看護師は人間関係が大変だということはよく言われることです。病院で働いていない人にも、人間関係が大変そうなんて言われませんか?
学生時代は実習で、就職してからは先輩や上司、患者さんとの関係で悩みを持つことが多いのではないでしょうか。
看護師が関わるのは患者さんだけではありません。病院職員では医師やリハビリスタッフと毎日一緒に仕事をします。病棟では看護助手と、施設では介護士とともに仕事をすることになります。
同僚や上司とうまくいかない、いじめがあるなど、人間関係の悩みは看護師の転職の理由の上位にあがります。
人間関係を苦に転職しても、また人間関係に苦しむ人もいることもまた事実です。ここでは、そんな看護師の人間関係の悩みについて考えていきます。
患者や同僚、医師との人間関係に悩むエピソード
看護師は医師と患者さんとの間に入って調整する場面が多くあります。その中でのすれ違いや調整が上手くいかずに悩む看護師もいるでしょう。
すぐに不機嫌になったり怒鳴ったりする医師は周りにいませんか?医師は看護師の上司ではないのですが、医師の顔色をうかがいながら仕事をすることがあるのもまた事実です。
もちろんすべての医師がそうではありませんよ!
苦手な医師や患者さんがいる人もいるのではないでしょうか。看護師も人間なので、患者さんに対しても苦手意識を持つのは当然です。
しかし、その苦手意識や嫌悪感を表に出してしまっては相手も嫌な気分になります。患者さん相手ではクレームに発展するかもしれません。
医師や患者さんよりも、まず先輩や上司と上手くいかない、どうしても苦手な同僚がいるなど、看護師同士での人間関係に悩む人が多いのではないでしょうか。
夜勤で苦手な先輩と一緒になってしまったらどうしよう、休憩室なのに緊張して休めない、など悩む人もいるでしょう。
ここでは、看護師が悩む人間関係のエピソードを紹介します。
<エピソード1>美咲さん 28歳 総合病院勤務
転職してから今までやったことのない処置が多くありました。医師の処置の介助に入った時に、初めてだったので、先輩に付いて教わることになりました。
足りない物品があり、先輩が「私が取りに行ってくるからここで見ていて」と言ってくれ、私はその場に残ることになりました。
先輩がいなくなると、医師から「何度もやっている処置なんだからわかるだろ!」と怒鳴られてしまいました。
先輩はベテランなので、その先輩がいる場では怒鳴らないのですが、まだペーペーの私にはイライラを出してきたようです。患者さんもその場にいたので申し訳なかったです。
準備万端で処置に臨んだつもりでも何かが足りなくなってしまったという経験は、やったことがある人結構いませんか。
処置の途中で物品を取りに行くことは患者さんに迷惑がかかることなのでもちろん避けたいですね。
このエピソードでは、ベテラン看護師が席を外した途端に医師が怒鳴りました。医師も「あの看護師は怖い」とか「新人看護師が苦手」といったことが実はあるのです。
転職したばかりでその医師のことも処置のこともよくわからなかったら、このエピソードの場面では恐縮してしまいますね。
<エピソード2>さくらさん 32歳 総合病院勤務
検温の時に担当の患者さんから「爪を切ってほしい」と頼まれました。
その患者さんは片手の手術をしていて、自分で爪切りができない方でした。
私はその時間にやらなくてはならない仕事があったので、患者さんのリハビリの時間も考慮して「○○時頃に爪切りに伺ってもいいですか?」と聞きました。
患者さんは「どうせ忙しいから来ないんでしょ。忙しいなら無理して来なくていいから」と無愛想に答えました。
伝えた時間に爪切りに行ったのですが、その時も患者さんから「忙しいならやらなくていいよ。ここの看護師は皆そうだから」と言われてしまい、どう答えればいいかわからなくなりました。
この患者さんは普段から看護師の忙しそうな様子を感じ取り、嫌な印象を持っていたのかもしれません。
現場では患者さんから頼まれても、その時に抱えている仕事の優先順位を考えてすぐに出来ないことがあります。
もちろんすぐに対応するのが一番ですが、忙しいと毎回そうはいきません。しかし、患者さんからすると看護師の「忙しいから」は言い訳でしかありません。
いつも「忙しいから」を理由に後回しにされると、このエピソードのように「ここの看護師は皆そうだから」と嫌になるでしょう。
<エピソード3> 好美さん 25歳 総合病院勤務
日勤の終了時刻は17:30なのですが、オペ後の検温などをしていると残業時間が増えてしまいます。そこで、17:15からの検温や他の業務は夜勤者が行うことが病棟での決まりごとになりました。
しかし若手が日勤で先輩に業務を依頼しにくい雰囲気があります。オペ後の検温が17:20だったので、ペアのベテランの先輩が夜勤者に依頼してくれました。
PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)を導入しているのでベテランの先輩とペアを組むことが多く、この時も夜勤者に伝えてくれたのです。
その時夜勤の先輩は文句を言わなかったようですが、私が一人の時に来て「検温くらい日勤でやってよね」と言われてしまいました。
病棟の決まりとは言え、仕事を依頼しやすい人とそうでない人がいます。時間になっても夜勤者に仕事を渡さないと上司には怒られるし…。顔色を伺いながらの仕事は疲れてしまいます。
看護師も人間ですから、好き嫌いがあります。自分よりも上の人には何も言わないけれど、後輩にはこのエピソードのような態度をとる人がいるのは現実です。
女性が多い職場ではこういうことが多いのでないでしょうか。人によって態度が変わる人はどうしてもいるので、ベテラン看護師でも似たような悩みを持つ人はいます。
本人は気づいていない?患者に好かれる看護師の特徴
患者さんから好かれやすい人っていますよね。本人に聞いても特に意識していないこともありますが、実は特徴があるのです。
好かれる看護師と言っても、特別なことをするのではありません。人間として好かれるということが前提にあります
患者さんに好かれるメリットは、コミュニケーションが円滑になりクレームを防ぐことができるということです。好かれている患者さんに対するクレームって少ないと思いませんか?
