脳神経外科は、身体全体の機能や動きを司り生命の維持に重要な働きを持つ脳や脊髄の疾患を対象とした診療科です。
脳の疾患は、麻痺や様々な機能障害をもたらし生命に直結する重篤な状態に陥ることもあり、主に手術などの外科的治療が行われています。
専門性が高い治療が展開される脳神経外科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科目なのでしょうか?
この記事では、脳神経外科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
脳神経外科の患者ニーズとは?
脳神経外科では、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害や、頭部外傷、脳腫瘍などの脳や脊髄の疾患が対象になり、主に手術による外科的治療を行います。
頭痛や頭部打撲のような比較的軽い症状で、自力で受診する場合もあれば、脳血管障害や脳挫傷など重篤な疾患で救急搬送される場合も多くあります。
手術を行わない症例や疾患によっては脳神経内科が対象となる場合もありますが、患者にとっては脳神経内科よりも脳神経外科のほうが馴染みがあるので、まず脳神経外科を選択することが多いでしょう。
みき
めぐみ
ジョブス
全身を診る奥深い科!脳神経内科で働く看護師の仕事内容とお給料とは?
脳神経外科で対応する主要疾患とは?
脳神経外科では、脳や脊髄、神経に関する疾患が対象となり、中には生命に直結する重篤な疾患や手術が必要になる疾患もあります。
主要な疾患について見てみましょう。
分類 | 疾患名 |
脳血管障害 | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、未破裂脳動脈瘤、もやもや病、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、海綿状血管腫、頚動脈狭窄など |
脳腫瘍 | 転移性脳腫瘍、悪性脳腫瘍、髄膜腫、聴神経鞘腫、下垂体腺腫など |
脊髄疾患 | 頚椎症、後縦靱帯骨化症、腰椎ヘルニア、腰椎すべり症、圧迫骨折、脊髄血管障害、脊髄腫瘍、頭蓋頚椎移行部疾患など |
頭部外傷 | 外傷性頭蓋内出血、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、慢性硬膜下血腫など |
機能性疾患 | 三叉神経痛、半側顔面痙攣、本態性振戦、ジストニアなど |
感染性疾患 | 髄膜炎、脳膿瘍、硬膜外膿瘍、硬膜下膿瘍など |
脳血管障害や脳腫瘍、頭部外傷は主に手術や脳血管内治療が必要になりますが、部位や程度、発症してからの時間によっては保存的な治療になることもあります。
保存的治療となった場合、脳神経内科へ転科することもありますが、脳神経内科がない病院では、脳神経外科で診療することが多いです。
パーキンソン病やてんかん、筋萎縮性側索硬化症のような神経疾患や難病についても、脳神経内科ではなく脳神経外科で診療することもあります。
また、脊髄疾患の腰椎ヘルニアや腰椎すべり症、圧迫骨折などは、整形外科で診療する病院も多いです。
脳神経外科の仕事内容と役割とは?
脳神経外科では、外科的治療を行う急性期から、機能障害や麻痺に対しての長期間に及ぶリハビリや介護を行う慢性期・回復期に至るまで、様々なステージの看護を行います。
脳神経外科で勤務する看護師の主な仕事内容や役割について見てみましょう。
1、手術に関する仕事
- バイタルサイン、意識レベル、麻痺の有無・程度などの観察
- 手術前後のケア
- 全身状態、ドレーン等の管理
脳神経外科では、緊急手術を要する疾患も多く、救命のために一刻を争う状態になることもよくあります。
脳梗塞などの脳血管障害は、発症時期によって可能な治療内容が変わってくるので、時間との勝負といった面もあり、緊迫感がある中での迅速な対応が必要になります。
また、手術前後の全身状態の管理や症状・バイタルサインの観察は、どの診療科でも必要ですが、脳神経外科領域の疾患では、症状の変化にいち早く気付くことが大切であるため、意識レベルや麻痺の状態の観察が非常に重要になるという特徴があります。
救命を行った上で、麻痺や機能障害が最小限となるよう治療が進められるので、迅速な対応や細かな観察力が求められる診療科です。
2、日常生活動作援助に関する仕事
- 残存機能を評価し、できる動作・できない動作の把握
- できない日常生活動作の援助・介助
- リハビリ部門との情報共有・カンファレンス・連携
脳神経外科領域の疾患を持つ患者は、何らかの麻痺や機能障害を生じていることが多いため、日常生活に援助を要します。
自力で行える動作は何か、どのような介助が必要なのか、リハビリスタッフとの情報共有や残存機能の評価をしながら、必要な援助を行います。
患者は、麻痺などの障害を抱えての生活を余儀なくされるため、日常生活動作を何でも介助するのではなくできる部分は自力で行ってもらい、リハビリ中の動作や残存している機能は、見守りながら必要な援助を行うなど、個別性を考慮しながら行う事が重要です。
寝たきり状態で全介助を要する患者も多いため、介助量が多い診療科ではあります。
3、精神的ケアに関する仕事
- 患者・家族の訴えの傾聴
- リハビリや介護に対する思い・意欲
- 多職種によるサポート
脳神経外科の疾患は急激に発症し、意識レベルの低下や麻痺・言語障害の出現など劇的に症状が進行することも多いため、患者本人も家族にとっても、生命の危機への不安が非常に強くなります。
急性期を脱した後のリハビリ期では、麻痺や機能障害がどこまで改善できるのか、自宅復帰・社会復帰ができるのか、介護しながら生活ができるのか、といった今後の生活に対しての不安も生じます。
これらの様々な不安があることを理解し、訴えの傾聴や励ましを行いながら、疾患や障害を受容でき少しでも不安が軽減できるような関りが必要です。
退院後の介護や社会資源の活用などに関する不安については社会福祉士、リハビリについてはリハビリスタッフ、というように、それぞれ専門分野のスタッフが集結し多職種によるチーム医療を展開することで、より患者・家族の思いに寄り添いニーズに応じた医療を提供できます。
みき
めぐみ
脳神経外科のお給料と勤務先とは?
