血液や造血器、リンパ節の疾患を扱う血液内科は、抗癌剤治療や骨髄移植が治療の主軸である診療科です。
最先端で高度な医療を行うため、レベルの高い看護スキルが求められます。
内科の中でも特に専門性が高い血液内科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科目なのでしょうか?
この記事では、血液内科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
血液内科の患者ニーズとは?
血液内科では、悪性腫瘍や難病の患者が大半を占めており、疾患の診断から治療に至るまで高い専門性が求められます。
一般の方には馴染みのない診療科であり、白血病や悪性リンパ腫と聞くと難病で治らないといった印象を抱かれがちです。
患者が自ら最初に血液内科を選択することはほとんどなく、「健康診断で指摘された時」「体調が悪くて内科を受診した時」「他の疾患を治療中の時」などに、血液検査で異常を指摘され、精査目的のために血液内科を紹介され受診となるパターンがほとんどです。
さらに、血液内科疾患の患者数は他の疾患と比較すると少なく、血液内科分野を扱う病院数も病院全体のうちわずか8.7%にとどまっています。
めぐみ
みき
ジョブス
血液内科の仕事内容と役割とは?
血液内科には悪性腫瘍が多いことから抗癌剤治療が中心となり、無菌室での骨髄移植といった高度な医療も行われるため、看護師にも高度な知識や技術が必要です。
また、厳しい治療や寛解・再発を繰り返し経過が長期に及ぶことも多く、患者を支えるメンタル面のサポートも大切です。
具体的な仕事内容や役割について見ていきましょう。
1、化学療法・放射線療法に関する仕事
- 化学療法・放射線療法についての説明・診療の補助
- 全身状態や副作用の観察・ケア
- 緩和ケア
血液内科で診療する白血病や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍は、固形がんではなく血液のがんになるため、手術は適応になりません。
そのため、血液内科疾患の悪性腫瘍は、大半が化学療法や放射線療法が基本的な治療となります。
血液内科で行う化学療法は、他の診療科と比較すると非常に強い抗癌剤を使用することも多く、その分副作用も強くなるので症状緩和のケアは必須です。
2、骨髄移植に関する仕事
- 骨髄移植や前処置についての説明・診療の補助
- 全身状態や副作用、合併症の観察・ケア
- 無菌室や感染予防についての教育、指導、環境管理
骨髄移植の前処置である大量の抗癌剤投与や全身の放射線照射は、副作用が大きくかなりの苦痛を伴います。
骨髄移植後の合併症も予後を左右するほど重篤なものが多く、状態観察には細心の注意が必要です。
また、無菌室での厳重な清潔操作や感染予防、面会制限など、患者・家族に対しての指導・教育も重要です。
3、メンタルケア
- 訴えや不安の傾聴
- 患者ニーズの把握
- 経済的、社会的な不安に対するケア
「悪性腫瘍や難治性で重症化しやすい疾患そのものに対する不安」「検査、治療による不安」「治療効果や予後に関する不安」など、患者が抱える不安の種は多数あり、少しでも軽減できるようメンタル面でのケアは大変重要です。
治療や副作用による苦痛が大きい上に、無菌室という特殊な環境は、患者にとって苦痛を倍増させます。
さらに、治療が長期に及ぶと、経済的な心配や社会復帰できるかといった不安も出てきます。
患者が今何に対して不安を感じているのか、何を求めているのか、患者の心に寄り添ったケアが必要です。
血液内科の対象疾患
血液内科では以下の疾患を扱っています。
- 急性白血病
- 悪性リンパ腫
- 慢性リンパ性白血病
- 多発性骨髄腫
- 真性多血症
- 本態性血小板血症
- 骨髄線維症
- 慢性骨髄性白血病
- 再生不良性貧血
- 骨髄異形成症候群
- 赤芽球癆
- 溶血性貧血
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 血友病
血液内科の対象疾患は、「急性白血病、多発性骨髄腫など血液や造血器の悪性腫瘍」「再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの貧血性疾患」「特発性血小板減少性紫斑病や血友病といった血小板・凝固系の疾患」があります。
これらの疾患は、「寛解・再発を繰り返す」「経過が長い」「急変が多く生命に直結する」といった特徴があります。
血液内科分野の悪性腫瘍は、手術で切除不能であり、抗癌剤治療など内科的治療のみ治癒が可能な分野です。
血液内科の検査内容
血液内科では以下の検査を行います。
- 採血による血液検査
- 画像診断
- 骨髄検査
- 生検
採血や超音波検査・CTなどの画像診断は、他の診療科でも頻繁に行われており侵襲も少ない検査です。
一方、骨髄穿刺やリンパ節生検は、血液内科で行う特殊な検査であり、大変侵襲が大きくなります。
これらは、確定診断や治療の効果の判定には欠かせない重要な検査となるので、検査結果への不安も強くなります。
検査に対しての十分なオリエンテーションや検査前・中・後の苦痛の軽減はもちろんのこと、検査結果に対する不安への配慮も重要なケアになります。
みき
めぐみ
血液内科の看護師がキャリアアップするには?
