育児の負担が大きくフルタイムで働くのは無理という方は「時短勤務」の利用がおススメです。どのような制度で、どんなメリットやデメリットがあるのか、給料は保証されるのかなどについてわかりやすくお話ししましょう。
看谷ミキ:育児をしながらフルタイムで働くのってやっぱり大変なのかしら?私はまだ経験したことがないから、ちょっとピンとこないなあ。
看舎あやこ:私も独身の頃はわからなかったわね。でも実際やってみると本当に大変!! まわりの理解や協力が得られないって悩むママ看護師が大勢いるのよね。だからこそ時短勤務を上手に活用した方がいいわ。
タルト:その通りです。悩みを改善するために、ぜひ有効に活用して欲しいと思います。まずは「時短勤務」とは何かを知ることから始めましょう。ミキさんのように何もわからないという方にも理解しやすいようにお話ししますよ。
看谷ミキ:わあ~さすがタルトさん!頼りにしてます!
見出し:所定労働時間を6時間に短縮!育児・介護休業法とは?
「育児・介護休業法」の正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。育児や家族の介護を行いやすいように制度を設け、事業主の対応について定め、必要な対策を講じることにより、育児や介護により退職を余儀なくされる事態や再就職を困難にする事態を防ぐ目的で制定されています。
中見出し:「時短勤務」とは?
労働時間を短くして育児の負担を少しでも軽減しようとする制度です。以下のような方法があります。
・所定労働時間を短縮する
・出勤時間や退勤時間の繰り上げ・繰り下げ
・出退勤の時間を自分で決めるフレックスタイム制
1日の所定労働時間を6時間に短縮する方法が一般的ですね。
中見出し:3歳までの育児に関する規定
事業主には3歳に満たない子供を育てている労働者に対して「時短勤務」制度を設ける義務があります。
また労働者からの請求があった場合には残業をさせてはならないとも定められています。さらに事業主はこの制度を知らせるための努力をする必要がありますが、これは努力であり義務ではありません。
中見出し:3歳から小学校就学までの育児に関する規定
3歳までとの大きな違いは事業主に「時短勤務」制度を設ける義務ではなく、努力が促されているという点。つまり職場の考え方次第では「時短勤務」が利用できなくなる可能性があるということです。また時間外労働も1か月につき24時間、1年で150時間を超えなければ依頼することが可能です。
中見出し:あくまでも労働者が請求した場合に限る
育児・介護休業法の措置には「労働者が請求した場合においては」という記載があります。つまり働く看護師がお願いしない限り、自動的に制度を利用できるわけではないのです。うがった見方をすれば労働者からの請求がないという理由で「時短勤務」をさせない事業主が存在する可能性があるということ。劣悪な環境の職場においては注意したい点ですね。
看谷ミキ:なるほど、3歳がターニングポイントになるってことね。
看舎あやこ:法律上はそうなの。でも現実はそう甘くはないかも?私自身、病院にお願いされて3歳になる前にフルタイムに戻した経験があるわ。
タルト:看護師さんの働く現場は人手不足で忙しい職場が多いですからね。あやこさんのようなケースも少なくありません。最大のポイントは「法律で定められたメリットを活かせる職場を選ぶ」ことだと言えるでしょう。
看谷ミキ:厳しいなあ~!職場の対応について、よく理解しておく必要がありそうね。
見出し:全ての看護師が利用できるわけではない!
制度対象外の条件とは?
この制度は全ての看護師が利用できるわけではありません。対象外となる条件は以下のとおりです。
・雇用期間が1年に満たない
・1週間の所定労働日数が2日以下
・日雇い労働者
中見出し:派遣やパート勤務だと時短勤務は適用外?
例え派遣やパート勤務であっても制度を活用することは可能です。ただし上記の制度対象外の条件に当てはまる場合は利用できませんので確認しておきましょう。
中見出し:産休育休期間中に職場復帰後の働き方を相談
・「時短勤務」の申し出は職場復帰日のどのくらい前にするべき?