好かれる看護師の特徴1
聞き上手
患者さんは何かしらの病気を抱えて入院あるいは通院をしています。
そのため、「話を聞いてほしい」と思う人が多いです。そんな時に看護師が自分のことをペラペラ話していたら疲れてしまいますよね。
「傾聴」という言葉を聞いたことがありますか。傾聴は患者さんとのコミュニケーションにおいてとても大切なことです。
患者さんは何らかの疾患や苦痛をもって来院されます。
そういう状況の中、丁寧な対応で傾聴されると、精神状態が安定しやすくなります。傾聴によりコミュニケーションが円滑になり、患者さんに好かれやすくなります。
傾聴で大切なことは
①うなずくこと
②「そうなんですね」「すごいですね」などリアクションをすること
③「…ということなのですね」「…という風に考えているのですね」とオウム返しをし話を聞いていますよという態度を見せることです。
もうひとつ大切なことは、話しかけやすい雰囲気を作ることです。不愛想な看護師では患者さんも話したいことがあっても話しかけることすら難しくなってしまいます。
話しかけやすい雰囲気を作るには、まず笑顔を大切にしましょう。常に満面の笑みでは不自然になってしまいます。状況に応じて微笑など使い分けるといいです。
語尾の母音が「イ」の言葉は自然に口角が上がり、笑顔を作ることが出来ます。「ラッキー」「クッキー」は語尾の母音が「イ」ですね。
笑顔が苦手なんていう人もいると思います。そういう人は「イ」で口角を上げる練習をしてみるのもいいかもしれませんね。
ミラー効果というものがあり、相手が笑顔だと自然とこちらも笑顔になります。患者さんだけでなく、看護師同士でも笑顔で接することで、ギスギスした人間関係も緩和されるでしょう。
好かれる看護師の特徴2
相手を褒めるのが上手
褒められると誰でもうれしいですよね。患者さんだってそうです。疾患や苦痛を持って来院される患者さんは不安を抱えています。
そんな中で、肯定されるということは安心感を与えることができます。通院中や入院中に職員から否定的な事を言われてしまい、苦痛で治療を放棄したくなる患者さんもいます。
それだけ看護師をはじめ医療スタッフの言葉は重要なのです。
「今日は食事を全部食べたんだよ」
「リハビリでここまで出来るようになったんだよ」と伝えてくれることがあります。
そういう時に「すごいですね」と褒めると、患者さんの自信に繋がります。
これも、看護師の人間関係に通じるものがあります。なぜか皆から好かれる先輩の特徴も、褒めるのが上手な先輩なのです。
後輩に
「ミスせずにできたね」
「採血が上手になったね」などと褒めている先輩はたいてい好かれているものです。
好かれる看護師の特徴3
看護師としての技術が確か
特徴1、2はコミュニケーションに関するものでしたが、3つめは技術面です。
新人看護師を例にするとわかりやすいと思います。患者さんからすると、新人看護師は話しかけやすいし、じっくりと話を聞いてくれていいという面があります。
その反面で採血や注射になると
「痛いから嫌だ」
「何度も失敗されたからベテランにやってほしい」という声が上がるのも事実です。
介護施設などで採血や注射をやることはほとんどないですが、病院やクリニックでは避けて通ることの出来ません。
患者さんは
「この看護師は注射が上手い」
「前に採血失敗した人だ」と結構覚えているものです。
ベテランナースも最初は失敗しながら経験を積んでいます。苦手だからと毎回誰かにやってもらっていては上達もしないし仕事が回りません。
しかし採血や注射は患者さんに痛みを与えるものなので何度もやり直しをされるのは嫌ですね。その場合は患者さんにきちんと謝罪をした上で交代するのも手ですよ。
患者に好かれない看護師の特徴
患者さんから好かれる看護師もいれば、逆にどうも嫌われやすい看護師もいます。あまり好かれない看護師の特徴をしっておけば反面教師になるかもしれませんね。
そして、患者さんに好かれない看護師というのは、実は同僚からも好かれなかったりするのです。
好かれない看護師の特徴1
不愛想、なんとなく怖い
いつも笑顔だったり、話しかけやすい雰囲気を出している看護師は患者からも同僚からも好かれやすいです。
つまりその反対だと嫌われやすいということですね。患者さんは何らかの苦痛や病気で来院します。不安を抱える患者さんも多くいます。
入院中は特に慣れない環境での生活や病気への不安などにストレスを感じやすいでしょう。そんな中で医療スタッフが不愛想だと嫌ですよね。
