感染症内科は、微生物疾患やウイルス性疾患をはじめとする感染症疾患を診療する専門科です。
様々な種類の感染症に対応することはもちろん、感染が拡大しないよう感染防止対策が非常に重要になります。
配属希望では不人気の感染症内科ですが、看護師にとってこの診療科は働き続けるのに魅力的な科目なのでしょうか?
この記事では、感染症内科への異動を考えている方や、スペシャリストになる為の専門領域を探している方に向けて、患者ニーズや仕事内容、お給料などを解説します。
みき
めぐみ
ジョブス
感染症内科の患者ニーズとは?
感染症内科は、HIV感染症やAIDS、結核、寄生虫疾患、輸入感染症など、微生物疾患からウイルス性疾患に至るまでの感染症全般を対象としています。
他の診療科で対応することも多い、ウイルス性肝炎や肺炎などの呼吸器感染症、尿路感染症を診療する場合もあります。
空気感染する疾患には、室外へ空気の流出による病原体の拡散を防止するための、陰圧制御が可能な病室や隔離個室による感染防止対策が必要となります。
患者が自ら感染症内科を受診することは少なく、感染症が判明した場合や感染症が疑われる場合に、感染症内科への転科となるケースが大半を占めます。
みき
めぐみ
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感染症内科の仕事内容と役割とは?
感染症内科では、微生物やウイルス感染症が対象となるため、疾患の治療と共に感染防止対策が非常に重要になります。
そのため看護師には、専門性の高い知識や感染防止対策のスキルが必要とされます。主な仕事内容や役割について見ていきましょう。
1、感染防止に関する仕事
- 感染防止対策の遵守
- 環境整備
- 患者と家族への指導
感染症内科の大きな役割の一つに、感染防止対策が挙げられます。
これは、患者間の院内感染を防止すると共に、自分自身を含む医療従事者への感染防止も当てはまります。
スタンダードプレコーションや空気感染・飛沫感染・接触感染といった感染経路別予防策はもちろんのこと、感染症内科ではより厳重な感染予防対策が必要です。
2、精神面のケアに関する仕事
- 訴えの傾聴
- 隔離の必要性や感染防止についての説明
- 家族との面会の調整
陰圧制御の個室などに隔離されていると、家族との面会制限や他患者との接触もできない場合が多くなります。
さらに、接する機会が多い医師や看護師などの医療従事者も、マスクに手袋、ガウンという厳重な感染防止対策がなされた恰好なので、特殊な環境による孤独感や重篤感が増しやすくなります。
また、感染症疾患には、予後が不良な疾患もあり、特に海外渡航後の感染症は不安も大きくなりがちです。
これらの不安や孤独感を少しでも緩和し治療に専念できるよう、看護師の関りは非常に重要になります。
3、感染対策チーム(ICT)活動に関する仕事
- 院内での感染防止対策についての教育
- 院内ラウンド・コンサルテーション
- 院外への啓蒙活動
患者、家族、医療従事者を感染から守るため、研修会開催などによる職員教育や院内ラウンドを行います。
コンサルテーションなどを通して、院内においての感染予防対策の水準の向上を図ることが重要です。
感染症内科に限らずどの病院、どの診療科でも感染防止対策は必要であるため、感染対策チームによるこれらの活動は大きな役割を果たしています。
また、院内での活動と共に、時には近隣の医療施設や地域住民への啓発や教育も行うことも大切な活動の一つです。
感染症内科の対象疾患
感染症内科では以下の疾患を扱っています。
- HIV感染症
- ウイルス肝炎
- 薬剤耐性菌を含む細菌感染症
- 肺外結核
- 渡航関連感染症
- 寄生虫疾患
- 性感染症
- 他疾患に伴う感染性疾患
- 不明熱
感染症内科では、微生物やウイルスによる感染症疾患全般が対象となります。
結核や鳥インフルエンザといった届け出が必要な疾患や、海外渡航による疾患、HIV・AIDSなど多岐にわたる疾患があります。
不明熱のように原因が分からない疾患の診断や、他の疾患に伴う難治性の感染症も対象となります。
また、海外旅行や海外赴任など渡航のためのワクチン接種や相談、情報提供を行う病院もあります。
感染症内科の検査内容
感染症内科では以下の検査を行います。
- 微生物検査
- 抗原・抗体検査
- ウイルス核酸検査
- 胸部X線検査
- 腹部エコー検査
- CT検査
感染症の種類によっては、届け出が義務付けられていたり隔離が必要になるなど、治療方法や対応方法が異なってくるため、まず何の感染症なのかを特定することが重要です。
感染症内科での検査は、採血や一般的なレントゲン・CTなどの検査が主体となります。
侵襲が大きく苦痛が強い検査はあまりありませんが、何よりも検査結果に対しての不安が強くなる傾向にあります。
みき
めぐみ
感染症内科でキャリアアップするには?