血液内科には悪性腫瘍の患者が多いため、化学療法が多い診療科です。
血液内科で勤務する看護師として、さらに専門性を高めキャリアアップをしたい場合、がん化学療法看護認定看護師を取得するという方法があります。
がん化学療法看護認定看護師
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有し、実践・指導・相談の3つの役割を担います。
がん化学療法看護は、2001年から認定が開始され、2018年時点では全国に1,585人、感染管理、皮膚・排泄ケア、緩和ケアに次いで人気のある分野です。
認定看護師になるには、認定審査を受験し合格する必要があり、認定審査の受験資格は次のとおりです。
- 日本の看護師免許を有する
- 5年以上の実務経験がある(そのうち3年以上は認定看護分野の経験が必要)
- 認定看護師教育課程を修了
教育課程は、2018年度は東京都や千葉県など5か所で開催されており、受講期間は6ヶ月~9ヶ月です。
資格取得を目指す場合、休職や教育機関が遠方となる場合は近隣でのアパート生活が必要になるため、費用も期間もかかってしまいます。
ほとんどの病院では、受講費の補助や通学期間中の給与の支給といった認定看護師取得の支援制度があるので、ご自身の病院の制度を確認しておきましょう。
みき
めぐみ
ジョブス
血液内科の勤務先とお給料は?
血液内科で働く場合、勤務先にはどのような病院があるのでしょうか。また、お給料についても、他の診療科と違いがあるのかも見てみましょう。
- 大学附属病院
- 総合病院
血液内科は、専門分野の中でも特に専門性が高く、無菌室を要するため病院設備が整っている必要があります。
そのため、小規模病院には血液内科はほとんどなく、その大半は大学病院や総合病院のような大規模病院になります。
300床以下の中規模病院でも血液内科がある病院もありますが、重症化した症例や無菌室での治療を要する場合は大規模病院への紹介、転院となるケースも見られます。
がん化学療法看護認定看護師をはじめとした資格取得による資格手当がある場合を除くと、血液内科に特別な手当はないので、他の診療科で働く看護師と大きな差はありません。
ですが、病床規模と給料は比例するため、血液内科がある大学附属病院や総合病院といった大規模病院の方が給料は高く設定されています。
さらに、病院にもよりますが、血液内科では緊急入院や急変により残業が多い診療科ですので、残業代が上乗せされて給料が高くなる場合もあります。
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みき
めぐみ
血液内科で働く看護師から聞いた現場の口コミ
良い口コミ(メリット)
私の勤務する血液内科では、化学療法を受ける患者さんが多いです。他の科と比べると、抗がん剤の種類が多くて、投与方法や副作用もそれぞれに特徴があるので、化学療法について沢山のことを学べます。
造血幹細胞移植の時には、普段よりもかなり強くて大量の化学療法や放射線療法を受けることになるので、大変強い副作用が出ますし治療への不安も強くなります。副作用のケアや精神的サポートが重要になるので、がん看護について経験を積むことができます。
治療の影響で他科に比べて在院日数が長い患者が多いです。だからこそ深くコミュニケーションができ、患者の背景や人生の経験から多くの事を学ぶこともできます。
血液内科では、きめ細かな点滴管理や副作用の観察、対症療法が身に付きます。
骨髄移植など最先端の医療の習得が可能ですし、無菌室での清潔操作のスキルも高められます。
化学療法は他の診療科でも頻繁に行われているので、他の部署へ異動になっても血液内科で身に付けたスキルを生かすことが十分可能です。
さらに、入院の長期化や入退院を繰り返す疾患が多いため、患者との関わりも密になり、精神面での充足したケアを学び実践できる現場です。
悪い口コミ(デメリット)
抗癌剤や抗生剤、補液や輸血などとにかく点滴が多くていつも点滴に振り回されています。指示は細かいし点滴の変更も多くて毎日残業です。
私は血液内科のみの1科だけの勤務ですが、点滴の多さにはじめは泣きたくなりました。
内科的治療とは言っても中には副作用の強い薬などもありますから、そうした治療に耐えられない患者さんの姿を見るのはとても辛いものです。
血液内科では、化学療法が治療の第一選択となるため、どうしても点滴が多くなってしまいます。
さらに、抗がん剤の種類や使用量も多いことから、点滴の内容や時間、指示が多岐にわたり、時間に追われてしまいます。
強力な抗癌剤や骨髄移植といったハードな治療を受けても再発・寛解を繰り返す場合も多く、あまりにも苦痛が強い患者の様子に、看護師も精神的に落ち込んでしまいがちです。
こんな看護師が向いている
- 点滴が得意
- 些細な変化に気づく観察力がある
- 忙しさにくじけない体力と強いメンタル
血液内科は、化学療法や点滴、輸血が多く、もし抗がん剤が血管外に漏れた場合のダメージは大きく迅速な対応が求められます。
大学附属病院などの大規模病院では医師が点滴を行う場合もありますが、ほとんどは看護師が施行します。
血管確保をはじめとした点滴のスキルに自信があり、点滴に対しての苦手意識が少ない方が、大量の点滴にも臆せず取り組みやすいでしょう。
また、血液内科疾患では、軽度の出血や発熱が病状の悪化兆候を示し、容易に急変につながるケースも多いため、細かな部分の変化に気付ける鋭い観察力が必要です。
そして、大量の点滴やよく起こる急変にも立ち向かえる体力や強靭なメンタルが必要になります。
みき
めぐみ
まとめ:抗癌剤のエキスパートになれる血液内科。がん看護のスキルを身に付けキャリアアップを目指そう!
血液内科では、多種多様な抗癌剤を使用しているため、その取扱いや副作用の観察、対症療法のスキルが身に付きます。
悪性腫瘍疾患が多いため、化学療法のみではなく、放射線療法や緩和ケアなどがん看護についても極めることができ、認定看護師取得といったキャリアアップも可能です。
化学療法やがん看護は他の診療科でも多く行われているので、血液内科で習得したスキルは異動になった際にも十分発揮することが可能です。