サービス残業とは、労働基準法に定められている労働時間を超えて働いているにも関わらず、賃金が支払われない残業のことを言います。
これは一般企業にだけに当てはまるわけではなく、看護師にも起こっている問題です。 毎日少しの時間だからと思っていても、ひと月にするとまとまった時間と金額になることもあります。
看護師の仕事は急変や急な入院などのわかりやすい残業と、書類整理や記録などのわかりにくい残業があります。
どちらも業務に変わりはないのですが、後者は個人の仕事スピードが遅いとして解釈されてしまうこともあります。サービス残業をしないために、残業の知識と現状を確認しておきましょう。
残業の基礎知識【時間外労働と法内残業】
労働基準法では、労働時間は1日8時間または週40時間以内と決まっています。これを法定労働時間と言い、これを越えた時間を残業や時間外勤務という言葉で表します。
時間外勤務には2種類ありますので、少し整理をしてみましょう。
法定内残業
企業の就労規則などに記載されている労働時間を超えているが、法定労働時間を超えていない場合の残業時間のことです。
法定外残業
法定労働時間を超えて働いた残業時間のことです。
この2つの違いをもっと具体的にみていきましょう。
9時から17時までが就労時間と決まっている企業で働いているとします。休憩時間が12時から13時の1時間と決まっているとしたら、実労働は7時間となります。
そして、19時まで残業をした場合の残業時間は下記のようになります。
- 17時~18時:法定内残業
- 18時~19時:法定外残業
法定内残業は、時給相当額のみの支払いになりますが、法定外残業の場合は、時給相当額×1.25の残業代が支払われることになります。
看護師のように夜勤がある場合は、深夜勤務の22時~5時までは時給が50%アップになります。
看護師のサービス残業の現状
看護師は急な入院や患者の急変、手術や検査の予定により残業になる可能性が高くなります。この他にも、病棟会議や勉強会なども業務時間外に行うことが多くあります。
会議や勉強会は残業対象にしている病院も多いのですが、通常業務の場合はなかなか請求しにくいという体質もあるようです。
特に新人看護師は、業務に慣れていないために先輩看護師よりひとつひとつの仕事に時間がかかります。
そのため、新人看護師は残業をつけないという暗黙の了解がある病院や病棟もあるほどです。
残業代の請求をするとしたら、どのくらいの金額になるのでしょうか。看護師の給料は同じ年のOLと比べても高くなっています。その分時間外労働をすると残業代も高くなります。
時給1500円相当で働いているとしたら、法定外労働の残業手当は1875円になります。深夜勤ですと時給2250円です。
月の残業時間にもよりますが、毎日3時間の法定外残業をすると1875円×3時間=5625円です。
ひと月20日間働いたとして残業代は5625円×20日=112500円になります。なんと10万円を超えるのです。
サービス残業を行う看護師の声
時間内に仕事が終わらないのは、自分の仕事の仕方が悪いから、要領が悪いからという理由で、新人はもちろんですが経験ある看護師も残業代をつけることができませんでした。そのため、残業は病棟全体で忙しい日のみ、全員同じ時間だけ時間外労働の申請をしていました。
時間内で終わらなかった会議や勉強会の資料作りは、家に持ち帰って作成していました。これも業務のひとつなのですが当然のように残業代はでません。時給にすると相当な時間と金額になると思います。
病院全体が時間外労働の申請をする習慣がなく、時間内に仕事が終わらないのであれば、仕事の仕方を変えるなどの工夫をしてくださいと言われることがあります。
残業代に関するチェックポイント
仕事をする場合に、各種手当がどうなっているのかはチェックしますよね。その際に残業代もきちんと確認しましょう。
今は看護師でも年俸制を取り入れている病院もあります。年俸制の場合は「各種手当を含む」となっているところが多いため、各種の中身を確認する必要があります。
基本的に残業代は年俸に含まないという解釈がありますが、場合によっては残業を見越して月何時間までの残業時間を含むというように定めているところもあります。
それ以外にも、基本給に残業代がすでに含まれている場合もあります。これは違法ではありませんが、この場合は所定労働時間賃金と時間外賃金が別に表記されているかをチェックする必要があります。
月にどのくらいの時間外を見越しているのかの参考にもなります。
また、企業には就労規則があります。それに基づいて就労契約がなされますが、病院も例外ではありません。
就業規則の中で時間外労働や残業がどのように決められているのかは最初に確認しておくと安心して働くことができます。
残業の少ない病院
残業月平均10時間以下の病院例
荻窪病院
急性期の病院ですが、看護職員の人員配置にゆとりをもたせているため、月の残業時間が少なめになっています。特に夜勤では看護師の他に看護助手が入ることで、看護業務に集中できるため時間内に仕事が終わるようになっています。
いずみ記念病院
急性期・慢性期・回復期すべての病期の患者の受け入れをしていますが、こちらは夜勤にも日勤も介護職を配置しており、ゆとりのある勤務体制になっています。 そのため残業も月に5~10時間とかなり少なめです。
病院以外の職場
