べて月の夜勤手当が少し高くなる
- 引き継ぎ回数が少ないので伝達ミスが発生する可能性が少ない
- 3交代と比べてシフトを組みやすい(管理者サイド)
- 拘束時間が長いので体力面・精神面共にを削られる
- 緊急入院が重なると仮眠がとれないので魂が抜けそうになる
- 16時間以上の夜勤を行うとインシデントの確率が急激に上がる
メリットとデメリットを比較すれば、多くの看護師が2交代勤務を支持する理由がわかります。
実際に多くの看護師にアンケートを行いましたが、7割以上は2交代の方が働きやすいようです。
2交代に向いている人とは?
2交代は3交代と比べて向いている人は限定的ではありません。
- 長時間の勤務でも集中力が維持できる人
- 休日の時間をしっかりと確保したい人
長時間勤務さえ慣れてしまえば苦ではないので、大抵の人であれば順応できるのできるでしょう。
変則2交代とは、勤務時間の等しくない2つのシフトを設定した勤務形態です。
変則2交代は中日勤や早出シフトを作ったりと病院によって運用例が異なります。
以下、実際に運用されている変則2交代の例になります。
- 長日勤:8:30~19:30(10時間)
- 夜勤:19:00~9:00(14時間)
- 日勤:8:15〜17:00
- 中日勤:13:00〜21:45
- 夜勤:20:30〜9:00
- 早出:7:30〜16:15
- 日勤:8:30〜17:15
- 遅勤:13:00〜21:00
- 中日勤:8:30〜20:00
- 夜勤:19:30〜9:00
全国にある4000件以上の病院を調査しましたが、変則2交代を導入している病院はまだまだ少数です。
みき
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給与は減るけど健康的な生活リズム「日勤」
日勤とは、社会生活と同じサイクルで働く夜勤のない勤務形態です。
具体的な勤務時間は勤務先によりますが、おおむね18時には退勤できるので家族や子供との時間を大切にしたい看護師にとっては適した勤務形態です。
以下は、勤務先ごとの日勤スケジュールです。
- 8:30〜17:30(休憩60分)
- 10:00〜19:00(休憩60分)
- 11:00〜20:00(休憩60分)
- 8:45〜17:00(休憩45分)
- 9:00〜18:00(休憩60分)
美容外科や美容皮膚科クリニックは業務の特性上、勤務のスタート時間はやや遅めになります。
また、日勤の休憩時間は1時間取れると勘違いしている方も多いですが、8時間以上だと労働規制では最低45分間と定められています。
そのため介護施設では休憩時間を45分間と定めている施設も多くあります。
日勤のメリット・デメリット
夜勤ありの交代勤務と比べて、いわゆる普通の生活を送れることがメリットとして挙げられます。
以下に、日勤のメリットとデメリットをまとめてみました。
- 社会生活と同じ勤務形態なので、規則正しい生活を送れる
- 既婚者は特に家庭・育児と仕事を両立しやすい
- 看護師の配置人数が多いのでフォローしあえる
- 夜勤手当がないので給与が減ってしまう
- 夜勤と比べて常に忙しい
- 管理職へのキャリアアップは難しい
日勤は夜勤と比べて慌ただしく緊張感が続くのに、給与が低いことが大きなデメリットです。
しかし、日勤のメリットとデメリットは一長一短です。家庭生活を優先するか給与を取るかの2択でしょう。
日勤に向いている人とは?
