近年では高齢社会の加速とともに、腰痛・肩こり・手足の関節が痛むなどの訴えを持つ高齢者が増え、どの整形外科でも患者の大半が高齢者で占められています。
また、スポーツ障害、労働災害、交通事故の多発も伴って整形外科の需要は高くなる一方です。
患者が増える一方で、その担い手となる看護師の需要も高まっています。
それでは、整形外科での看護師はどのような役割や仕事内容なのかみていきましょう。
整形外科・形成外科・美容外科の扱う部位や疾患などの違いとは?
<整形外科>
整形外科は 捻挫や打撲、骨や関節 に関する部位を対象に診察・治療する所です。
骨や関節は人の身体の大部分を占めるので、治療部位となる範囲も広く、新生児から高齢者までと幅広い年齢層に対応しています。
具体的に多い症状の訴えとしては、腰痛、肩こり、手足の関節痛が最も多く、大腿骨頚部骨折や変形性関節症などの慢性的な疾患は特に高齢者に多くみられています。
<形成外科>
形成外科は身体の変形や欠損などの、先天的・後天的な形態異常に対してその部位の見た目を改善するための治療を行う所です。
例えば、 やけど、生まれつきの痣や骨の変形、口唇裂・口蓋裂、皮膚や皮下の腫瘍の切除など が一般的な治療対象となります。
あらゆる特殊な医療技術を駆使することで、見た目の美しさを整え、患者のQOL向上をはかります。
<美容外科>
美容外科は身体の各部位における器官や組織(眼、鼻、顔面、皮膚など)の形状について、機能的には何の支障がなくても、その部分に起因する精神的負担を軽減するために美しく形成することを目的としています。
形成外科では機能的な異常がある治療のため保険が適用となりますが、美容外科では機能異常のない部分の治療を行うため保険適用外となります。
整形外科で働く看護師の仕事内容・役割
骨折や捻挫、打撲、断裂などの外傷的疾患だけでなく、関節の慢性変性疾患、脊髄疾患、脊椎疾患、腰椎椎間板ヘルニアなどの症状に関する診察や治療を行います。
病院やクリニックによって、扱う専門の分野がそれぞれ分かれます。骨折や捻挫などの外傷的な疾患が多い病院だったり、腰痛専門のクリニックなどもあります。
それぞれの分野で行う仕事内容も変わりますが、一般的な整形外科としての役割について説明していきます。
検査介助や処置
外傷の多い分野ですので、主な仕事内容としてレントゲン撮影やギプス巻き、包帯巻きやガーゼ交換などの処置が多いようです。また、抗生剤の点滴、痛み止めや関節への注射などの処置もあります。
<主な内容>
・ギプス巻き、包帯巻き
・レントゲン撮影などの介助
・診察の介助
・創傷部の消毒、ガーゼ交換
・抗生剤の点滴
・注射(ブロック注射、筋肉注射、ヒアルロン注射など)
手術の準備や介助/h3>
行われる手術では高齢者の骨折や人工関節が最も多く、病床のあるクリニックや病院では件数も多いので、オペ出しや手術室内での介助、オペ後の管理など看護師にはさまざまな役割が求められます。
<主な内容>
・身体面のアセスメント
・術前の説明についてのフォロー
・患者のメンタルケア
・オペ室での医師の介助
・術後の全身管理と処置
・疼痛、出血への対処
・体位交換やADLの介助、拘縮予防
リハビリテーションの介助・役割3
整形外科の対象となる患者には、ADLを取り戻すために手術後も細やかなケアが必要です。
そのため、リハビリをしながらの治療を行います。リハビリは理学療法士などが行いますが、看護師はリハビリの時間以外での患者へのアドバイスや日常生活におけるサポートをしていきます。
<主な内容>
・リハビリの送迎
・日常生活動作の介助
・リハビリ訓練を生活に取り入れるアドバイス
・リハビリに対するモチベーションのサポート
・退院に向けての指導
整形外科では治療から回復まで一連の流れがはっきりとしていますが、それだけに看護師に求められる役割も幅広いため、専門的な知識も多く学ぶ必要があるといえます。
また、ほとんどの方が日常生活へ復帰される際に、元の生活に戻れるかどうかの不安などを抱えることも多いため、精神的なサポートや声かけも大切な役割の一つといえるでしょう。
整形外科で働く看護師の給料とキャリアパス
整形外科での看護師の給与相場は、他の一般診療科との差は特にはなく年収も地域差によって違いはありますが、正看護師の平均年収は470万円と言われています。
当然ですが、夜勤のある病棟勤務や残業の多い場所ではさらに上乗せとなります。
派遣やパート勤務となると時給相場も地域差が大きく影響しますが、1500~2000円が平均的です。
