脳神経内科では、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害をはじめとし、脊髄や神経疾患を対象としています。
日本人の死亡原因の第3位である脳血管疾患や、高齢化が進む中、増加している認知症を扱う脳神経内科は、時代背景からも、非常にニーズが高まっている診療科です。
慢性の経過をたどり、全身を慎重に診療する脳神経内科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科目なのでしょうか?
この記事では、脳神経内科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
脳神経内科の患者ニーズとは?
脳神経内科は、脳や脊髄、神経や筋肉の疾患を対象とする診療科です。
「神経」の文字が入っていることから、精神科と混同されやすく一般の方には馴染みが少ない診療科です。
そのため、頭痛やめまいなどの症状で受診する際には、脳神経内科が第一選択にはなりにくく、他の診療科からの紹介により受診するケースが多いです。
脳腫瘍や外傷、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害などで手術が適応となる疾患は、基本的には脳外科での診療となります。
脳血管障害は日本人の死亡原因の第3位に位置するほど多く、脳神経内科、脳神経外科ともに患者ニーズが高い診療科です。
総合病院とクリニックの科分け
- 脳神経内科
- 脳神経内科・脳神経外科
- 内科・脳神経内科
総合病院のような大規模な病院では、脳神経内科と脳神経外科とで、診療科が分かれていることが多いため、それぞれ単独で表記されています。
また、脳神経内科・脳神経外科を併せて、「脳卒中センター」や「脳神経センター」のようにセンター化されている病院もあります。
一般社団日本神経学会の決定により、標榜診療科名を「神経内科」から「脳神経内科」へ変更すると決定されたため、呼び方が変化しつつあります。
規模の小さい病院では、脳神経外科のみで脳神経内科分野の疾患の診療を行っていることもよくあります。
手術が適応ではない、手術ができない状態の場合は、脳神経内科での診療となりますが、脳神経内科と脳神経外科とで明確に分けていない病院も多くあります。
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脳神経内科の仕事内容と役割とは?
脳神経内科では、発症すると経過が長期に及び、リハビリや介護が必要な状態となる疾患が多くあります。
脳神経内科での看護師の役割には、まず、個々の状態に応じた日常生活援助が挙げられます。
主な仕事内容や役割について見ていきましょう。
1、日常生活援助に関する仕事
- 日常生活の援助
- 障害された機能や残存機能の把握
- リハビリ部門との連携
脳神経内科で対象となる患者は、日常生活動作が十分にできないことが多いので、自力でできない部分の基本的な日常生活動作の援助・介助が必要になります。
ADLの介助ばかりではなく、残存している機能を低下させないよう時には見守り、できるADLを尊重することも重要です。
また、大半がリハビリを行っていますが、リハビリに出療している時だけがリハビリではなく、食事動作や排泄動作、更衣や入浴といった病棟で過ごす生活そのものがリハビリの場となるように、普段の生活の場を通して日常生活動作の訓練を行う事も大切です。
2、退院支援に関する仕事
- 家族の介護力、自宅の状況、必要なケアなどの情報収集・アセスメント
- 家族・他職種とのカンファレンス
- 介護認定・介護サービスなど社会資源の利用について調整
脳神経内科分野では、何らかの障害を抱えた状態での退院となることが多いので、退院後の生活についての支援や調整が必要です。
介護認定やサービスの導入、地域のかかりつけ医や施設との連携など、様々な調整を要します。
これらの調整には時間がかかるため、入院時から退院後の生活について考え、他職種と協働して退院支援を行わなければなりません。
患者家族にとっては、入院時は治療が最優先であり、疾患を受け入れることで精一杯なので、なかなか退院後の生活を考える余裕がありません。
そのような思いを受け止めながら、退院支援を行うことは、看護師の重要な役割の一つです。