感染防止対策が非常に重要となる感染症内科でキャリアアップを目指す場合、感染管理認定看護師の資格取得が挙げられます。
資格取得の方法について詳しく見ていきましょう。
感染管理認定看護師
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有し、実践・指導・相談の3つの役割を担います。
認定看護師になるには、認定審査を受験し合格する必要があり、認定審査の受験資格は次のとおりです。
- 日本の看護師免許を有する
- 5年以上の実務経験がある(そのうち3年以上は認定看護分野の経験が必要)
- 認定看護師教育課程を修了
教育課程は、2018年度は、北海道、神奈川県2ヵ所、福岡県の4か所の開催で、受講期間は6ヶ月から9ヶ月です。
感染管理認定看護師は、2001年から認定が開始され、2018年7月時点の登録者は全国に2,834人です。
認定看護師21分野の中では、最多人数となっており人気の高い分野です。
資格取得を目指す際には、病院を休職しなければならず、教育機関が遠方となる場合は近くのアパート生活になるため、期間も費用もかかってしまいます。
多くの病院では、受講費の補助や通学期間中の給与の支給といった認定看護師取得の支援制度があるので、ご自身の病院の制度を確認しておきましょう。
みき
めぐみ
ジョブス
感染症内科の勤務先とお給料は?
感染症内科で働く場合、どのような規模の病院があるのでしょうか。また、お給料についても、他の診療科と違いがあるのか見てみましょう。
- 大学附属病院
- 総合病院
感染症内科は「第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関、結核指定医療機関」のような感染症指定医療機関や、エイズ診療拠点病院に指定されている病院が大半を占めており、大学附属病院や総合病院といった大規模病院がほとんどです。
陰圧制御ができる個室や隔離個室など、感染防止のための特殊な構造が整備されているという特徴があります。
給料については、基本的な部分では他の診療科で働く看護師と大きな差はないものの、感染症に関する診療・看護等に従事した際の特殊手当が支給されるので、その分給料が上乗せされます。
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みき
めぐみ
ジョブス
感染症内科で働く看護師から聞いた現場の口コミ
良い口コミ(メリット)
スタンダードプレコーションや感染経路別の予防策を徹底しているので、感染予防対策についてバッチリ身に付けることができます。
感染症と言っても、メジャーなものばかりではなく、あまり知られていないような疾患もあるので、感染症疾患や対策にはかなり詳しくなります。海外へ行く時の注意情報なども入ってくるので、気を付けやすいですね。
難しい感染症疾患は、院内外から紹介されることもよくあるので、感染症疾患の知識やスキルが豊富で対応力があることに自信がつきます。
感染予防対策は、病院であれば感染症内科に限らずどの診療科でも必要なことです。
感染症内科での勤務により、感染予防対策についての十分なスキルを身に付けることができるため、今後どの診療科への配属になっても強みとなります。
また、感染症が流行したり新たな感染症が確認された場合でも、基本的なスキルと最先端の知識を持って対応できるため、冷静で的確な看護の提供が可能です。
悪い口コミ(デメリット)
感染症内科では、感染防止に努めていても自分もいつ感染してしまうか分からないので気が抜けません。正直、致死率の高い感染症に携わるのは怖いと思ってしまいます。
感染予防のためのマスクやガウンなど、病室に入室するごとに徹底しないといけないので、面倒くささはあります。ナースコールで呼ばれても、他の患者さんのようにすぐにはベッドサイドへ行けず、手間取ってしまうこともしばしばあります。
感染症疾患が対象なので、当たり前のことなんですが、環境整備などの管理が煩わしくて常に気を遣うのが疲れる時もあります。
感染症が対象となるため、感染防止対策を徹底していても自分自身も常に感染のリスクにさらされている状態なので、仕事であっても恐怖心は少なからずあるものです。
また、隔離個室への入退室には、ガウンなどの装備を要するため、忙しい時や急ぎたい時にも時間がかかり手間取ってしまいがちです。
ですが、忙しいからと言って、しっかり感染防止対策を行わないと感染のリスクが高まるため、必要とは分かっていても煩わしさを感じる看護師もいます。
こんな看護師が向いている
- 細かな所まで配慮ができる
- キレイ好き
- 勉強熱心
病院内においてはどの診療科でも感染防止対策は必要になりますが、感染症内科では、より徹底しなければいけません。
そのため、感染区域とそれ以外、清潔不潔の区別を厳重にする必要があり、細かな点にもよく気が付き配慮ができるタイプやキレイ好きな人が、煩わしさを感じにくく、感染防止対策を徹底しやすいです。
また、感染症内科では、頻度が少ない珍しい感染症が発症する場合や、薬剤が効きにくくなる耐性菌感染症など様々な疾患が対象になるため、常に最新の知識やスキルを習得しようとする勉強熱心な姿勢も大切です。
みき
めぐみ
まとめ:感染防止対策のスキルを身に付け、感染症のエキスパートになろう!
感染症内科は、微生物やウイルス性の疾患を対象とする診療科です。
頻繁にある感染症から致死率の高い感染症まで、様々な疾患がありますが、それらの対応方法や看護をしっかりと習得することが可能です。
感染症内科で重要となる感染防止対策についても、十分にスキルを身に付けることができるため、今後どの診療科へ行ってもかなり役立てるでしょう。