超高齢社会に突入した日本、それに伴い医療サービスを提供する看護師の需要が高まってきています。
さらに、2006年に実施された診療報酬の改定により、「7対1の看護基準」が導入され看護師の人材確保に乗り出す病院が急増しました。
しかし、多くの医療機関では、離職する看護師が後を絶たず人員不足が深刻化しています。このような環境の中、看護師の将来は今後どのように変化していくのでしょうか?
准看護師は減少傾向…全国で働く看護師の人数
高齢化による医療ニーズの拡大から、就職・転職などでも売り手市場が続いている看護師。 では実際、看護師として就業している人の数は、全国にどのくらいいるのでしょうか?
日本看護協会が発表した「(4)看護師、准看護師(年次別・就業場所別) 」によると、
- <正看護師>
- 2011年:1,027,337人
- 2012年:1,067,760人
- 2013年:1,103,913人
- 2014年:1,142,319人
- 2015年:1,176,859人
- <正看護師>
- 2011年:379,367人
- 2012年:377,756人
- 2013年:372,804人
- 2014年:364,061人
- 2015年:358,302人
となっており、正看護師は右肩上がりで増加しているのに対し、准看護師は、年々減少傾向にあります。
その要因のひとつが、准看護師の廃止問題です。准看護師は「正看護師の補助業務を行う」という位置づけですが、実際には、正看護師と同様の業務をこなしており、給与や昇格にも恵まれないことから、以前より制度廃止の声が上がっています。
そのため、准看護師の養成学校は年々減少傾向にあり、今後、准看護師として就業する人の数は、さらに減っていくことが予想されます。
深刻化する看護師不足と地域格差
多くの医療機関で深刻化する、看護師の人員不足。正看護師としての就業者が増加しているにも関わらず、どうして、このような事態に陥っているのでしょうか?
その理由は主に2つ、 「看護師の離職率の高さ」 と 「診療報酬の改定による人員確保」 です。
看護師の仕事は、基本的に激務。長時間労働や、不規則な勤務形態に悩まされ離職する看護師が後を絶ちません。
また、2006年に実施された診療報酬の改定で、「7対1の看護基準」が導入されたことにより、経営的に人員確保が難しい、地方の中小病院が看護師不足に陥っています。
待遇が良く医療設備が整った都市部の大病院に人材が集中し、地方の中小病院との格差が広がっているのです。
ITスキルの習得が将来性を左右する!看護業務の自動化
昨今めざましい発展を遂げるIT技術は、医療現場にも大きく貢献しています。電子カルテによる業務の効率化や、バイタル測定機器のデータ自動送信など、高度なIT技術が、医療現場を支えています。
しかし、IT機器の操作に慣れず、電子カルテも充分に使えない看護師が業務を滞らせてしまうといった問題も浮上しています。
現在、電子カルテを導入している一般病院は、2014年の時点で、全体の34.2%とあまり普及していない印象を受けますが、400床以上の大規模病院では77.5%にも及びます。
今後、電子カルテの導入がますます拡大していくことを踏まえると、看護師も一定のITスキルを習得することがキャリアの幅につながると言えます。
言葉の壁が問題に…外国人看護師の受け入れ
医療現場の看護師不足が叫ばれるなか、日本政府は、2008年よりインドネシアやフィリピンなどのアジア諸国から外国人看護師の受け入れを始めました。
政府は、受け入れの目的は、国際貢献であり人員不足を補うためではないと主張していますが、現状、外国人看護師を迎え入れた医療機関の多くが人員不足の解消を目的としています。
そのため、外国人看護師は、人員の充足に貢献することが期待されていました。
しかし、言語の違いが障壁となり日本語で行われる看護師国家資格に合格できない、医療現場で日本語のコミュニケーションをとることが困難であるなど多くの問題が生じています。
現行のままだと、将来的に外国人看護師が増える見込みはないため、対策を講じることが求められています。
看護師不足を解消する対策〜潜在看護師の復帰
現在、看護師不足を解消するために必要なことは、潜在看護師の復帰だと言われています。
厚生労働省が2014年に発表した資料「看護職員の現状と推移」によると、潜在看護師の人数は、全国で約71万人。その多くが、結婚や出産などを機に離職した女性看護師です。
現在、こうした潜在看護師が、再び就業できるよう復帰支援セミナーを行っている自治体や病院が数多くあります。
ブランクがあっても安心して医療現場に復帰できるよう最新の医療技術や知識をレクチャーしてくれるのです。
しかし、離職の根本的な原因である、過酷な労働環境を改善し短時間勤務制度の導入など、女性が働きやすい環境を整えていかなければ、潜在看護師の復帰は望めません。
社会全体で、ワーク・ライフ・バランスを重視した勤務体制をつくることが必要です。
まとめ【看護師として生き残るには変化に対応する柔軟な思考と行動力】
現在、看護師は売り手市場です。就職先は、条件に固執しなければどこでもあると言っても過言ではありません。
しかし、昨今、看護学部を新設する大学が急増していることから、もしかすると、今後看護師不足が一転供給過剰になる恐れがあると話題になっています。
また、給与や労働時間だけでなく、やりがいやスキルアップも仕事を続けるうえでは大切な要素です。
そのため、自身の専門分野を磨く、スキルアップのために認定看護師の資格を取得するなど、絶えず自己研鑽に励み看護師としての価値を高めていく必要があります。
そうすることで、仕事のモチベーションが高まりますし、看護師が供給過剰になるような時代が訪れても、キャリア選択の幅が広がります。臨床看護師として働くだけでなく、産業看護師や保健師など道はいくらでも開けるのです。
現在、将来性がある仕事として、看護師の仕事を選択する人は数多くいます。 しかし、将来性は、社会の情勢や法律が変われば一変する可能性が十分にあります。
また、多くの業界では、IT化が進み従来人の手で行われていた業務がコンピューターによって賄われています。労働者の負担が減るというメリットがある一方で人員カットにもつながっています。
看護師の仕事も、例外ではありません。 他の業界・職種に比べると非常に安定していますが、将来性が保証されているかと問われれば、必ずしもそうとは言えないのです。
「将来性は、自らつくるもの」国家資格を取得しても、看護師として働き始めてもこのような心構えで仕事に臨むことが大切です。