脳神経外科には特別な手当があるわけではないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
以下は、看護師の平均的な給与と年収になります。
- 平均給与:333,900円
- 平均賞与:799.900円
- 平均年収:4,806,000円
勤務先は以下になります。
- 大学附属病院の脳神経外科
- 大学附属病院の総合病院の脳卒中センター、脳神経センター
- 総合病院の脳神経外科
- 総合病院の脳卒中センター、脳神経センター
- 脳神経外科専門病院
- 脳神経外科クリニック
なお、病床規模と給料は比例するため、クリニックよりも大学附属病院の方が給料水準は高く設定されています。
えっ私の年収低すぎ?看護師の平均年収と給料を年齢や役職別に徹底分析
みき
めぐみ
ジョブス
脳神経外科のメリットとデメリットとは?
脳神経外科で勤務するにあたって、看護師にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
メリットと良い口コミ
- コミュニケーションスキルや観察力が身に付く
- 日常生活援助のスキルを磨くことができる
- 急性期の対応に強くなり、回復過程にやりがいを感じられる
言語障害の患者さんと接する機会が多いので、コミュニケーションのスキルが向上しやすいです。自分で訴えることができない患者さんと接するため、察する力も身に付きますね。
脳神経外科は、発症してから治療を開始するまでの時間が勝負ですし、急変して一気にレベルダウンすることもあります。緊迫感はすごいですが、急変対応や急性期・周術期看護のスキルはバッチリ身に付きますよ。
脳神経外科の疾患では、麻痺や言語障害を呈することが多いため、日常生活動作に対して援助・介助を要する場面が多くあります。
やみくもに介助するのではなく、できる動作・できない動作を見極めながら必要な介助を行うので、残存機能を活かした介助のスキルを習得できます。
残念ながら、意識が回復できなかったり麻痺が残ってしまう症例も多くありますが、手術などの外科的治療により病状が改善する様子は、看護師にとっても達成感ややりがいを感じることができます。
また、緊急手術や急変に遭遇することも多いので、急変対応や周術期の看護スキルを身に付けることが可能です。
デメリットと悪い口コミ
- コミュニケーションが困難
- 日常生活援助が多く体力的に辛い
- 訴えが困難な患者が多く急変に気付きにくい
意識障害や言語障害のために自分の意志を伝えられない患者さんが多くて、コミュニケーションを取るのは難しいです。
片麻痺や寝たきりの患者さんが多いですし、重症の患者さんを看ながら、全介助の患者さんのケアを行う毎日です。さすがに、重労働でヘトヘトになってしまいます。
脳神経外科領域では、意識障害や言語障害を伴う疾患が多いため、コミュニケーションは図りにくくなります。
意思疎通が困難な患者へのコミュニケーションスキルは習得できますが、訴えを理解するのは容易ではないため、看護師自身もジレンマを感じやすいです。
患者自身も、スムーズに意思を伝えられないもどかしさや歯がゆさを抱いており、看護師はそのような患者の思いを理解しながらコミュニケーションを図る必要があります。
また、自ら体調不良や状態悪化を訴えることができず、状態悪化や急変に気付きにくいこともがあるので、常に細かな状態変化にも気付けるような観察力が求められます。
みき
めぐみ
ジョブス
まとめ:急性期看護や日常生活動作援助のスキルアップを図ろう!
脳神経外科では、手術による外科的治療や脳血管内治療など最先端の医療を学ぶことができます。
緊急手術になる症例もよくあるので、急変対応や周術期の看護など急性期のスキルを習得できます。
また、日常生活動作の援助や介助を行う場面も多いため、それらのスキルも十分身に付けることが可能です。
体力的にハードな一面もありますが、様々な経験を通してスキルアップを図りたい方にはお勧めの診療科です。