病院以外では、介護施設では時間外労働が少なくなっています。入居者の急変や医療行為がなく、バイタルのチェックや薬の管理が仕事のメインなので、時間内に終わることが多いのです。
その他にも、企業看護師も企業の就労時間に準ずるため、残業はほとんどないといっても良いかもしれません。
看護師専門の転職サイトを活用する
さて、残業のない職場を探そうと思っても思い通りに探せないこともあります。本当に残業がないのか外からではわからないですし、働いている看護師に聞くのが一番良いのですが、それもできませんよね。
そんな時はやはり看護師専門の転職サイトに登録して、情報を得るのが良いですね。最初から残業が少ない病院希望と伝えておくと、条件に合ったところを紹介してもらえますから安心です。
転職エージェントのレバウェル看護は、病院内部の実情をしっかりと把握しているため、「残業が少ない病院を希望したのに毎日残業がある」のようなミスマッチを避けることができます。
また、先ほど紹介した荻窪病院といずみ記念病院の求人情報も所有しているため気になる方は問い合わせしてみましょう。
レバウェル看護 公式サイトはこちら
未払い残業代の請求方法
転職の有無に関わらず、支払われなかった残業代は泣き寝入りしなくても良いのです。残業代の請求は過去2年間に遡って請求することができます。
請求する方法を3つご紹介します。
労働基準監督署
労働基準監督署から病院に、残業代の支払いの指導をしてもらうことができます。この場合は、客観的な証拠が必要になりますので、タイムカードや給料明細などを準備しなくてはいけません。
さらに、労働基準監督署はこちらの代わりに残業代の請求をしてくれることはできませんので、請求をするのは個人に任されます。
相談するだけなら無料ですので、その点では利用しやすい機関です。
弁護士 費用はかかりますが、相談・病院への指導・支払い請求まですべて行ってくれます。もし病院側が支払いを拒否するようなら裁判での解決も可能ですので、そこまでしてでも支払い請求をするという覚悟があるなら、弁護士に相談をするのもひとつの方法です。
最初は無料相談などを利用すると、本格的にお願いをするか判断することができます。
直接相談
本人が病院へ直接支払い請求をすることもできます。病院にコンプライアンスの意識があると交渉しやすく、早期に解決できる可能性がありますが、そうではない場合は長期的な話し合いになったり、交渉が決裂して問題が大きくなる可能性もあります。
直接交渉をする場合は、慎重に準備をしてから行うのが良いでしょう。
まとめ【サービス残業をしないための心得】
仕事をしているともちろん残業になることもあります。しかしながら、働いた分の賃金をもらうのは労働者の権利です。
サービス残業が増えると仕事に対する意欲が削がれることもありますので、解決できるようにできる工夫や努力を、個人でしていくことも大切ですね。
- 就職面接の時に残業手当について確認をする
- 就労規則と現状に違いがないか確認する
- タイムカードや給料明細を必ず確認する
- 給料形態の確認をする
- 転職も選択肢に入れる
どうしてもその病院でなければいけない理由がなければ、残業の少ない病院への転職も選択肢に入れると良いでしょう。
自分の身は自分で守る。これは体だけではなく労働条件に関しても言えることかもしれません。
レバウェル看護 公式サイトはこちら
病院の勉強会は、看護師としてのスキルアップの機会の一つです。
しかし小さな子供がいる場合や、プライベートな予定が詰まっている場合、勉強会そのものが苦痛と感じることは珍しくありません。
実際に毎月数回ある、勉強会を理由とした休日出勤にうんざりしている、という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は看護師の休日出勤の実態と、休日出勤が少ない転職先の見極め方を紹介します。
フルの休日なんて月に2〜4日程度!休日出勤に嫌気がさしている看護師の声
看護師の勤務はシフト勤務が基本です。その時点で土日休みの人達と違うため、プライベートの確保は難しくなります。
さらに休日出勤が重なると、休日の確保はより困難になりますよね。実際に休日出勤を強いられる病院に勤めている看護師の多くは、嫌気がさしています。
では休日出勤に関して、看護師は具体的にどのような不満があるのでしょうか。
日本看護協会の「看護職の労働環境の整備の推進」に掲載されている、休日出勤に関する看護師の声としては、次のようなものがあります。
シフト勤務で土日や祝日に出勤しても、勤務先の病院では休日出勤手当が出ません。手当を支給している病院もあると聞きますが、支給しなくても問題ないのですか
職場で看護研究の担当になりました。担当は強制です。
自分のためになるとは思っても、勤務時間外や、夜勤日や休日に出てきて進めるように指示され、体が休まりません。時間外や休日出勤手当は一切ありません
2つの委員会を掛け持ちで担当しており会議が月4~5回あります。
勤務表上どうしても会議日が日勤とならず、月2回は休日に会議のために出勤します。
病棟師長は時間外手当支給を看護部長に交渉してくれたのですが、「勤務日ではないので時間外は付けられない」として手当がつきません
休日手当については後述しますが、これらの声からも分かるように、看護研究や会議など、自己啓発のために、休日出勤を強いられることがあります。
