厚生労働省の用語の解説資料によればクリニック(一般診療所)とは病床19以下、または入院施設を有しない小規模医療施設と定義されています。
病床数が少なくなれば、必然的に雇用される看護師の人数は少なくなりがちです。そのため新卒の看護師でクリニック勤務を希望する看護師はほとんどいないわけですが、実はクリニック勤務には総合病院にはないメリットがいくつもあります。
そこで今回はクリニックで働く看護師の、給料やメリットを紹介します。
クリニックで働く看護師の主な仕事内容と求められるスキル
クリニックで働く看護師に求められる主なスキルは基本的には、総合病院での外来勤務で求められるものと同じです。
しかし看護師業務は俯瞰した視点で物事を捉えて考えることが必要です。そのため、未経験からクリニックで勤務する、という人は少数派です。
稀に総合病院の勤務無しで、クリニックで勤務しているケースもありますが、長く看護師として働くなら、最初は総合病院で経験を積んだ方が無難です。
クリニック勤務は基本的には総合病院で、病棟も外来もある程度の経験を積んだ後の転職として、考えるべきだといえるでしょう。
- 患者さんの採血
- 検査の説明
- 心電図の測定
- 点滴などの処置
- 発注業務(備品など)
看護師のクリニックでの主な業務内容は、医師による患者さんの診察のサポートです。患者さんの採血や検査の説明など、その詳細はクリニックの診察科目によって異なります。
またクリニックによっては受付や事務員がパートの場合があるので、パートが休みの日は、看護師が受付業務も対応しなければならない職場もあります。
- 患者さんや医師とのコミュニケーションスキル
- 丁寧な教育が無くても働ける即戦力
- 受付などの業務も対応できる柔軟性
- 点滴や注射、採血などの看護師としての基本的な技術
クリニックは総合病院のように、そもそもの職員数が多いわけではありません。そのため丁寧な研修や教育はあまり期待することができません。
そして転職してくる看護師には、基本的に即戦力が求められます。少なくとも看護師としての基本スキルである点滴や注射、採血などはある程度の経験を積んでおく必要があります。
またクリニックでは、受付業務など看護師業務以外の対応が求められることも少なくありません。そういった業務にも抵抗感を持たずに取り組めることが大切です。
患者さんや医師とのコミュニケーションが重要であることは総合病院でも同じですが、小規模なクリニックの場合、患者さんの症状によっては、他の医療機関との連携がより頻繁に必要になります。
そういった連携の際にも正確に情報を伝えられるコミュニケーションスキルは、欠かせないといえるでしょう。
看護師がクリニックで働くメリットとは?
ここまで紹介したように、クリニックで求められるスキルや役割は総合病院とは異なります。看護師の総数が少ないことからも責任がかかることも多いといえるでしょう。
では看護師がクリニックで働くメリットは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。それは次の通りです。
基本的に残業が少ないもしくはないので規則的な生活ができる
クリニックの看護師業務は基本的な残業が少ない、というメリットがあります。よほどの人気クリニックではない限り、残業が少ない、もしくはありません。
そのため規則的な生活を過ごすことができます。非常に人気があるクリニックに転職した場合は、6時前に患者が駆け込み、頻繁に残業が1時間以上発生する現場もありますが、それはあくまでも少数派です。
看護師としてクリニックで勤務すれば、夜勤がある総合病院の勤務よりも規則的な生活を過ごせる、というメリットがあります。
日勤勤務だからきちんと休めるためプライベートが充実
看護師としてクリニックで働けば、しっかりと休めるというメリットがあります。クリニック勤務は夜勤が無く、基本的には日勤のみです。尚且つカレンダーの祝日は休みとしているところがほとんどなので、プライベートも充実しやすい、というメリットがあります。
総合病院で勤務していると、会社勤めの彼氏や旦那、友達とプライベートの都合が合わせるのも一苦労ですよね。カレンダー通りの休日なら、会社勤めをしている友達とも気軽に食事などに出かけることができます。
