日本の医療スキルやその知識は、国内に限らず適切な医療が十分に提供されていない数多くの国々で必要とされています。
実際、多くの日本人スタッフが、様々な国際ボランティア団体で医療活動を行っています。
しかし、参加条件や金銭面など日本人にとって決して低くはない敷居があるのも事実。
また、初めてボランティアに参加したものの「もう二度と行きたくない」と思うスタッフも多いのが実情です。
そこでこの記事では、国際ボランティアに参加経験のある方のインタビューと実際の実情を詳しく解説します。
看護師みき
看護師めぐみ
ジョブス
国際ボランティア活動のインタビュー
ジョブス
白根さん:学生時代から国際支援やボランティアに興味がありましたし、海外で働くこと自体に憧れもありました。
看護経験が3年経ったタイミングでオーストラリアに語学留学をして、そのあと現地で看護助手として働く経験をしました。
この経験から海外で働くことに免疫がついたと思ったので、学生時代から興味のあった国際ボランティアに短期ですが応募したんです。
的を得ない回答かもしれませんが、明確な目的はなかったかもしれません。単純な好奇心に近いと思います。
あと、ボランティア活動を通して使命感というか目的を見つけられればとも思っていました。
ジョブス
白根さん:ラオスの支援病院で現地スタッフの教育指導と感染予防がメインの仕事でした。
病院の規模は20床、総スタッフ数が45名なので、ラオスの中では大きな病院の部類に入ると思います。
ラオスの看護教育は、2015年頃からきちんと整備され始めたので、技術力がまだまだ低い状態です。
あと、医療学校へ通えるラオスの富裕層は多くないので、そもそも看護師のなり手が少ないのも問題があるなと思いました。
国際ボランティア全般に当てはまると思いますが、災害や紛争地域以外では、現地スタッフの教育を通して医療整備を行うことが目的になります。
ジョブス
白根さん:仕事面では、一言で言えば文化の違いです。働くことに対する意識が日本人とは異なります。
熱心に指導を聞くスタッフも居れば、うわの空的なスタッフもいます。
そうなると、やっぱり熱心なスタッフとやる気のないスタッフに技術的な差が出てしまうのが心苦しかったです。
あと、責任感という概念がないんですかね。簡単なお願いもすぐに忘れたり、ミスをしても「私のせいじゃない」といったことが日常茶飯事でした。
生活面では、そこまで不自由は感じなかったです。外出時も危険を感じることはなかったです。
ただ、どうしても娯楽的なストレスを発散するような場所もないので、慣れが必要だと思いました。
ジョブス
白根さん:プログラムへの参加は辛いことも多いんですが、やっぱり視野が広がったことが大きいです。
今は日本に戻って働いているのですが、柔軟性だったりマネジメントができるようになったと思います。
ただ、またボランティアに参加したい思いはあるのですが、海外へのボランティアを行うとなると、休職せざるを得ないので、何度も続けて行くことは現実的ではないです。
金銭面でも負担が大きいのもネックです。
とにかく問題意識が変わったことは大きなメリットになりました。
また、機会があれば参加しようとは思いますが、今のところ次回の予定は未定です。
看護師みき
看護師めぐみ
ジョブス
国際ボランティアの仕事とは?
国際ボランティアの仕事内容は、派遣されるエリアやプログラムによって異なります。
ご自身の看護経験によって任される裁量も変わっていきますが、仕事内容の一部は以下になります。
- 現地スタッフへの教育方法を企画
- 現地スタッフへの教育指導
- 医療機材や薬剤の在庫管理
- 疾病や病院の予防
- 一般市民への衛生教育
- 医療チームの設立、など
注射や包帯を巻いたりといった看護業務ではなく、現地スタッフへの教育や指導がメインになります。
そして、現地スタッフがボランティアの助けなしに、適切な医療サービスを提供できるようになることが最終目標になります。
しかし、私たちが思っている通りに教育指導ができるかといったら、そう簡単にはいきません。
まず第一に、文化の違いや宗教による考え方によって、医療に対する基礎知識の相違があります。
例えば、支援地域であるウガンダでは未だに黒魔術といった、科学的根拠のない民間療法が行われています。
医療に関する価値観や知識が根本から異なるので、根気強く指導をする必要があります。
看護師めぐみ
ジョブス
ストレスフルな生活環境と身の危険
国際ボランティアが求められるエリアは主に貧困と紛争地域です。つまり、決して治安が良く過ごしやすい場所ではありません。
カンボジアやラオスなどは比較的安全ですが、アフリカ周辺諸国は政府と武装勢力との激突が未だおさまっていません。
実際に、支援病院や支援キャンプが襲撃にあい、ボランティアスタッフが死亡している事例が数多くあります。