整形外科分野では現在のところ、日本看護協会が制定する認定看護師や専門看護師に特化した資格はありません。
給与アップに繋がるような資格はありませんが、キャリアアップを目指すには整形外科に関与したいろいろな資格があるようです。
日本運動器学会が認定する「運動器看護師」や「リハビリテーションセラピスト」といったいずれも整形外科分野で活用できる専門性をもった特殊な資格となります。
整形外科に興味があり、この分野で長く働きたいと考えている方であれば、専門性の高い資格を持っていることで活躍できる場が広がるのではないでしょうか。
整形外科で働く看護師のメリットとデメリット
整形外科は専門分野を特化したクリニックや病院、総合病院などいろいろな形態があります。その場所ごとに特徴なども違ってきますが、共通するメリットとデメリットについてみていきましょう。
整形外科で働く看護師のメリット
目に見えて回復する患者が多いので雰囲気も明るい
一般の診療科に比べて疾患自体が死に直面するような重篤な患者は少なく、患者の年齢層は若い方もいるため重苦しい雰囲気がなく明るい職場で働けることです。
職場でのピリピリした雰囲気や精神的に負担となる重苦しい空気もない環境は働きやすいですよね。
手術が多いため、術前後のケアを学ぶことができる
手術件数の多い分野でもあるので、オペ室がある医療施設であれば術前・術後に関わる機会や、オペ室に入る機会も多くなります。
どんな観察が必要か、どのようなケアが必要かなどの整形外科分野での手術の流れについて深く学ぶことができるため、経験を積みたい方には最適な環境ですね。
リハビリテーションの知識を深められる
術後や治療の過程で必要となるリハビリにも関わる機会が多いため、理学療法士や作業療法士などの専門職との接点も多くなります。
患者のケアの一環として、病棟や在宅で行えるリハビリについてや、日常生活での注意点などの指導も看護師が関わるので、リハビリの知識が深められます。
整形外科分野では治療過程も個人差はありますが、ほとんどの方が元気に退院されて社会復帰、在宅生活へ復帰されるので、退院を見送る側も元気や笑顔をもらえます。
また、専門的な分野なので手術やリハビリなどについて学ぶ機会が多くなります。そのため、明るい雰囲気の中で働きたい方や整形外科分野の学びを深めたい方に向いている職場といえます。
整形外科で働く看護師のデメリット
身体的に不自由な方が多いので介助が多い
骨折など安静を必要とする方や、自力で動けない方が多いため、車いすでの移乗やトイレ介助、体位交換などの介助が必然的に多くなります。
そのため、看護師にも体力が必要で、重労働のため腰痛などの身体的負担も考えられます。最近では介護士も勤務している所が増えているので、介護士と共に行うこともあります。
整形外科以外のスキルが身につかない
専門的な分野なので、長く働くことで他分野に比べると得られる知識や技術に差が出てきます。
しかし、他の専門的な診療科目でも同じことがいえますので、整形外科分野で長く働いていきたいと考えている方であればデメリットにはならないでしょう。
元気な患者が多いのでクレームを受けることが多い
メリットでも述べましたが、ほとんどの方が回復して社会復帰される分野ですので、当然ながら基礎疾患がない元気な方も多くいます。
そのため、ちょっとした対応一つですぐにクレームが来たり、患者からセクシャルハラスメントを受けるケースまであります。そういった場面でもうまく交わせるスキルも求められます。
ほとんどの方が回復・退院へ向かう分野ではありますが、中には脊髄損傷や骨盤骨折などの重篤な方もいらっしゃいます。
症状が重ければケアもその分手厚く行わなければなりません。
介助のレベルも個人によって違いはありますが、いずれにせよ介護的な知識や技術が求められ、身体的な負担は大きい分野です。
専門分野での勤務やクレームについては他の診療科目でも同様のことが言えますが、整形外科で働くには元気な患者への対応もできるコミュニケーションスキルが備わっているほうが働きやすいでしょう。
整形外科で働く看護師の口コミ
「処置や身体的な介助も多く、忙しい場所ではありますが回復も早く笑顔で退院される方を見送れるのでやりがいを感じます。」
「整形外科では未経験で入職される方も多いですが、経験がなくても働きながら覚えられるので、皆さん楽しく仕事されています。」
「整形外科では内臓は元気な方が多く、食欲も旺盛だし口も達者なので身体が動かないストレスからか看護師に八つ当たりしてくる人もいて大変でした。」