3、精神面のケアに関する仕事
- 患者・家族の訴えの傾聴や言動の観察
- 不安な事柄の抽出やニーズの把握
- MSWなど他職種との連携
意識障害や麻痺などの障害が残ると、これまでの生活が一変するという状態に陥いってしまいます。
自分の思うように身体を動かせない、思ったことを話せないなど、自身の疾患や障害を受け入れられず混乱することもあります。
このような状態を理解すると共に訴えの傾聴やニーズの把握を行い、不安を少しでも軽減し前向きにリハビリに取り組めるよう、患者に寄り添った精神面でのケアが重要です。
さらに、患者だけではなく患者の家族も、今後の患者の状態や介護への不安もが大きくなるため、患者と同様に家族の訴えにも耳を傾け、精神的なサポートが必要になります。
脳神経内科の対象疾患
脳神経内科では以下の疾患を扱っています。
- 脳卒中、脳梗塞
- 頭痛
- 認知症、物忘れ
- 歩行障害
- めまい
- 意識消失、意識障害
- てんかん
- パーキンソン病
- 進行性核上性麻痺
- 脳炎、髄膜炎
- 重症筋無力症
- 筋萎縮性側索硬化症
- 末梢神経障害
- 多発筋炎
- 筋肉痛、関節痛
脳梗塞や脳出血といった脳血管障害や認知症、パーキンソン病、てんかんは脳神経内科分野で代表的な疾患です。
重症筋無力症や筋萎縮性側索硬化症などの神経難病も脳神経内科での診療となります。
このように、脳神経内科で対象となる疾患は、物忘れや意識障害、歩行困難、麻痺などの症状を呈し、日常生活に支障を来たす状態となるため、介護度が高い診療科です。
脳神経内科の検査内容
脳神経内科では以下の検査を行います。
- 頭部MRI、MRA、CT
- 脊椎MRI
- 神経伝導検査・筋電図・誘発電位(SEP・ABRなど)、脳波検査
- 核医学検査(脳血流、MIBG、DATSCANなど)
- 経頭蓋磁気刺激検査
- 頸動脈超音波検査
- 腰椎穿刺
- 神経・筋生検
- 知能検査
脳神経内科では、疾患の特徴から、麻痺のため検査時の体位の保持が困難であったり、認知症などの症状から検査に関連する安静を守れないといった場合も多々あります。
そのため、安全でスムーズに検査を進められるように、検査の説明はもちろん、検査への付き添いや家族の協力を得ることも必要になります。
長時間に及ぶ検査では、検査中に症状が変化・進行してしまう事もあるため、検査中の観察も欠かせません。
また、腰椎穿刺や神経生検・筋生検は、痛みを伴う侵襲の大きい検査ですし、検査後の安静保持や出血・感染のリスクも伴うため、状態の観察や苦痛・不安の軽減が大切なケアとなります。
みき
めぐみ
脳神経内科でキャリアアップするには?
脳神経内科で対象となる疾患の一つに、認知症があります。
認知症とはいっても、病態には様々な背景があるため症状や看護も異なってきます。
また、認知症は、超高齢化社会に伴い増加傾向にあるので、脳神経内科でキャリアアップするには、認知症看護-認定看護師の資格取得という方法が挙げられます。
認知症看護 認定看護師
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有し、実践・指導・相談の3つの役割を担います。
認定看護師になるには、認定審査を受験し合格する必要があり、認定審査の受験資格は次のとおりです。
- 日本の看護師免許を有する
- 5年以上の実務経験がある(そのうち3年以上は認定看護分野の経験が必要)
- 認定看護師教育課程を修了
2018年度の教育課程は、全国では13ヶ所で開催されており、受講期間は6ヶ月~10ヶ月間と、様々です。
1ヶ所のみしか開催されていない分野から見ると、比較的受講しやすい分野です。
認知症看護認定看護師は、2006年から認定が開始され、2018年7月時点では全国に1,251人登録されています。
資格取得を目指す際には、病院を休職しなければならず、教育機関が遠方となる場合は近くでのアパート生活になるため、期間も費用もかかってしまいます。
多くの病院では、受講費の補助や通学期間中の給与の支給といった認定看護師取得の支援制度があるので、ご自身の病院の制度を確認しておきましょう。
みき
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脳神経内科の勤務先とお給料は?