どのエリア関して共通して言えることは、ストレスなく快適に生活することは困難と言うことです。
治安の悪いエリアであれば気軽に外を出歩けなかったり、ルームシェアで一人の時間を確保できなかったり、湿度90%の場所で十分な休息を得られなかったり。
さらには、患者や現地スタッフにお金を無心されることや盗難、日本ではありえないことが起こります。
ジョブス
看護師みき
看護師めぐみ
国内外の有名ボランティア団体
国際ボランティア団体は無数にありますが、有名どころは国境なき医師団と青年海外協力隊です。
国内のボランティア団体だと参加者である私たちが参加費用を支払ってプログラムに参加することになるので個人の負担がかなり高いです。
しかし、この2団体は活動資金である寄付金が多いので、ボランティアスタッフに対しても給与が発生します。
この2団体以外にジャパンハートと言う団体も知名度が高まってきましたが、1週間のボランティアで20〜30万円を支払う必要があります。
それぞれの概要を以下にまとめました。
国境なき医師団(MSF)
国境なき医師団は、世界約70ヶ国で医療支援をする民間団体です。
大規模災害や紛争地域、難民キャンプなど、いわゆる医療を必要としている「最前線」での活動を行っています。
活動資金の9割が一般人の寄付から成り立っているので、政治や宗教の圧力なく活動をすることができます。
看護師の応募条件
- 求める人物像に記載されている資質を参照(必須)
- 3年以上の臨床経験(必須)
- 英語およびフランス語の両方 で業務に対応できること(必須)
- 熱帯医学の学位または臨床経験(必須)
- 1年以上の感染管理の経験(必須)
- 強いリーダーシップ(必須)
- マネジメント・監督・教育の経験(必須)
看護師の待遇
- 月額17万1505円(海外派遣期間が積算1年を超えるまで)
- 手当の60~70%は食費として共同資金(Food Pot)に充てられます
- 派遣先までの往復渡航費(航空運賃、国内交通費、宿泊料等)、渡航手続関係費用(予防接種費用、健康診断費用、ビザ・その他必要書類取得費用)をMSFが負担します
なお、求められる英語力は、看護師としての業務と指導が問題なく説明できるレベルです。
つまり、ネイティブとは言わないまでも、高いレベルの英語力が求められています。
最前線での医療提供ともなると、コミュニケーションが正確にできないと活動に支障が出てしまうためです。
休日は2週間に1回程度で基本はルームシェアです。ハードな活動内容に関わらず、看護師のポジションは競争率が高く、多くの方がボランティアへ参加待ちをしている状態です。
青年海外協力隊(JICA)
青年海外協力隊は、日本政府の予算によって運営される独立行政法人です。(実態は官僚の天下り先だったりします。)
医療以外にもインフラ整備や防犯対策など幅広いボランティア活動を行っています。
看護師の応募条件
- プログラムによって異なりますが、実務経験3年以上を求めれることが多いです
看護師の待遇
- 国ごとに定めた金額(1ヶ月300~760米ドル程度)を支給
- 日本と受入国との往復にかかる旅費(航空賃・交通費・日当・宿泊費等)はJICAが負担します
プログラムは1ヶ月間の短期からあり、日本政府運営なので日本人にとって参加しやすいのが利点です。
しかし、独立行政法人だけあって天下りの温床であるといった指摘や内部告発があるのも事実です。
実際13人いる理事の報酬総額は2億近いです。控えめに言って超優良な天下り先なのでしょう。
ジャパンハート
ジャパンハートは、東南アジアや離島への医療支援をする民間団体です。
団体が設立されたのは2004年なので、他の団体と比べると運営歴が短いですが、少しずつ知名度が高まってます。
先に説明した2団体はボランティア活動に対しての金銭的な補助がありますが、ジャパンハートではボランティアを行うのにお金を支払う必要があります。
金額は1週間程度の滞在で約20万円前後。そして、ビザ代金や海外旅行保険はすべて自己負担です。
正直ボランティアすればするほど身銭をきる必要があり、すぐに貯金を底をつきます。
看護師みき
看護師めぐみ
ジョブス
まとめ:貯金が無くなることを覚悟する
海外主体のボランティア団体だと有償が基本ですが、日本主体のボランティア団体の大半が無償です。
むしろ参加するのにお金を支払う必要があります。残念ながら継続してボランティア活動を行える環境は整っていないのが実情です。
もちろんボランティアへの参加精神は素晴らしいと思いますが、二度目も参加しようと思わない人が多いのも事実。
特に金銭的な負担が大きくのしかかります。
給与は出ないのに日本での国民健康保険や国民年金、住民税、自動車税などは払わなくてはいけないのですから。
国際ボランティア活動の実情をきちんと理解し、長期的な視点で参加するか否か判断しましょう。
生半可や気持ちで参加すると、きっと後悔することになります。