「手術後にせん妄になって叫んだり、徘徊したりする高齢の患者さんも多く、見守りするのも大変労力がいります。」
他の診療科とは違い、基礎疾患のない骨折など怪我のみの患者であれば基本的には元気な方が多いので、回復過程が目に見えてわかりやすく、退院される方を見送るやりがいは感じやすいといえます。
その反面、身体が元気な方は動けない分、ストレスも溜まりやすいので対応には注意が必要です。
また、どの病院や施設でも高齢者が増えてきていますが、 徘徊やせん妄などの対応は話が通じないことも多く、安静を要する患者を見守る側としては本当に大変な思いをすることもあります。
整形外科(病院・クリニック)の選び方と注意点
整形外科では総合病院に属する所もあれば、腰痛専門のクリニックや個人病院まで医療施設も様々です。需要も高く、施設数も多いので看護師の求人数も内科に次いで多い分野です。
では、どのように施設を選択すればよいのか、ポイントをみていきましょう。
クリニックか病院か?施設形態での違い
総合病院であれば、外来・急性期・回復期病棟があり、それぞれの業務内容も異なります。病床数も多いため、他の医療施設よりは忙しさもあるでしょう。
クリニックや個人の医院では日勤のみの外来が多く、検査や処置に加えて、リハビリに力を入れている施設もあるので、求人情報を見る際にはどのような業務内容かを見るとよいでしょう。
どのように働きたいか?
パート、常日勤、夜勤もこなす正職員など、働き方から施設形態を選ぶ方法もあります。病院よりはクリニックなどのほうがパート勤務、常日勤の求人数も多くなります。
仕事内容も積極的な治療やオペに携わり、バリバリと働きたい方には総合病院、重症度の低い患者を相手にゆったりリハビリなどに携わりたい方にはクリニックや個人医院が向いているといえます。
給与、福利厚生など
求人情報を見るうえで最も重要視する部分ですが、こちらも地域差や、施設によってピンからキリまであります。
極端に時給がいい場所では何かしらの事由があるかもしれないので、事前の下調べが必要です。
福利厚生も総合病院であればいろいろな恩恵が受けられる所もあるので、求人情報からチェックしてみましょう。
整形外科の求人を探すなら看護師専門の転職サイトを活用しよう
内科に次いで求人数の多い整形外科ですが、求人情報だけでは
・実際にはどんな雰囲気なのか?
・人間関係はどうか?
・仕事の忙しさや働いている人の年齢層はどうなのか?
など、本当に知りたい詳しい情報までは知ることができません。
そんなとき、転職サイトを利用してみてはいかがでしょうか?
いろいろな求人情報を保有していることもあり、その情報量は各サイトによって違いはありますが、それぞれの会社が病院とのコネクションがあるので、詳しく知りたい情報についても担当者を通じて問い合わせてもらうことが可能です。
また、転職を斡旋した方がいれば現場での実情も詳しく教えてもらうこともできます。
面接の日程調整や勤務条件などの細かい交渉も親切に対応してくれる上に、就職が決まれば御祝い金がもらえるサイトまであるので個人的に就職活動をするよりもメリットがたくさんです。
すべて無料で利用でき、複数登録していればより好条件の求人に出会える可能性も高まるので、転職をお考えであればぜひ利用されることをおすすめします。
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登録後は、コンサルタントから本人確認の連絡がありますので胸の内を相談してみましょう。
【まとめ】整形外科では体力とコミュニケーション力が必須
働き方や、施設形態はさまざまですが、共通して言えることはほとんどの患者が身体に何等かの不自由があるということです。
そのため、介助量も多く看護師にはそれなりの体力が求められます。また、重篤な患者を除いては、ほとんどの方が回復して元気に退院される方ばかりです。
病棟などでは入院中のストレスを看護師に向けられることもあると述べましたが、クレームや被害を受けないためにも笑顔で元気に対応でき、そういった患者をうまく交わすことのできるコミュニケーションスキルのある方に向いている職場でもあります。
整形外科は専門的な知識もある程度の学びが必要とされますが、未経験でも働きやすい職場として人気が高いので、転職をお考えの方にはおすすめの分野です。
自分のライフスタイルに合った求人を効率よく探せるように、求人サイトなどを上手く活用して就職活動してみてはいかがでしょうか。