何気ないことかもしれませんが、休みが合う、というのは友人付き合いにとっては大切なことですよね。看護師としてクリニックで勤務することは、プライベートが充実しやすい、というメリットもあるのです。
職員数が少ないので、煩わしい人間関係に悩まなくて済む
総合病院で勤務すると、数百名の職員との人間関係が発生します。他の診療科目、病棟の看護師、医師、管理部門の役職者、色んな部署の人達と良好な関係性を築かなければいけません。
人間関係の構築が得意な場合、このような状況はストレスではないかもしれませんが、不得意な場合は、職場内の付き合いだけでストレスを感じてしまいがちです。
しかし小規模なクリニック勤務なら、パートの人を含めても職員の総数が20名を越えることはほとんどありません。そのため煩わしい人間関係に悩まないで済む、というメリットがあります。
もちろん、少人数でも多少の人間関係のストレスは発生するかもしれません。ただ総合病院と比較すると、構築しなければならない、人間関係の数も圧倒的に少なくて済む、というメリットがあります。
このようにクリニックで働くことは、総合病院と比較した時に見えてくるメリットがいくつかあります。大規模な病院での勤務があまり合わない、と感じている場合は、クリニックに転職することで、働きやすさを実感できる可能性が高いといえるでしょう。
看護師がクリニックで働くデメリット(マイナス点)
看護師としてクリニックで働くことはメリットだけではなく、デメリットも存在しています。どんなことにもメリットとデメリットは相対の関係で存在しますが、それは看護師としてクリニックで働くことも例外ではありません。では以下に、看護師がクリニックで働くデメリットについて見ていきましょう。
給料が大幅に下がる可能性
総合病院からクリニックに転職した場合、給料が大幅に下がる可能性があります。なぜなら、クリニックの場合、院長の独断で給与などの報酬が決まってしまう場合があるからです。
もちろん、クリニックの中にも、大病院に負けないようなしっかりとした昇給テーブルや、福利厚生を整えているところもあります。
しかしその一方で、前職の年収を考慮してくれない、または給与が同じ地域の総合病院と比べると明らかに低い、というケースも少なくありません。
特に公立病院からクリニックに転職した場合は給料が大幅に下がる可能性が高く、その点はクリニックで働くデメリットだといえるでしょう。
院長や他の看護師との人間関係次第で働きやすさが変わる
前述した給料は院長や他の看護師との人間関係でも変化する可能性があります。仮に転職したクリニックで院長や看護師長との人間関係の構築に失敗して嫌われてしまったとしましょう。そうなると、昇給や昇進に影響が出る可能性が高くなります。
仕事の評価はスキルだけでなく、その人の人間性も加味されることは、当然のことなのかもしれません。
クリニックは総合病院よりも職員数が少ない分、一人ひとりとの人間関係を良好に保つことが必要になります。院長や他の看護師との人間関係が良好であれば、働きやすくなることは間違いありません。
しかし最初に人間関係の構築に失敗すれば給与の査定に響く可能性があるだけでなく、働きにくくなってしまう、というデメリットがあります。
看護師としての技術力が劣ってしまう可能性
総合病院に勤務すれば、外来だけでなく、病棟勤務や手術室勤務など、長く勤めるほど様々な経験をすることができます。
そのため勤務年月が増えるほど、技術を向上させることができるのです。しかし小規模なクリニックの勤務は受付や雑用など、看護師としての専門的なスキルを磨く以外の業務にも対応しなければいけません。
そして総合病院のようなしっかりとしたキャリアアップやスキルアップの教育制度は期待できません。そのため長期的に考えた時に、クリニックで勤務すれば看護師としての技術力が劣ってしまう可能性があるのです。
このようにクリニックで看護師として働くことは、デメリットも存在しています。特に将来的に看護師としてのスペシャリストを目指したい場合や、きちんとした昇給制度の中で着実にキャリアアップしたい、と考えている場合は、デメリットを感じる機会は多くなるといえるでしょう。
クリニック勤務だと給料が下がる可能性が大きいの?