脳神経内科で働く場合、どのような規模の病院があるのでしょうか。また、お給料についても、他の診療科と違いがあるのか見てみましょう。
- 大学附属病院
- 総合病院
- 個人クリニック
脳神経内科には特別な手当があるわけではないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
ただし、病床規模と給料は比例するため、個人クリニックよりも大学附属病院の方が給料は高く設定されています。
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めぐみ
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脳神経内科で働く看護師から聞いた現場の口コミ
良い口コミ(メリット)
入院時は全く自力で動けなかった患者さんが、治療やリハビリを経てできる事が増えて、ADLが拡大する姿が見られるのはとても嬉しいです。
脳神経内科では、思うように体を動かせない患者さんや、自分の意志を伝えられない患者さんが多くいます。患者さんが何を求めているのか、患者さんのニーズを把握するのはとても難しいですが、じっくりと関わることで少しでも患者さんのニーズに沿ったケアを行う事ができるのは、とてもやりがいがありますし、コミュニケーション技術も学べますよ。
障害が残った状態で在宅生活になるので、訪問看護や介護サービスの調整をしたり、他職種や地域の施設の方との連携を図ったり、チーム医療についても学ぶことができます。
脳神経内科で対象となる疾患は、麻痺などの障害のため様々な日常生活援助が必要になります。
リハビリや自助具の使用、日頃の看護ケアなどを通して、少しでも自分でできることが増えていく姿は、看護師にとっても嬉しくやりがいにつながります。
また、他職種と協働して在宅復帰に向けての退院調整を行うため、それぞれの職種や地域との連携やチーム医療を学ぶことができます。
悪い口コミ(デメリット)
脳神経内科の病棟は、ADLが低下している患者さんや寝たきりの患者さんばかりなので、とにかくADL介助が多いんです。体力勝負ですし、腰痛になる看護師は後を絶ちません。
意思疎通を図れる患者さんが少ないので、患者さんの反応が得られにくく、行っている看護がこれで良いのかどうなのか、達成感をあまり感じにくい面もあります。
脳神経内科では、患者さんとコミュニケーションが取りにくい分、患者さんのご家族とお話する機会が増えます。中には、不満を言われる方もいますし、いつもチェックされているような気がして、ご家族と関わるのはちょっと苦手です。
ADL介助を行う場面が多いため、大変体力を使う現場であり毎日ヘトヘトになってしまいます。
ただでさえ腰痛になる看護師は多いのですが、脳神経内科では看護師自身の体調管理も非常に重要です。
コミュニケーションが困難な場合も多く、看護師の思いを伝えにくい、反応が得られにくいといったように、どのように関われば良いのか悩んでしまいがちです。
また、患者とのコミュニケーションが取りにくい分、家族との関りも密になり家族看護を学ぶ良い機会ではあるのですが、家族との関りを苦手とする看護師は、意外と多いという現状があります。
こんな看護師が向いている
- 体力に自信がある
- 些細な変化に気付く観察力がある
- じっくりコツコツと関わることが好き
脳神経内科では、麻痺や意識障害のためADLの低下を来たし、介助を必要とする患者が多くいます。
見守りや軽介助から全介助に至るまで、常にADL援助・介助を行っているため、体力第一といった一面もある診療科です。
また、症状を自分で訴えることができない患者も多く、状態が悪化しても気付きにくいこともありがちなので、状態の変化にいち早く気付き、できるだけ早期に対応できるような観察力が必要になります。
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まとめ:超高齢化社会に向けて地域包括ケアのスキルを身に付けよう!
脳神経内科は、脳血管障害をはじめ認知症や神経難病などを対象としています。
急激に発症する脳血管疾患や、徐々に進行する神経難病などの長い経過をたどる疾患を対象としているので、急性期から慢性期の看護について学ぶことができます。
個々の状態に応じた日常生活動作の介助方法や退院支援について学び、地域包括ケアのスキルを身に付けることができます。