看護師として働いていて、妊娠した場合、一時的には祝福されたとしてもその後マタハラに発展するケースは少なくありません。
妊婦に対しての配慮があり、ワークライフバランを重視している職場であればそういった心配はないかもしれません。
しかし実際の看護の現場は人手不足で悩んでいるところがほとんどです。
そのため、現場によっては妊娠したことへの配慮が無い、または産休願いを出しづらい雰囲気になっている場合があるのです。
では実際に看護師の職場のマタハラは、どのようなことが行われているのでしょうか。
今回は看護師の職場のマタニティハラスメントについて紹介していきます。
マタニティハラスメントに悩んだ看護師の体験談
マタニティハラスメントは深刻な問題です。
なぜなら、マタニティハラスメントがエスカレートしていけば、辞職に追いやられてしまうこともあるからです。
ではマタハラで悩む看護師の体験としては、実際にどのようなものがあるのでしょうか。その一例を以下に紹介します。
「早く帰らせてください」と言っても、結局毎日遅くまで残業させられる。正直疲れてしまった。
1日中立っていることを強いられる。お腹が大きくなり、だんだん辛くなってきているが、立っていて当然、という顔をされる。
旦那から「身体が大事だし、何かあったら心配だから家庭に入って」としつこく言われてしまう。仕事を続けたいという気持ちがあるだけに、その言葉を苦痛に感じる。
このように、一部の職場では、妊娠していることを全く配慮してもらえずに、悩んでいる看護師は少なくありません。
仮に「他の看護師と同じように働けないなら、解雇だ」と雇用主に言われた場合、それは違法です。
問題がマタハラに留まらず、解雇や非常勤への契約変更を強要された際は、しかるべき機関に相談することも考える必要があります。
また3つ目の例は職場ではなく、家庭におけるマタハラです。
マタハラの発生を未然に防ぐためには、妊婦の周囲の人が、どのような対応がマタハラに当てはまるのかを理解して、対応することが大切だといえるでしょう。
看護師の3人に1人が切迫流産を経験
マタハラによって、妊婦への配慮がないければ、妊娠した看護師は切迫流産となってしまう可能性があります。
日本看護協会の「看護職員の労働実態調査」によれば、看護師の3人に1人が切迫流産を経験しています。
妊婦にもかかわらず、仕事上の配慮がないため切迫流産になってしまっているのです。
妊娠した看護師に起きる妊娠異常は切迫流産だけではありません。その他には、「つわり」がひどい、貧血、妊娠中毒症など、があります。
そして一般事務職に従事する人が妊娠した場合、何の異常もなく順調に経過が進む割合は32.5%です。看護師の場合、順調に経過が進む割合は22.4%となり、約10%も低くなります。
一般的に看護師と並ぶ大変な仕事に介護職がありますが、介護職に従事する人が妊娠して、順調に経過が進む割合は27.8%です。
看護師の職務内容の方が、介護職よりも妊婦にかかる負担が大きい、という実情があります。
このことからも、看護師の労働環境がハードであることが分かります。また妊婦への配慮が充分ではない職場が数多くあるといえるでしょう。
参照:日本看護協会「看護職員の労働実態調査」
母性保護の代表的な制度
厚生労働省が公表している、「働きながらお母さんになるあなたへ」によれば、以下の期間は、労働基準法に基づいた権利を有することができます。
<妊娠期〜産後1年間>
- 時間外労働(1日8時間、または40時間/週を超える場合)や深夜業務ができない場合に、それらの制限を申出・請求することができる。
- 妊婦検診を受けるための時間を確保することや、ラッシュを避けるために通勤時間をずらしてもらうことを申出・請求することができる。
またこれ以外にも、労働基準法第67条では、育児時間として、1日2回、各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます。
この育児時間の請求を実際に取り入れている現場は少数かもしれません。しかし前述した時間外労働の制限や妊娠健診を受けるための時間の確保は欠かせないですよね。
ここまで紹介した内容は、それぞれ労働基準法と男女雇用機会均等法によって守られている女性の権利です。
マタハラ被害に合わないためには、このような妊婦を守る法律についての理解も必要です。
まだまだ妊娠中の看護師に対する配慮が足りない現状
妊娠中の看護師を守る法律は存在しているわけですが、まだまだ妊娠中の看護師に対する配慮が足りないのが現状です。
実際に妊娠したことによって、解雇されてしまった、退職を強要された、ということが起きています。
また期間の定めがある非常勤の場合、契約更新がされなかった、または常勤から非常勤になるように強いられたなど、雇用に関するトラブルも起きてしまいがちです。
悪質な現場では、妊娠により、労働力が低下したとして、減給してくる場合もあります。嫌がらせとしか捉えられないような、配置転換を強いられることもあります。
産休願いを出しづらい雰囲気を醸し出す上司がいるかもしれません。このような扱いを受けた時は、泣き寝入りするのではなく、労働者としての権利を訴えましょう。
いきなり労働局へ駆け込む必要はありませんが、まずは上司や、管理部門の担当者に相談することを検討しましょう。
問題は自分だけで抱え込まず、他の誰かに相談することが大切です。管理部門は現場の状況までは把握できていないことは珍しくありません。
自分達が把握していないところで法律違反にもなりかねない行為があれば、改善のために動いてくれる可能性があります。
もちろん何も変わらない可能性もありますが、現場の声として、管理部門に訴える意味はあります。
妊婦になったからといって、誰もが優しく接してくれるわけではありません。
職場の環境が良くない場合は、自分で働きやすい環境づくりをすることも大切です。
最終的に母性保護の観点から、看護の現場で働く妊婦は法律で守られています。制度内容をしっかりと理解し、自信を持って制度を活用しましょう。