入院中に患者さんがたくさん関わるのは看護師なので、その看護師が話かけにくい雰囲気を出していたら治療も嫌になってしまいます。
いつも笑顔ならいいという訳ではないのです。
患者さん家族が「あのベテランの看護師さん、笑顔なんだけどその裏がありそうで怖い」などという声を聞いたことがあります。
患者さんや家族は意外と敏感に看護師のことをとらえているのです。
骨折で入院し車椅子で過ごしている患者さんがいました。トイレに行くときやベッドに移る時には手伝いが必要です。
その患者さんが看護師にトイレへの移動をお願いしたところ「私も腰が痛いから辛い」と言われ、すごくショックだったと言っていました。
患者さんにとっては自分の病気やケガを治すための入院です。もうその人にはお願いしたくないと、夜勤や日勤の担当を確認するようになりました。
患者さんからの依頼に対して嫌な顔をしたり、面倒くさい雰囲気を出したりする看護師も嫌われるということですね。
好かれない看護師の特徴2
注射や採血が下手
これも好かれやすい看護師の反対ですね。好かれやすい看護師の特徴でも上げましたが、注射や採血という痛い思いをするのは誰だって嫌です。
それなのに、失敗して何度もやり直しをされるのは苦痛です。普段は感じのいい看護師でも、何度もやし直しをされてしまっては、患者さんもいい顔はしないでしょう。
「いい加減にしろ」
「他の人に代われ」
と怒りを露わにする人もいれば、
「この前何回も失敗されて辛かった」
と他の看護師や同室の患者さんに話す人もいます。
経験を積むことも大切ですが、患者さんの苦痛を考えれば何度もやり直しはせずに先輩看護師にバトンタッチをすることも手です。
好かれない看護師の特徴3
自分の話ばかりしていて患者の話を聞かない
何度も言いますが、患者さんは病気やケガで来院されているので不安やストレスを抱えています。
そのため、話を聞いてほしいと思う患者さんが多いです。
検温の時、話が終わらずになかなか離れられない患者さんや毎日同じ話をする患者さんはいませんか。
何度も同じ話をするのも、何度でも話を聞いてほしいからなのです。それに対して看護師が面倒くさそうな顔をすると患者さんに伝わります。
「もうこの人には話したくない」と思ってしまうかもしれませんね。患者さんの話を引き出すために、自分の話を持ち出すこともあります。
しかし、ずっと自分の話ばかりして患者さんの話を聞こうとしないと
「この看護師とはあまり話したくないな」
と思われてしまうので注意しましょう。
あくまでも会話の主役は患者さんです。
患者に好かれている看護師は師長との付き合い方も上手
看護師は女性が多いので、上司も女性であることが多いです。同性だと分かり合えていい部分もあれば、逆にこじれると厄介な部分もあります。
女性同士で人間関係が上手くいかないと、女性ならではのギスギス感が生じますよね。それは上司であっても同じです。
ストレスを感じやすい職場であれば余計に上司とは上手く付き合いたいですよね。では、上司と上手く付き合うにはどうすればいいのでしょうか。
まず、上司に嫌われやすい看護師の特徴をあげます。
- 感情的ですぐに泣く、怒る、刃向かう
- 同じミスを繰り返す
- ミスを認めない
- やたらと媚びる
これって患者さんに嫌われる特徴に通じるものがあると思いませんか?
患者さんとのやり取りですぐに泣いたり怒ったりする看護師は嫌われますし、何度も注射や採血を失敗されたら嫌ですね。
つまり、患者さんに好かれやすい看護師は上司にも好かれやすく、上手く付き合っていくことができると言えます。
まとめ【看護師の人間関係の悩みを少しでも軽減するために】
看護師はなぜ人間関係が大変だと言われるのでしょうか。人の命を預かっていて責任のある仕事なのでプレッシャーやストレスが原因で現場がピリピリする場面があります。
そして、女性が多いというのが一番の理由ではないでしょうか。
男性看護師が増えているとは言っても、まだまだ女性看護師ばかりの職場が多いです。
そのため、女性ばかりの職場特有のギクシャク感や派閥が生じてしまいます。
看護師は医師や他の医療スタッフ、患者さんや家族とダイレクトに関わり時には橋渡しの役割を担うため対人関係の悩みがどうしても大きくなります。
どんな看護師が好かれやすく、嫌われやすいのかということを知っておけば現場で少しは楽になるかもしれません。
看護師として好かれると言っても特別なことを要求される訳ではありません。要は、人間として好かれることが必要なのです。