これが一般企業で起きた場合はどうでしょうか。
ベンチャー企業などであれば、研修や勉強会のために、無給で出勤を強いられることもあるかもしれません。
しかし強制的な休日出勤の常態化は、労働問題になりかねない環境でもあるのです。
休日出勤の対価は支払われるべき?法定休日と法定外休日をしっかりと理解しよう
法定休日とは労働基準法で決まっている休日
法廷休日とは、労働基準法で決まっている労働者の休日です。法で定められている休日ともいえるでしょう。
その日数は4週間を含めて4日以上の休日が必要だと定められています。1週間に1日以の休みがあれば、このルールを守ることができます。
法定外休日は病院によって異なる
法定外休日とは、前述の法定休日を守ることを前提として、病院と看護師の間で定められた、休日の取り決めです。
法廷休日とは、あくまでも労働基準法で定められた最低限の休日です。求人情報などを見ていると、ほとんどの病院は週休2日制ですよね。
これはつまり、4週間で4回、という最低限の法定休日を守りながら、法定外休日として、自主的に4週間で8回の休日を定めている、ということです。
労働基準法で守られているのは週休2日ではありません。 そのため、法定外休日は病院によって異なると理解しておきましょう。
休日出勤の対価について考える際は、法定休日と法定外休日だけでなく、労働基準法で定められた、労働者の労働時間についての理解も必要です。
労働基準法で定められた労働者の労働時間は原則8時間以内、なおかつ1週間で40時間以内です。
仮に週休二日制の病院に勤めていて、法定外休日に出勤した場合、この週40時間の法定労働時間は越えることになりますよね。
労働基準法に従えば残業代(25%)の割増料金が支払われるべきだといえます。
大きな病院であれば、ほとんどが労働基準法を遵守しています。もし休日出勤の対価が支払われていない職場であれば、その理由について、管理部門への問い合わせが必要になるといえるでしょう。
看護師長や医療安全室に相談しても解決しないケースが大半
労働基準法で休日出勤についての定めがあるとしても、研修や勉強会への出席を出勤とみなすかどうかは、病院によって異なる、というのが実際のところです。
仮に休日に勉強会へ参加することに不満を感じていて、看護師長や医療安全室に相談しても、解決しないケースが大半です。
その理由は、勉強会を業務とみなすかどうかは、病院の経営者または、経営部門が取り組めることだからです。
歴史がある病院であれば、何十年も勉強会を業務ではない、としてきた可能性があります。
そういった古くからのしきたりを変更することは簡単ではありません。
しかし自分の中で不満が蓄積されている場合、まずは第三者に相談することが大切です。
看護師長や医療安全室に相談しても解決されるとは限りませんが、現場の一意見として、経営部門に届けてもらえる可能性はあります。
休日出勤の対応がおざなりな病院は長期的に不利益になる可能性有り
休日出勤の対応がおざなりな病院は、できるだけ回避すべき転職先の一つです。
仮に毎月2回、3回と休日出勤が発生するような現場であれば、それだけで発生する負担は大きくなります。
ただでさえ肉体的な負担となる休日出勤で、しっかりと法定外残業として、割増賃金が支払わなければいかがでしょうか。精神的なストレスにもなってしまいますよね。
また勉強会への参加が任意の場合は、仕方ないかもしれませんが、休日の強制参加で無給の場合、労働者にとって優しい現場とはいえません。
ワークライフバランスへの配慮がある病院の場合、勉強会の開催日がシフト休なら、参加を強制するようなことはありません。
休日出勤のストレスは、最初は耐えられるかもしれませんが、長くなればなるほど、ストレスが積み重なるものです。
転職先の病院を選ぶ際は、休日出勤に対して、どのように対応している病院なのか、しっかりと見極める必要があるといえるでしょう。
病院の内部情報を熟知している転職エージェントをフルに活用しよう
看護師の休日出勤はここまで紹介したように、病院によってその扱いが異なります。
求人情報で年間休日120日と記載されていたとしても、勉強会への参加が強制であれば、出勤としてカウントされない日が120日あるだけです。
実際は休日も職場へ行かなければならない、ということも珍しくありません。しかしこのような内部事情は公開されている求人情報だけでは分かりづらいですよね。
では一体どうすれば、病院の内部事情までリサーチしながら、転職活動に取り組むことができるのでしょうか。
その方法の一つは、転職エージェントを活用することです。病院の内部情報を熟知している転職エージェントをフル活用しましょう。
転職エージェントの担当者は、現場へ足を運んで得た、リアルな状況を把握している可能性が高くなります。そういった情報をしっかりと聞き出すことができれば、慎重に病院選びができそうですよね。
特にレバウェル看護は、求人の質に定評があり求人先の詳細情報をしっかりと把握しているのでオススメです。
たとえ今すぐに転職するつもりがなくても、普段から転職サイトはマメにチェックしておき、条件の良い求人が出たらすぐに対応できるようにしておく事が転職を成功させるコツです。
レバウェル看護 公式サイトはこちら
看護師としてプライベートの充実を重視して転職活動するなら、転職エージェントの活用を検討してみてはいかがでしょうか。