生活環境や体調によって夜勤を避けなければいけない看護師が日勤に向いている人になります。
- 体力的にきつくなり体調を崩しやすい人
- 子育てに十分に時間を使いたい人
- もう夜勤はこりごりな人
夜勤を絶対したくない人は別ですが、勤務先によっては子育て支援の一環として夜勤免除の制度があります。
看護師が継続して働いてもらえるように福利厚生を充実させている病院は増えてきているので、将来を見据えた転職を行うのであれば念頭に置いておきましょう。
みき
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勤務日数が少ないのに高給与「夜勤専従」
夜勤専従とは、日勤と夜勤を働く交代制とは異なり夜勤シフトのみの勤務形態です。
この働き方は非常勤での募集が多かったのですが、最近では常勤での募集も少しずつ増えてきました。
常勤であれば月の夜勤回数は9〜10回程度で平均給与と同等に稼げますが、完全に夜型の体内サイクルになってしまいます。
夜勤専従のメリット・デメリット
少ない日数で看護師の平均給与を稼ぐことができるのはかなりのメリットになります。
以下に、夜勤専従のメリットとデメリットをまとめてみました。
- 月9回の夜勤勤務で平均給与同等かそれ以上に稼げる
- 勤務日数が少ない分、プライベートの時間を作れる
- 夜勤専従になりたい看護師は少ないので条件が良い
- 昼夜逆転した生活リズムで体調を崩しやすい
- ホルモンバランスが崩れ肌荒れしやすい
- 日勤と比べて受け持ち患者が多いので個人のスキルを問われる
- 求人数自体はあまり多くない
時間と給与面のメリットは魅力的ですが、それを凌駕するデメリットもあります。
昼夜逆転の生活リズムはホルモンバランスを崩し月経不順になったり、吹き出物やニキビなどの肌荒れを引き起こします。
合う合わないがハッキリした勤務形態でしょう。
夜勤専従に向いている人とは?
夜勤専従は生まれ持っての夜型や睡眠時間がもともと短い人でない限り働き続けることは難しいでしょう。
- 生まれ持っての夜型の人
- ショートスリーパーの人
なお、1回の16時間夜勤で30,000〜35,000円程度稼げるので、パート勤務をする看護師が副業として行うケースが多いです。
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3交代と2交代はどちらが手当額が多い?
3交代と2交代はどちらが多くの手当をもらえるのか気になる方は多いのではないでしょうか。
それぞれの夜勤回数次第なとこもありますが、結論から言うと2交代の方が多くの手当を貰えることができます。
- 準夜勤:平均4,000円
- 深夜勤:平均5,000円
月の平均夜勤回数が8回なので準夜勤4回で16,000円、深夜勤4回で20,000円。総額は36,000円です。
- 16時間夜勤:平均11,000円
月の平均夜勤回数が4回なので、総額は44,000円です。
3交代と2交代の夜勤手当の差は8,000円になります。
2交代の16時間夜勤であれば病院によっては15,000円の手当を支給しているとこもあります。そうなると夜勤総額は60,000円になり、3交代との差は24,000円にもなります。
なお、残念ながら3交代の夜勤手当は基本的にどの病院も平均値です。
みき
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まとめ:危険なシフト組みには注意!
どの勤務形態もシフトの組み方次第で働きやすくも働きにくくもなります。
看護師協会や労働規制のガイドラインはあるものの、法的な罰則や拘束力がないものも多く大抵が運営サイドの「努力義務」です。
以下にガイドライン違反の内容をまとめました。
- 勤務間隔時間が12時間以上確保されていない
- 拘束時間が休憩と残業も含めて13時間を超える
- 3交代の夜勤回数が月に8回を超える
- 連続の夜勤回数が2回を超える
- 日勤と夜勤含めて休憩が1時間以上取れない
- 夜勤時に仮眠が取れない
- 前後に夜勤のない2連休が取れない
- 日勤の開始時間が7時前
8つのガイドライン違反に当てはまるシフト組みをされているのであれば注意が必要です。
たまたま看護師の退職や育休が重なり、シフト組みがハードになったのであれば看護師が新たに入職すれば改善されるでしょう。
しかし、慢性的にシフト組みがガイドラインに違反しているようであれば長期間働くことは肉体的にも精神的にもしんどくなります。
勤務形態によってメリット・デメリットがありますが、これから転職をする看護師ならシフト組みにも注意して情報収集すると良いでしょう。