「時短勤務」を利用するためには「短時間勤務申出書」を開始予定日1か月前までに提出する必要があります。早めに職場と話し合って方針を決めておきましょう。
・職場復帰後の配属先
復帰後の配属先について希望を出すことは可能ですので、復帰後の生活をイメージし検討した上で打診してみましょう。ただ、最終的には病院側に判断を委ねることになります。中には「時短勤務」の影響が少ない部署に異動させられたケースなどもあるようですね。
・いつまで時短勤務で働くか
3歳になると同時に制度の利用が不可能になる可能性がありますので、そのタイミングでという人もいますが、病院側の強い要請により早めにフルタイムに戻す人も少なくありません。でもフルタイムに戻した後で後悔することは避けたいですよね。看護師の代わりはいますが子供の母親の代わりはいないのですから、無理だと判断したら断る勇気も必要です。どうしても折り合いがつかない場合は転職も視野に入れる必要があります。
看谷ミキ:復帰後の配属先は、慣れている以前と同じ職場の方が楽なんじゃないのかなあ。
看舎あやこ:慣れているという点ではそうかもしれないけど、忙しさや「時短勤務」のメリットを活かせるかいう点から考えるとどうなのかしら?必ずしも同じ職場がいいとは言い切れない気がするわ。
タルト:出産後に同じ部署に復職したけれど「時短勤務」のメリットが活かせず転職を希望された看護師さんがいらっしゃいましたね。転職先は育児に理解のある病院で前例も多かったため、とても働きやすくなったと満足していただきました。あやこさんがおっしゃるように総合的な判断が必要だと感じさせられた事例でしたね。
見出し:子育ての時間を確保しつつキャリアを継続できることがメリット
制度を利用することによるメリットはたくさんあります。しかし看護師という特殊な仕事だからこそのデメリットもあります。具体的な内容を確認してみましょう。
制度利用のメリット
・子育ての時間を確保できる
・正社員のままキャリアを継続できる
・給料は少なくなるが安定して給料がもらえる
・保育園のお迎えや病院など育児に関する施設に対応しやすい。
・精神的な余裕が持てる。
・フルタイムで働く場合に比べて残業や雑務を断りやすい。
6時間以下の勤務であれば休憩を取らずに働くことも可能です。休憩時間の分だけ早く帰宅できますので、この制度を利用してメリットを最大限に活かしている看護師さんもいらっしゃいます。
制度利用のデメリット
・給料が少なくなる。
・病院の仕事内容によっては「時短勤務」の良さが生かせない。
・フルタイムの職員の理解が得られず精神的な負担になる場合もある。
看谷ミキ:メリットはもちろんだけどデメリットが気になるなあ。具体的にどういうことなのかしら?
看舎あやこ:一番のポイントは看護師の仕事は急変やアクシデントがつきものだからスケジュール通りにいかないということかしら。病棟勤務だと、そのことを考慮して「フリー業務」担当にしてもらえるケースもあれば、しっかり受け持ち患者さんを持つよう要求されるケースもあるのよ。仕事自体が多いと申し送りや記録も多くなるから、定時で帰宅できないことも多くなってしまうのよね。
タイト:そうですね。他のスタッフの理解があれば交代したり手伝ってもらったりできるんですが、理解がない職場だと肉体的にだけでなく精神的にもきつくなりますよね。
看舎あやこ:そういえばH29年10月の法改正でマタハラ等の防止措置義務が新たに加わったのよね。上司や同僚からの不利益や嫌がらせを受けないよう事業主が気を配ることが定められたのよ。
タイト:裏を返せばそれだけ悩んでいるママさんたちが大勢いるということなのかもしれませんね。法律で定められたことには改善の糸口にはなりますが、やはり他のスタッフの協力なしでは「時短勤務」は成立しません。一番大事なのは、まわりの人たちの理解と良好な人間関係なのではないかと感じますね。
看舎あやこ:まずは理解を得られる職場を選ぶこと。そして自分自身も良好な人間関係を保つ努力すること!この二つが成功のポイントじゃないかしら?
看谷ミキ:ママさん看護師さんって本当に大変!私も自分の将来を見据えて協力できることは協力しようっと。
看舎あやこ:その気持ちが一番大事! 素敵だわ、ミキさん!
見出し:時短勤務中の給料に保証はナシ!どの程度もらえるの?
法律では時短勤務中の給料に保証はなく減額になることは避けられません。支給額も病院によって差がありますが、以下のような計算方法が一般的です。
基本給÷(8時間×所定日数)=あなたの時給
あなたの時給×6時間×所定日数=時短勤務による総支給額
例えばフルタイムで基本給24万円、夜勤手当が月7万円支給されていた看護師が、時短勤務に変更し夜勤免除された場合を計算してみましょう。両者とも22日出勤する場合を想定します。
24÷(8×22)=1364
1364×6×22=180,048
実際には、両者ともここから各種控除額が減額されるので実際の支給額はさらにひくくなりますが、この時点で比較しても
フルタイム 240,000+70,000(夜勤手当)=310,000円
時短勤務 180,048+0(夜勤手当)=180,048円
となりフルタイム時の6割程度の支給額になる可能性があります。正直これはかなり辛いところです。
でも考え方を変えれば、お金で買うことはできない「我が子と関われる貴重な時間」を手に入れているということもできます。フルタイムで働いていたのなら得られなかったこともたくさん得られるはずですよね。「時短勤務」を選択すると決めたことを前向きに捉えて、計画的にやりくりするなど経済面での工夫をする努力が必要だと言えそうです。
見出し:「時短勤務」を有効に活用するために大事なこと
「時短勤務」は法律で義務化されている正当な権利です。しかし活用するための条件があり、メリットと同時にデメリットもあります。内容をきちんと把握しメリットを十分活かせる方法で活用しましょう。場合によってはメリットを活かせる職場への転職も検討すべきですね。
また、フルタイムの職員など周りの人たちの協力も制度を活かすための重要なポイントになります。そのための努力を押しまず、お互いが気持ちよく思いやりを持って働ける関係を目指しましょう。大変なこともたくさんありますが、乗り切れば必ず明るい未来が待っています。子供のため、そして何より自分自身のためにも笑顔で頑張っていきましょうね。