クリニック勤務だと給料が下がってしまう、という印象があるかもしれませんが、そうなってしまう可能性は大きいといえるでしょう。
その理由の一つは、クリニックは総合病院に比べると残業が少ないからです。残業代が少なければ、その分、受け取る給料が下がる可能性は大きいですよね。
また、クリニックによってはそもそも昇給制度を設けていないケースもあります。そうなると長く務めても、給料が上がらないので、仮に初任給が高かったとしても、結果的に総合病院勤務の看護師よりも受け取ることができる給料が低くなってしまう可能性が高いのです。
クリニックは役職構造や賃金構造が総合病院と比べるとしっかりと整えられているわけではありません。クリニックは院長の考えや取り組み次第で、給料が決まっている場合が多くなります。
カレンダー通りの休日だが、土日以外の休暇は取りづらい?
クリニック勤務は日勤で働けることは魅力の一つですが、そもそも働いている看護師数は多くないため、子供が熱を出したなどの急な休日だと困る場合も少なくありません。
そのため近くに実家がある、などサポート体制がない場合、ママ看護師のクリニック勤務は慎重に判断すべきだといえるでしょう。
しかしながらクリニックの場合、院長先生や他の看護師との距離間も近いため柔軟に対応してくれることもあります。つまり土日以外の休暇が取りづらいかどうかは、クリニックによって異なります。
そのため子供の病気などで、突発的な欠勤が発生する可能性がある場合は事前に相談しておくことが大切です。
新人看護師にはクリニック勤務をオススメしない理由
看護師としてクリニックで働くことは、メリットとデメリットの両方があるわけですが、基本的に新人看護師の場合、クリニック勤務はオススメしません。
その理由の一つはクリニックの教育制度の問題です。クリニックは総合病院と比較すれば教育制度が不足していて、キャリアパスも明確ではありません。
実際に5年、10年クリニック勤務した後に、自分に看護師としてのスキルが身についていないことに気がつき愕然とする人が少なくありません。
またほとんどの地域で求人数はクリニックよりも総合病院の方が多くなります。そのため新人看護師の場合は、まず総合病院で技術を学び、自分のライフスタイルを確立してから、転職を検討しましょう。
まずは総合病院で働く、というのは王道ですが、将来のキャリアを考えるならこれ以上無難な選択はありません。
また年齢を重ねて将来的にクリニックで働くことを想定するなら、どの診療科目を専門とするのか、早めに見極めることも大切です。
他の地域に転居する予定がないなら、働きたいクリニックをいくつか候補として考えておきましょう。そこまで考えてからキャリアをスタートした方が、失敗の少ない看護師ライフを送ることができます。
看護師がクリニックの求人を探すときのポイント
看護師がクリニックの求人を探すときのポイントがあります。それはクリニックの評判や診療方針を調べることです。給料や福利厚生、休日も気になるところですが、実際の評判ほど参考になる情報はありません。
できるだけ診療方針や評判などもしっかりと調べておきましょう。その際に転職エージェントを活用すれば、より細かな求人情報や看護師同士の人間関係、院長先生の性格などを確認することができます。
転職エージェントのクリニック担当者は現場に出入りしているため、リアルな情報を把握している場合が少なくありません。そういった情報を上手に引き出して参考にする、というのも賢い求人探しのポイントです。
特にレバウェル看護は、クリニックの内部情報に詳しく応募書類の書き方や面接対策など手厚いフォローに定評のある転職サイトです。
条件の良い求人(非公開求人)は応募者が殺到するため、募集されてから数日以内に締切してしまうケースも少なくありません。
たとえ今すぐに転職するつもりがなくても、普段から転職サイトはマメにチェックしておき、条件の良い求人が出たらすぐに対応できるようにしておく事が転職を成功させるコツです。
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登録後は、コンサルタントから本人確認の連絡がありますので胸の内を相談してみましょう。
まとめ【プライベートを充実させたい場合はクリニック勤務を検討しよう】
ここまで紹介したように、看護師としてクリニックで働くことはメリットだけがあるわけではありません。スキルアップしていきたい場合や、将来的に高い年収を目指したい、など明確な目標がある場合は、総合病院の勤務の方が向いている可能性はあるといえるでしょう。
しかしプライベートを充実させたい場合、カレンダー通りの休日や、夜勤がないことは嬉しいポイントですよね。
クリニックの勤務は向き、不向きがあります。転職活動に取り組む際は、まずは自分の適性を見極めましょう。そこからクリニックが向いているのかどうか、慎重に判断することをおすすめします。